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誓い

ワガママを言って

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「ごめんね、ルカ。少し寂しい思いをさせるけど...」

「......んーん。お仕事だもん、仕方ないよ。おれのことは気にしなくていいから、気を付けてね...?」


夜も眠らずにカリーナの家で張り込むことにした俺は、カリーナの家に出向く前にルカを補給し、仮眠を取ってから向かおうと仕事を早めに切り上げ一度帰宅した。

自宅の玄関扉を開け、ただいま、と声を掛けると、入ってすぐ右側にあるダイニングテーブルでミルクを飲みながらレシピ本をめくっていたルカが、予想外に早い俺の帰宅に驚いた顔をしたあとすぐ嬉しそうに笑って駆け寄って来たのを抱き締め、ただいまのキスをして。

ひとしきりルカの甘い口内を堪能してから、今夜からのことを話すと、おれのことは気にしなくていいからなんて言いつつも寂しさを隠しきれないのか、眉が八の字に下がり下唇をきゅっと噛んで目を伏せてしまったルカに、仕事とは言え心が痛む。


「ルカ、おいで?」

「...なぁに?」


すっかりしゅんとしてしまったルカの手を引き、玄関を入って左側にあるリビングスペースのソファに並んで腰を下ろすと、不思議そうに見上げてくるルカと片手は指を絡めて繋ぎ、もう片方の手でピンク色の髪を優しく撫でた。


「強がらなくていいんだよ。寂しい時はちゃんと寂しいって言いな?」

「…...だめ。リヒトのこと困らせたくない」


俺と目を合わせてしまったら気持ちが抑え込めなくなってしまいそうなのだろう。
ずっと目を逸らしたまま、ふるふると左右に首を振るルカのいじらしさにこっちが泣きそうだ。
本当に、悪魔のクセして一体彼はどこまで健気なのか。
まあ、そういう彼だからこそこんなにも惹かれてしまったのだけれど。


「迷惑だなんて思わないよ。だって、俺はすごく寂しい。罪の無い人を悪魔から守るためとはいえ、ルカと過ごす時間が減るんだから」

「リヒト......」

「それとも、ルカは違う?寂しいのは俺だけ?」

「...っ、そんなわけないじゃん!おれだって寂しいもん!だけどそんなワガママ言ってもリヒトを困らせるだけだから...おれ...!」


とうとう泣き出してしまった彼を大切に大切に腕の中に閉じ込め、髪を撫で、背中をさすってやる。
一度溢れてしまった涙はなかなか止めることが出来ず、俺のシャツの胸元に染み込んでくるその冷たさすら愛しい。


「...うう......っ、りひ、との、ばか...」

「意地悪言ってごめんね。ルカの本当の気持ちが聞きたかったから」

「いわなくたって、わかるでしょ...っ」

「うん、そうだね。でもちゃんとルカの口から聞きたかった」

「......ほんとは行って欲しくないよ。昼間もお仕事で会えないのに、夜も家にいないなんて嫌...」

「そうだよね、ごめんね」


はたから見たら、たかが数日、夜に家を空けるだけでそんな大袈裟な...と思われるかもしれない。
だけどカリーナを悩ませる淫魔を祓うまでこの任務は続くのであって数日で終わるとは限らないし、日中は普段通り神父の仕事もあるから、実質ルカに会えるのは朝仕事に出掛ける前と、一度帰宅してカリーナの家に出掛けるまでのほんの僅かな時間だけ。

周囲も呆れるほど互いに溺愛していて、しかも永遠の愛を誓い合ったばかりの、言うなれば新婚同様の俺達にとってそれがどれだけ辛く寂しいことか……察して欲しい。


「...でも、リヒトの負担になるのが一番嫌だから。ワガママ言わないで良い子でお留守番してるから、なるべく早く終わらせてね...?」

「もちろん。すぐに終わらせて帰ってきて、そしたらいっぱい甘やかしてあげるからね」

「.........ぅん」
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