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誓い
お誘い
しおりを挟む祓魔師協会本部の入口の門をなんとか就業時間ギリギリで滑り込み、真面目に職務に努め、休憩時間になって執務室の外に出ると、廊下で偶然ケンさんとクオンに出くわした。
「おうリヒト、久しぶりだな」
「ケンさん。この間はどうも」
「…あの後楽しんだかよ?」
「お陰様で」
「なになに?なんの話し?」
神父の仕事が溜まっていた為祓魔師協会のほうに出勤するのは久々で、ケンさんとクオンに会うのも久々だ。
だから、ケンさんのボロ小屋…もとい、ケンさんの家での一件は、まだクオンには話していなくて。
「クオン、聞いてくれる?ケンさんがさ…」
と、あの日の出来事をクオンに話した後、一瞬本気でケンさんとカイが使い魔狩りの犯人かと思ったと言えば、こんな人の良さそうなケンさんが犯人だったら俺マジ人間不信になるわ、ていうかお前ら付き合ってたのか、と返された。
「ルカが例の男に襲われた日からね。…あ、そうだ。ルカと言えば今朝、ルカが6人でシロツメクサの丘にピクニックに行きたいって言い出したんだけどさ、2人とも都合つく日ある?」
ふと朝のルカとの会話を思い出し、2人に訊ねると、ピクニックって…あいつ本当に悪魔かよ…と驚き呆れながらも、予定を確認してくれる。
そうして3人で手帳と睨めっこした結果、七日後なら全員の都合がつきそうなので、その日に出掛けようということになった。
仕事から帰宅しそのことを告げると、大喜びでありがとうと抱きついてきたルカに頬がゆるむ。
沢山ご馳走作っていかなきゃ、と張り切るルカに、どうしてそんなにみんなで出掛けたいのかと聞けば、せっかくリアムとカイと再会できたのにまだ3人でゆっくり過ごせていないからどうせならどこかにお出掛けしたくて、リヒトも一緒に来て欲しいし、それだったらいっその事6人でワイワイ出掛けて楽しい思い出を作りたい、という理由らしい。
相変わらずの悪魔らしからぬなんとも可愛らしい発想に、愛しさがつのる。
楽しみだなー、晴れるといいなー、なんて、既にワクワクが止まらないといった様子のルカを見ていると、なんだかつられてこちらまで楽しみになってきて。
折角だしうんと可愛い格好をさせていこう、新しい服を買いに行くのもいいな、なんて考えながら彼が用意してくれていた夕食を美味しく頂いた後。
ピクニックに思いを馳せる上機嫌な彼も、勿論美味しく頂いた。
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