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使い魔狩り

守るから

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「…というわけなの」

「なるほど。確かに怪しいね」


夜、仕事から帰宅したリヒトに、ここ数日カイの様子がおかしいこと、昼間のカイとのやり取りを話すと、彼も怪しいと思ったらしい。


「やっぱりそう思う?リヒトに内緒でおれだけ呼び出すなんて変だよね?」

「うん。実はケンさんもここ数日ソワソワした感じで様子がおかしかったんだ。…もしかしたら2人で何か企んでいるのかもしれないね」


リヒトの話を聞いて、もしカイとケンさんが使い魔狩りの犯人だったらどうしよう、と泣きそうになりながら隣に座る彼を見上げる。


「言ったでしょ、ルカのことは俺が守るって。大丈夫、とりあえず明日、すぐに助けに入れるところまでは着いていくから、何かあったら印を使ってすぐに知らせて?」


優しく微笑んで頬を撫でてくれる彼の掌があったかくて気持ちよくて、もっと、とねだるように擦り寄れば、可愛い、と呟いた彼がちゅっと音を立てて俺の唇を啄んだ。


「ルカには傷一つつけさせない。そんなことする輩は相手が誰だろうと容赦しない」


それから何度も何度も角度を変え熱いキスを交わしながら、口内に吹き込むようにして言われたその声が、まるで悪魔のように残忍な色を孕んでいて。
全身に鳥肌が立つのを感じると共に、リヒトがいてくれればおれは無事でいられると確信した。


そうして迎えた、翌日の夜。
日中ずっとソワソワしてしまって落ち着かず、街の人達の手助けをしに行けなかったから、まだカイには会っていない。

リヒトと一緒に、カイに指定された場所へと辿り着くと、そこは街の外れの寂れた場所にある古めかしい小屋だった。

いかにも、といった雰囲気のそこに、足がすくむ。
そんなおれを察したのか、リヒトが安心させるように手を握ってくれた。


「気配でバレるといけないから、俺はあそこの木陰に隠れてる。危険を感じたらすぐに知らせるんだよ?」

「…うん、分かった」


おれの頭をぽんぽんと軽く撫で、小屋の近くの木の陰に身を隠すリヒトを見届けると、おれは一度大きく深呼吸をして小屋の扉をノックする。

すぐに扉が開き、待ってたよ、と出迎えてくれたカイに手を引かれ中に入るとすぐに、おれはここに来てしまったことを猛烈に後悔する羽目になった。
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