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「……どう……かな?」

「......かわいい…」


リヒトに対する気持ちが、恋、というものだと知ったおれが、彼との関係について悩み、言いようのない不安に襲われ、昨夜は何も考えられなくなるぐらい激しく抱いて欲しくて彼を繰り返し求めてしまったせいで、悪魔と違って体力に限界のあるリヒトは今朝なかなかベッドから抜け出すことが出来ず、お昼時になってようやくダイニングへ降りてきた。


「本当はもう少し早く出掛けたかったんだけど…起きれなくてごめんね」


と申し訳なさそうに謝るリヒトに、


「ううん、おれが、昨夜、沢山欲しがっちゃったから…おれの方こそごめんなさい」


そう謝り返せば、「昨夜のルカ、すごくエッチで可愛かったよ」と耳元で囁かれて顔が熱くなった。

それから軽く食事を済ませ、身支度を整えて連れて来てもらったお店で、おれは何着も人間の洋服を着させられ、そのたびにリヒトは大袈裟なぐらい褒めてくれて、気付くとカウンターに洋服の山が出来上がっていた。


「ん、こんなもんかな。すみません、これ全部下さい」

「えっ?!こんなに買うの?」

「うん、そうだよ。だって、どれもよく似合ってて選べないから。嫌?」

「嫌、とかじゃないけど……」


(…いいのかなぁ?)


おれ、ただの性欲処理の道具なのに、ここまで良くしてもらっちゃって。
おれなんかにこんなにお金かける必要無いのに。

と、嬉しいけど申し訳ないというか、なんとも言えない複雑な気持ちで彼を見上げていると、おれのその視線をどう捉えたのか、「大丈夫だよ、それなりに稼いでるから」とウインクを一つ寄越したリヒトは、鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌でお店の人にお金を払い、大きな紙袋を四つぶら下げて店を出た。


「ねぇ、おれも持つってば」

「いいの。俺が買いたくて勝手に買ったんだから」

「でも…っ、おれ、使い魔で、リヒトはご主人様なのに……」

「別に俺、ルカを荷物持ちにする為に契約したわけじゃないからね?」


おれの為に買ってくれた洋服がパンパンに入った紙袋。
どう見ても重いそれを、おれも持つと言っているのに頑なに渡してくれなくて膨れているおれとは対照的に、リヒトはすごく楽しそうだ。


「はぁー、早くこの洋服、ルカに着せたいなぁ」

「え、さっき着たでしょ?」

「そうなんだけどね。自分がプレゼントした服を、脱がす喜びってやつがあるんだよ」

「えぇ……人間ってよくわかんない……」

「いいよ、ルカは分かんなくて。ずっとその可愛いままでいて?」

「……ずるい」


からかわれている、と分かっていても、おれをからかって楽しんでいるその表情ですら、すごくかっこよくてドキドキする。

それに、こうやって他愛もない会話を交わしながら彼と並んで歩けるのも幸せで、こんな時間がずっと続けばいいのに…と思わずにはいられなかった。
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