10 / 60
はじまり
あなたにつくします
しおりを挟む「…はぁー、さすがに疲れた…。でも、ルカの中めちゃくちゃ気持ち良かったよ。これからいつでもこの身体を抱けるなんて最高」
「…おれも、はじめてだったけどすごく気持ちよかった…あの…次は、いつするの?」
おれの頭の下に腕を差し込み、反対の手でくしゃくしゃに乱れた髪を整えるように撫でてくれながら気持ち良かったと言われて嬉しくなる。
そしてすっかり彼との行為の虜になってしまったおれは正直またすぐにでもして欲しくて問うと、髪を撫でていた彼の手の動きがピシッと止まった。
「……ん?ちょっと待って、はじめて?」
「え?う、うん、そう、だけど…」
ビックリしたように聞き返してくる彼は、まさかこれがおれの初めての性行為だなんて思わなかったみたいだ。
だからおれは、この見た目だから今まで人間の女を襲おうとしても同性だと思われて上手くいかなかったこと、それで魔力が尽きかけてしまい、一旦魔力を補充するため仕方なく人間の男を誘惑し襲うことにしてここへ来たことを話した。
「…だから自分が両性具有だってことも気付かなかったのか」
「うん…誰かに見られるのもはじめてだったから…」
「まじかよ、淫魔のヴァージン貰うの初めてだわ…なんかすごい、責任とらないといけない気分」
(…責任…?って、なんだろう…?)
人間は、性行為の経験が無い相手を抱いてしまったら何かしらの責任を取らないといけない決まりでもあるのだろうか?
困ったように苦笑いしてるリヒト。
もしかして、性行為の経験が無い淫魔を抱いてしまったから、その責任とやらを取らなきゃいけないのが嫌…とか?
それで契約した直後だというのに、もう契約を解除されてしまうのかもしれない。
(…どうしよう、おれ、リヒトとの契約が無くなったらまた一人で獲物を探さないといけないんだ…。出来るかな、おれに…)
悪魔のくせに、と思われるかもしれないけど、リアムもカイも居なくなった世界でまた一人ぼっちに戻るのは心細いし、こんなに心地良い場所を見つけてしまって、それを手放すのも惜しい。
だからおれはどうしてもリヒトとの契約を無かったことにされたくなくて、必死で彼に縋りついた。
「リヒト、お願い、捨てないで…契約、解除しちゃいや…」
「……は?捨てる?なんで?」
「え…だって、責任…?面倒くさいんじゃないの……?」
「ん?ああ、ごめんごめん。ものの例えだよ。別に実際責任取らなきゃとか、それを負担に思ってるとかないから安心して?」
大丈夫、こんなに俺好みの甘くてエッチな身体した子、そう簡単に手放したりしないから。
リヒトのその言葉に、強ばっていた身体からホッと力が抜けた。
それと同時に、いくら身体目当てとは言えおれみたいに弱くて性行為以外なんの役にも立てなさそうな淫魔を助けてくれて、そばに置いてくれて、魔力や精液を分け与えてくれるリヒトの為に少しでも強くなりたい、そう思った。
「あの、おれ、弱いから戦闘にも向いてないと思うけど…頑張って、リヒトの為に尽くすから…」
そう言って彼に擦り寄れば、そっと抱き寄せて髪を撫でてくれる掌が気持ちいい。
「ルカは、戦闘なんてしなくていいよ。俺のそばに居てくれて、少し家のこととか手伝ってくれれば後は自由にしてていいから」
「でも……」
「大丈夫だよ、ルカの力を借りなくても、俺結構強いからさ。…さて、俺はもうそろそろ寝るけど、ルカはどうする?」
「…おれ、悪魔だから寝ないよ?」
「うん、知ってる。じゃあさ、命令。…朝まで、このまま俺に抱っこされてて?」
命令。
そう言われた途端、首筋に付けられた印の辺りがピリッと痛み、身体中の細胞が彼の命令に従わなければとざわめき出す。
そうしておれは彼の命令通り、彼の温かな腕の中でその寝顔を見つめながら一夜を明かした。
5
お気に入りに追加
547
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる