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はじまり
下級淫魔・ルカ
しおりを挟む「…おい、アイツまた失敗したらしいぞ」
「…これで何回目だよ。女一人孕ませることも出来ないとか淫魔失格だろ」
「まぁあんな女みてぇな見た目じゃあ人間の女も抱かれたいと思わねぇよなぁ」
「…つかこのままだとアイツ死ぬんじゃね?」
「男でも襲ってたっぷりナカに注いでもらってこいよ、この出来損ない」
(…まただ。また悪口言われてる。)
悔しいけどでも彼らの言ってることは何一つ間違ってないし、弱いおれは言い返すことすらできない。
おれは、人間の女性を襲って性交し孕ませる悪魔…淫魔として創造された。
人間を誘惑しなければいけない淫魔は、通常、それに特化した見た目になっている。
例えば、おれと同時に創造された淫魔であるリアムとカイ。
リアムはそのキリッとした男らしい顔立ちとガッシリとした身体つきで女性を虜にして数多くの任務を遂行しているし、カイはその大きな瞳で女性を見つめることで相手は身体の力が抜けて動けなくなり、その隙に性交を行うことができる。
それに比べ、ピンク色のふわふわの髪に色白な肌、とろりと垂れたピンク色の瞳に、ぷるぷるのピンク色の唇、華奢な身体がまるで女のようだと言われるおれは、多分女型の淫魔だったら結構いい線いってたんじゃないかと思う。
だけど生憎おれは男型の淫魔。
このビジュアルで人間の女性を襲いに行っても、同性はちょっと…と相手をその気にさせることができないのだ。
そんな感じなので、おれは一度も任務を遂行できた試しがない。
淫魔は、男型であれば人間の女性の愛液を、女型であれば男性の精液を体内に取り込むことで魔力が強まり、生き延びることができる。
男型が精液を、女型が愛液を摂取しても魔力を得ることはできるが、その効果は少し弱まる為あまり効率は良くない。
「おい、てめぇらいい加減にしとけよ」
「つか君たちの成績も大したことないよねー。人のこと言う前にまず自分の心配したら?」
人間界に降りては毎回任務に失敗し、魔界に戻ってきては毎回悪口を言われ、それに何も言い返せないおれは毎回拳を握り締め…。
そして、そんなおれを毎回庇ってくれる2人。
「…リアム…カイ…」
2人はおれと違って優秀で、任務は毎回きっちりこなして戻ってくるし、戦闘能力も高い為、あっという間に通常の淫魔の中ではトップレベルの位である、中級淫魔の位にまで上り詰めてしまった。
(上級淫魔というのも存在するが、通常の淫魔ではそこまで到達することは出来ない)
そしてもちろんおれは、言うまでもなく下級淫魔。
ちなみに、先程おれに悪口を言っていたやつらもみんな、下級淫魔だ。
何故わかるかと言うと、悪魔はその位によって背中の羽根の大きさが異なり、リアムとカイの背中には大きくて立派な羽根がついているのに対し、悪口を言ってきた淫魔達の背中にある羽根はおれのと同じで小ぶりだったから。
そんな下級のやつらが、中級2人を相手にして適う筈もなく。
ヒッと引き攣ったような声を上げて、すごすごとどこかへ姿を消してしまった。
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