俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ

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魔の森の遠征編

44.メイル・グリムワルトの思い

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メイルsid

それからは事がスルスルと解決していった。

イズが捕らえた王家の影、アイツはイガリア・ナルシーストン侯爵に買収されていたらしい。

そう、今まで捕えようにも捕らえられなかった黒幕の決定的な証拠が出たのだ。

イガリア・ナルシーストン侯爵はイズの御父上、俺の父上、そしてキリエとロニーとアロナの父上達の同期、つまり同級生だ。

深緑色の髪の毛に深緑色の瞳を持っていて、自身に絶対の自信を持ち、彼の周りには取り巻きもたくさんいたが、学園ではアリム達が居たせいで目立てず、逆恨み真っ只中。

手始めに国王の家族関係を滅茶苦茶にして第二王子を傀儡の王として自分が影で操ろうと考えており、第一王子、つまり俺には逆恨み中のイズ、キリエ、ロニー、アロナの父上達の息子が側近候補として居るので俺の暗殺と同時に殺そうとしていたらしい。

当然王族暗殺未遂、国家反逆罪として処刑される予定だ。

これで一安心だ。

こんな事があっても時は待ってくれない。

それから魔の森に取り残したSランク以上の魔物がいないか騎士団と魔術師団が調査した結果、イズが殲滅してくれてたみたいで危険は無くなったので魔の森の規制が解かれた。

学園側にも危険性がない旨を伝え、これからもこの森で遠征をして良いと判断が下された。

そうしてそうこうしているうちに俺達は卒業の時を迎えたのだった。
















「イズ、今日俺達の卒業式があったんだ。」

「聞いて驚け、あのキリエが泣いてたんだぞ、考えられるか?」

「皆んなでその事をいじったら怒られたんだけどな」

「なあ、イズ...ちゃんと聞いてるのか?」

「あ、そう言えばロニーが魔術教えて欲しいって言ってたぞ、今度教えてあげたらどうだ?」

「アロナも魔術の話好きだから一緒に聞かせてやってくれよ」

「キリエはあの時の魔界流剣術が気になってるみたいでソワソワしてたぞ、あれは面白かったなぁ」




コンコンッ

「メイル殿下、そろそろお時間です」

「ああ、分かった。イズ、また来るよ」














イガリア・ナルシーストン侯爵が処刑された事で芋蔓式に今まで汚職に手を染めていた貴族やナルシーストン侯爵の悪事に加担していた貴族の処罰が行われ、今では人材不足だ。

猫の手も借りたいくらいなので俺も政務を手伝っているしアルフレッドも俺を手伝ってくれている。






「あ、オブシディアン」

「ふん、クソガキか。イズリルの所にでも行っていたか」

「あぁ、あの時はイズを治療してくれてありがとう」

「お前の為ではない、あくまでもイズリルの為だしそもそもイズリルとの契約内容に沿った事だ。勘違いするな。」

「それでも、ありがとう」

「ふん」

「今からイズの所へ行くのか?」

「貴様には関係ないな」

「ははっ、分かった。部屋や生活に不自由はないか?」

「ない。とっとと働け」

「分かった。」

そう言ってさっきまで俺がいた医務室へ向かって行ってしまった。







あの日、医務室にイズを運んだ時にはすでに虫の息だった。医者も諦めかけてたその時、何処からともなくオブシディアンが現れ、イズの傷口に自身の血を垂らしたのだ。

その途端傷が治ったと思ったらイズがものすごい声を上げながら暴れ出した。

「ゔあぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!」

「やめろっ!!!いやだ!!!」

「あ゛ぁぁぁぁあああああっ!!!」

「オブシディアン!?イズが苦しんでる!一体何を!?治療したのではないのか!?」

オブシディアンはイズの体を押さえながら

「イズリルには俺の力が強すぎたんだろう、軽い拒絶反応を起こしてるが問題はない、時期に落ち着く。」

尋常じゃないイズの様子にイズの関係者全員が息を呑む。

「それよりお前、記憶が戻ったんだな」

「そんな呑気な!今そんな事気にしてる場合ではないだろ!」

だがそんな事を言っている間にイズが静かに寝息をたて始めた。

「後はイズリルが意識を取り戻すのを待つだけだ。」

「オブシディアン殿、有難う。」

そう言うのはイズの御父上と御母上。

「イズが目覚めるのは何時ごろになるか分からないのかしら」

「それはイズリル次第だな。俺にも分からん。だが死にはしないだろう。俺はイズリルが目覚めるまでここで過ごす事にする。」

「だったら部屋を用意させよう、オブシディアン殿。」

そう言った父上は直ぐに使用人に部屋を用意させるように指示を出す。

「何かあったら部屋付きの使用人に声をかけてくれ、オブシディアン殿。」

「ああ。」














あの時は本当に怖かった。

イズが死ぬんじゃないかって

いくらオブシディアンがイズに危害を与えないからって言っても、あの時ばかりは死ぬんじゃないかって

容体が安定した今、俺は毎日欠かさずイズの様子を見に行っている。

本当は仕事なんか放っておいてずっとイズのそばについていたい。

だがそんな事をしたら目を覚ましたイズになんて言われるか分からない。

だから俺は出来る限りこの国を安定させる事を優先していずれ目覚めるイズのために、目覚めたイズに褒めてもらうために頑張るんだ。








そうして月日は流れ、一年が経過した。



end

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