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初等部編
28.アロナ・シューサーの思い
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アロナsid
「あぁ、これからは殿下をよろしく頼む。じゃあ俺達はここを去るから、医務室の先生が戻ってきたらよろしく頼んだぞ。」
「はい、お元気で、イズ。」
そう言って去っていったイズとハーバー。
「......起きているのでしょう、キリエ、ロニー。」
「...まぁ、な。」
「...ん。」
「これからどうなるのでしょうね、私達は。メイル殿下をイズ抜きで守り通せるでしょうか...」
そう呟くとキリエがため息を吐きながら口を開いた
「だから、俺達に強くなれって言ったんじゃないのか?あいつが居なくてもメイル殿下を守れる様にって。」
「2人と、イズとハーバーに会えなくなるのは...寂しい...でも、僕達が頑張らないといけない...のも、事実。今の僕達は...弱過ぎる...。」
ロニーが長く喋っている!こんなロニーは久しぶりに見ますね。
「一体、イズは何故メイル殿下を怒らせたのでしょうかね。」
「どうせあいつの事だ、意味もなく怒らせる様な事はないと思う...がな、あいつの考えてることなんてわからねー。」
確かに、イズの考えている事は全くと言っていいほど分かりません。
それに学園でメイル殿下を避けていたことも含め謎が多い人ですからね、唯一イズの考えている事がわかるのなんてオブシディアン・ハーバー位でしょう。
はぁ、いくら考えても意味はありませんね。
「けれど、イズはどうやって我々のピンチを察知して駆けつけるつもりなのでしょうか」
「...わからない、でも、きっと何がなんでも駆けつける...そんな気がする...。」
「そうですね、ロニー。私達で強くなりましょう」
3人で視線を合わせ頷くと、途端に力が抜ける。
コンコンッ
ノックすると言う事は先生ではないですね。
「どうぞ、お入りください。」
ガチャッ
「「「メイル殿下っ!」」」
「や、やぁ皆んな...3人が起きたと医務室の先生が教えてくれて...」
そう言って部屋に入ってきた殿下は顔色がとても悪い。
目の下には隈ができ、生気が感じられない。
私達はどう声をかけていいのかが分からず、只々メイル殿下を見つめることしかできなかった。
すると突然メイル殿下がガバリと頭を下げ
「すまなかった!俺のせいで3人とも重体、3日も目を覚まさなかった...俺が生きているから、俺が王位継承権を持っているから第二王妃と第二王子派の過激派の連中が俺を殺しに...3人とも巻き込んだ、俺の責任だっ!」
「メイル殿下っ、頭を上げてください!私達は自分のすべきことをやっただけです、巻き込んだなんて言わないでください。」
メイル殿下、相当まいっているな...
「あの、メイル殿下、イズの事なのですが...」
イズという言葉を口にした瞬間、メイル殿下の肩がビクリとする。
「本当に側近候補を辞めるのですか?」
「...あいつの事など知らない。辞めたいなら勝手に辞めればいいんだ」
「では、何故泣いているのですか?」
「え?」
メイル殿下の綺麗な翡翠の瞳から涙がこぼれ落ちるのを3人静かに見守る。
「え、あれ?何だこれ、おかしいな、俺何も悲しくないのに、痛くも無いのにどうして涙なんか...」
「メイル殿下、何故イズと喧嘩したのですか?」
「それはっ...嫌なことなんて忘れて楽になったらどうかとか、軽々しく言ったりしてきて...学園で俺のこと避けてるのだってきっと俺のことが嫌いだからで...キリエやロニー、アロナの事だって馬鹿にした。それが許せなくてっ、俺はっ...俺は、どうすればよかったんだ!!」
メイル殿下の涙は止まらない
「嫌いだっ、アイツなんて、イズなんて、大嫌いだっ!」
あぁ、何となくだけれどイズが何故メイル殿下と喧嘩したのか分かった気がする...
勘だけど、きっとメイル殿下の気持ちを支える役とメイル殿下に嫌われ役の役割を分担したかったのかもしれない。
進んで嫌われ役をする所がまたイズらしいですね
今のメイル殿下は私達の誰かが傷つくだけで心のバランスを崩しかねない、実際メイル殿下は心のバランスを崩しかけている、だが踏みとどまれているのはきっとイズが機転を効かせて嫌われ役を買って出た事が大きいでしょうね。
今ここで誤解を解いてもいいですが、その事でさらに自分を責めるメイル殿下が目に見えて分かるので今はこのままで...
すみません、イズ。
今は貴方の好意に甘えます。
「でしたら、私達と一緒に強くなってイズを見返しましょう」
「......あいつを、見返す...?」
「はい、そして言ってやるんです、私達はもう弱くないって。」
「そんな事...できるわけ」
「メイル殿下、これからは自分も、メイル殿下もどちらも護れるようより一層鍛錬します。」
「ん、僕も、もっと頑張る。」
メイル殿下言葉をさえぎりキリエとロニーが言う
「だそうですよ、メイル殿下。私達は弱いままではないのです。この失態を次にいかすため、努力します。メイル殿下も一緒に頑張りましょう。」
「...そう、だな。」
そう言ったメイル殿下の瞳にもう迷いはない様に感じた。
イズ、これで私は貴方の思惑通りにメイル殿下を導けたでしょうか。
後はなる様になるしかないでしょうね...
私達は強くなりますよ、イズ。
それから暫くしてイドラス学園からイズリル・バードナーとオブシディアン・ハーバーが姿を消した。
風の噂で2人がイドラス学園を飛び級し、卒業した事が分かった。それはイドラス学園が歴史に名を刻んで初の快挙だったらしい。
end
「あぁ、これからは殿下をよろしく頼む。じゃあ俺達はここを去るから、医務室の先生が戻ってきたらよろしく頼んだぞ。」
「はい、お元気で、イズ。」
そう言って去っていったイズとハーバー。
「......起きているのでしょう、キリエ、ロニー。」
「...まぁ、な。」
「...ん。」
「これからどうなるのでしょうね、私達は。メイル殿下をイズ抜きで守り通せるでしょうか...」
そう呟くとキリエがため息を吐きながら口を開いた
「だから、俺達に強くなれって言ったんじゃないのか?あいつが居なくてもメイル殿下を守れる様にって。」
「2人と、イズとハーバーに会えなくなるのは...寂しい...でも、僕達が頑張らないといけない...のも、事実。今の僕達は...弱過ぎる...。」
ロニーが長く喋っている!こんなロニーは久しぶりに見ますね。
「一体、イズは何故メイル殿下を怒らせたのでしょうかね。」
「どうせあいつの事だ、意味もなく怒らせる様な事はないと思う...がな、あいつの考えてることなんてわからねー。」
確かに、イズの考えている事は全くと言っていいほど分かりません。
それに学園でメイル殿下を避けていたことも含め謎が多い人ですからね、唯一イズの考えている事がわかるのなんてオブシディアン・ハーバー位でしょう。
はぁ、いくら考えても意味はありませんね。
「けれど、イズはどうやって我々のピンチを察知して駆けつけるつもりなのでしょうか」
「...わからない、でも、きっと何がなんでも駆けつける...そんな気がする...。」
「そうですね、ロニー。私達で強くなりましょう」
3人で視線を合わせ頷くと、途端に力が抜ける。
コンコンッ
ノックすると言う事は先生ではないですね。
「どうぞ、お入りください。」
ガチャッ
「「「メイル殿下っ!」」」
「や、やぁ皆んな...3人が起きたと医務室の先生が教えてくれて...」
そう言って部屋に入ってきた殿下は顔色がとても悪い。
目の下には隈ができ、生気が感じられない。
私達はどう声をかけていいのかが分からず、只々メイル殿下を見つめることしかできなかった。
すると突然メイル殿下がガバリと頭を下げ
「すまなかった!俺のせいで3人とも重体、3日も目を覚まさなかった...俺が生きているから、俺が王位継承権を持っているから第二王妃と第二王子派の過激派の連中が俺を殺しに...3人とも巻き込んだ、俺の責任だっ!」
「メイル殿下っ、頭を上げてください!私達は自分のすべきことをやっただけです、巻き込んだなんて言わないでください。」
メイル殿下、相当まいっているな...
「あの、メイル殿下、イズの事なのですが...」
イズという言葉を口にした瞬間、メイル殿下の肩がビクリとする。
「本当に側近候補を辞めるのですか?」
「...あいつの事など知らない。辞めたいなら勝手に辞めればいいんだ」
「では、何故泣いているのですか?」
「え?」
メイル殿下の綺麗な翡翠の瞳から涙がこぼれ落ちるのを3人静かに見守る。
「え、あれ?何だこれ、おかしいな、俺何も悲しくないのに、痛くも無いのにどうして涙なんか...」
「メイル殿下、何故イズと喧嘩したのですか?」
「それはっ...嫌なことなんて忘れて楽になったらどうかとか、軽々しく言ったりしてきて...学園で俺のこと避けてるのだってきっと俺のことが嫌いだからで...キリエやロニー、アロナの事だって馬鹿にした。それが許せなくてっ、俺はっ...俺は、どうすればよかったんだ!!」
メイル殿下の涙は止まらない
「嫌いだっ、アイツなんて、イズなんて、大嫌いだっ!」
あぁ、何となくだけれどイズが何故メイル殿下と喧嘩したのか分かった気がする...
勘だけど、きっとメイル殿下の気持ちを支える役とメイル殿下に嫌われ役の役割を分担したかったのかもしれない。
進んで嫌われ役をする所がまたイズらしいですね
今のメイル殿下は私達の誰かが傷つくだけで心のバランスを崩しかねない、実際メイル殿下は心のバランスを崩しかけている、だが踏みとどまれているのはきっとイズが機転を効かせて嫌われ役を買って出た事が大きいでしょうね。
今ここで誤解を解いてもいいですが、その事でさらに自分を責めるメイル殿下が目に見えて分かるので今はこのままで...
すみません、イズ。
今は貴方の好意に甘えます。
「でしたら、私達と一緒に強くなってイズを見返しましょう」
「......あいつを、見返す...?」
「はい、そして言ってやるんです、私達はもう弱くないって。」
「そんな事...できるわけ」
「メイル殿下、これからは自分も、メイル殿下もどちらも護れるようより一層鍛錬します。」
「ん、僕も、もっと頑張る。」
メイル殿下言葉をさえぎりキリエとロニーが言う
「だそうですよ、メイル殿下。私達は弱いままではないのです。この失態を次にいかすため、努力します。メイル殿下も一緒に頑張りましょう。」
「...そう、だな。」
そう言ったメイル殿下の瞳にもう迷いはない様に感じた。
イズ、これで私は貴方の思惑通りにメイル殿下を導けたでしょうか。
後はなる様になるしかないでしょうね...
私達は強くなりますよ、イズ。
それから暫くしてイドラス学園からイズリル・バードナーとオブシディアン・ハーバーが姿を消した。
風の噂で2人がイドラス学園を飛び級し、卒業した事が分かった。それはイドラス学園が歴史に名を刻んで初の快挙だったらしい。
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