俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ

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初等部編

24.魔術師団長と宰相の思い

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エレニア・ウェイス魔術師団長sid

それはとある日の夜のことだった。

息子のロニーも夏の長期休暇で第一王子殿下の元、王城にて生活をしている。

私も結構城に泊まることが多いので息子であるロニーに会える機会が増えるのは喜ばしいことだっだ。

それに何より最近心境の変化があったのかいつもに増して魔法の練習に取り組んでいるようであった。

自分にできる事をすると言っていたので何かいい刺激があったのだろう。

おそらくはもう一人の側近候補のバードナー公爵家の嫡男であるイズリル・バードナー、とかね。

彼とは会ったことも話したこともないのだが、前に一度第一王子殿下が学園で暗殺されそうになった時にロニーでも探知できなかった手練の暗殺者を一人で察知して制圧し、さらに尋問まで行ったらしい。

バードナー公爵家は代々尋問官の家系なのでその嫡男が尋問できても何ら不思議ではないのだが、まだ七歳である

そんな子供があんな拷問まがいのことを本当にできるのだろうかと思ったのだが、ロニーが言うのであればそう言うことなのであろう。

ホーク騎士団長からも聞いたがあの尋問、拷問?のあとは目を背けたい程のものだったらしい。

そんなことを考えている時だった。

バンッ

「エレニア魔術師団長!大変です!城に!第一王子殿下に暗殺者が!後、側近候補三名が重症とのことです!おそらくエレニア魔術師団長の御子息もっ!」

ガタンッ

「何だとっ!」

「現場にはすでにホーク騎士団長が向かわれています!エレニア魔術師団長は直ぐにでも医務室に向かわれた方がよろしいかと!」

「私は現場には向かわなくていいのか!?」

「はい!既に暗殺者はイズリル・バードナー殿が捕らえております!」

なんだと!?何故彼がこの城に?いや、そんな事よりっ!

「分かった!直ぐに医務室に向かおう!」






気が焦る。

息子は、ロニーは生きているのか、重症とはどのくらいなのだ!

「ロニー!」

医務室の扉を乱暴に開けるとそこには血まみれになって横たわる息子の変わり果てた姿があった。

「先生、ロニーは無事なのでしょうか!?」

「止血のヒールの魔法の技術がここまですごく無ければ今頃はきっと残念でしたでしょうが、何とか一命は取り留めております。今はとにかく血が足りていないので暫くは目を覚まさないかと。」

「そんな!いや、だがそうですか...有難うございます。もしかしてヒールをかけたのって...」

「イズリル・バードナー、彼がかけたらしいですよ。」

先生とは違う声が聞こえてハッとする。

そこに居たのはギルナ・シューサー。

我が国の宰相だ。

「ギルナ宰相!」

「私も先ほど来たのです。息子が、アロナが重症だと聞いて急いで駆けつけました。」

そう言うとそっと我が子の頬を撫でる。

「全く、息子が重症など、笑えない冗談です。」

「そうですね。」

ギルナ宰相もよほど悔しいのかギリっと拳を握りしめていた。

我々魔術師団長や騎士団長がいながらこの惨事を防げなかったとは不甲斐ない。

「おそらく今回の暗殺もイズリル・バードナー君が阻止してくれたのでしょうね」

とギルナ宰相が言う

そもそも何故彼が城にいるのかも気になる。

これは後で聞くことがたくさんありそうだな

そんなことを思いながらロニーを見る

早く元気になってくれ、そしたらまた一緒に魔法の練習をしよう。たくさん練習には付き合ってあげるから、だからどうか、早く目を覚ましますように。

end







ギルナ・シューサー宰相sid

私の名前はギルナ・シューサー。

この国の宰相を務めている。

近頃息子のアロナがやたら機嫌がいいのでどうしたのか聞いてみたことがある。

そうしたらもう一人側近候補のイズリル・バードナーの話だった。

彼は剣技であのホーク騎士団長の御子息であるキリエ君を圧倒し、更にエレニア魔術師団長の御子息のロニー君でも真似できないような魔法を無詠唱でやってのけたのだと言う。

アロナは魔法が大好きなのだがあまり才には恵まれなかったので私と同じ宰相を目指すと言っていた。

だがやはり魔法への憧れが大きいのであろう、ロニー君より強い魔術師ともなればアロナが興味を持たないわけがない。

それに学園でのメイル殿下暗殺の件。

イズリル・バードナーが居なければメイル殿下は今頃...

調査は進めてはいるのだがなかなか難航している。第二王子派の仕業なのは確定なのだが...

そんなことを考えていると廊下が騒がしくなってきた

バンッ

「報告します!」

「何事だ」

「はっ!第一王子殿下の部屋に暗殺者が侵入し、側近候補三名が重症との事!第一王子殿下は無事です!暗殺者はイズリル・バードナー殿が捕えたとのことです!今ホーク騎士団長が第一王子殿下の元へ向かっております。それと尋問官であるアリム・バードナー公爵閣下がこちらに来るよう連絡をしたとのことです!」

「わかりました。ではメイル殿下は無事なのですね?」

「は!」

「では、現場は騎士団長に任せましょう、私は医務室の方へ行きます。」

「了解しました!」

ガチャ

アロナっ!

私は早歩きで医務室まで向かう

コンコン

「失礼します、先生、私の息子、アロナ・シューサーは無事でしょうかっ!?」

「おぉ、宰相殿、いや、この応急処置のヒールが無ければ危ない所でした。しかしこのヒールは素晴らしい。普通のヒールとは確実に威力が違う。」

「その応急処置をした者の名前は?」

「イズリル・バードナー殿らしいですよ」

「そうですか。」

「アロナ...」

息子は血まみれで、よくこれで生きていたものだと私でも思う。

先生の話によれば数日は目を覚まさないだろうとのことだった。

まさかずっと目を覚まさずに眠り続けるなんてことはないだろうな

そんなことになれば私は...っ!!

剣術が特に優れているわけでも、魔術に優れているわけでもない。

だから側近はやめた方がいいのではないかと言ったことがあった。

でも、それでも選ばれたからにはメイル殿下を支えたいと思ったんだと楽しそうに嬉しそうに話すアロナにお前がそれでいいのならと...

なのに今回暗殺者がやって来て三人でも全く歯が立たなかったという事は、イズリル・バードナーはどれ程規格外な力を持っているのだろうか。

顔色の悪い息子の頬をひと撫でする。

早く元気になってもう一度沢山話をしよう、アロナ......


end
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