俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ

文字の大きさ
上 下
9 / 45
幼少期編

9.家族の絆

しおりを挟む
「見つけた」

オブシディアンがそうボソリと呟くと先ほどまで鷲掴みにしていたメイルの頭をポイっとはなす。

「おっと、本当頼むから丁寧に扱って!」

「ふん、それより分かったぞ、このガキに呪いをかけたやつ。」

可哀想に、メイルがプルプル震えているじゃないか。

「んで?誰よそれ。」

「ゲスン伯爵とやらだな。どうする?」

「あー、呪い返しとかって出来る?」

そう俺が言うとニヤリとオブシディアンが笑い

「できるぞ」

と言った。

「やってやろうか?」

「頼むわー」

そんな軽いやり取りが行われると同時にオブシディアンから再び黒い影がブワッと広がりメイルを包み込む。

「ちょ、これ本当に大丈夫なの!?」

「ふん、誰にものを言っている。この悪魔公爵に出来ないものなどない。」

あ、そーですか。

そしてしばらく待つとメイルが黒い影から姿を現す。

「メイル様!髪の毛!髪の毛が元の金髪に戻ってるぞ!」

「え...?」

ポカンと口を開けたままのメイルに鏡を無理矢理持たせる。

「ほら!良く見てみろよメイル様っ!オブシディアンも、ありがとな!」

そう言ってにっこりと笑った。

「クヒヒッ、後はイズリルの魂を貰うだけだな、楽しみだ。そうだ、お前の腕の傷も治してやろう」

「え、治癒魔法も使えるの?悪魔なのに?」

そう言うとオブシディアンは俺の腕を取ると傷口を舐めた。

そう、舐めたのだ。

「ぎゃーっ!!何をする気持ち悪い!!」

「クヒヒッ、イズリル、お前の血は甘いな」

ゾワワっ

「あ、でも傷治ってる。凄い。」

「そんな事よりそこのガキは放っておいて良いのか?」

「あっ、そうだった。メイル様っ!良かったな!」

「あ、うぅっ、ヒック!イズリルーっ!」

そう言うとガバッと抱きついてきた。

「ははっ、泣き虫は相変わらずか!」

「わあぁぁーんっ!」

「沢山泣いておけ!もう涙が枯れるくらい泣いておけ!そして笑っとけ!な?」

「ゔんっ、へへっイズリル、ありがとゔっ!」

そう言って笑ったメイルはふと力尽きたかの様に俺に抱きつきながら眠った。

「このガキ、私のイズリルにベタベタ触りやがって。」

「誰がお前のだ。やめろ、鳥肌が立つ!でも流石にこのままにはできないからオブシディアン、メイルの部屋まで一緒に運んでくれない?」

「なぜ私がこんなガキを抱えなければいけない、お前ならまだしも。」

「いや、俺を抱えてどうするんだよ。良いからほら、早く!お父様にも状況を説明しないといけないからな。」

「ふん」

オブシディアンが鼻で笑うとメイルを肩に担いだ。

「だから丁寧に扱って!」

「これが私の精一杯の丁寧だ。文句を言うな」

運んでもらう以上文句は言えない。

むむむっとした表情を浮かべながらも一緒にメイルの部屋に運んだ。





ゴクリ。
今俺はお父様の執務室の前にいる。
きっと今回は本当に怒られると思う。

それはもう烈火の如く。

「入らないのか?イズリル」

「お前は呑気で良いねえオブシディアン」

はぁ、覚悟を決めるか。

コンコンッ

「お父様、イズリルです。入ってもよろしいでしょうか?」

「入りなさい」

ガチャッ

入った瞬間俺の顔を見てお父様の顔が驚愕しているのがわかる。

わかる!そうだよね!いきなり息子の左目が黒く染まってたらビックリするよね!ゴメン!

「イズ...っ、その瞳はどうしたのだっ」

「これはね、そのー、何と言うか、悪魔召喚の契約の証らしい...です。」

「あ、悪魔召喚だと!?正気かイズ!何を代償にした!?」

おや?悪魔召喚に代償がいる事を知っているのか?

「いいかイズ、悪魔召喚だなんて物には代償がつきものだ。そのくらいは俺とて分かるぞ」

ギロリと睨まれ言葉に詰まる。

「うっ、そうですね、寿命が尽きたら魂を渡すと...。」

「魂だと!?いったい何を願った!どの悪魔を召喚したのだ!!」

「クヒヒッ、必死だな、人間。そんなに我が子が大切か?残念だがこの子供はもう私のものだ。」

「貴様っ!」

「貴様だと?私にはオブシディアンという立派な名前がある。そちらの名前で呼んでもらおうか、人間。」

そう言うとオブシディアンがこの部屋に重圧をかけ始めた。

「ぐっ!...オブシディアンとやら、貴殿がイズが召喚した悪魔か」

「その通り、私の位は悪魔公爵。名前はオブシディアン、イズリルからもらった大切な名だ。イズリルの寿命が尽きた時、その時は私が魂を貰うと契約をした。寿命で命が尽きるその時までは守ってやる約束までした。本来なら呼び出したその時点で命は無いのだが今回は例外だ。イズリルの魂が欲しいからこの条件で契約をしてやったのだ。むしろありがたく思うが良い。まぁもう二度と輪廻転生の輪には帰れないがな、あ、ついでにあのガキの呪いも解いてついでに呪い返してやったぞ。」

「ガキ...まさかっ、メイル様の事っ...か!」

「そう、そのガキだ。今は部屋で寝ている」

フッと重圧が解けてお父様は椅子に深く座るとはぁ、とため息をつく。

「イズ、メイル様は、髪の毛は...」

「も、勿論元の金髪に戻りましたよ!大丈夫です!あと、メイル様を呪った張本人はゲスン伯爵です。オブシディアンが調べてくれました。後は呪い返しをしてもらったのでゲスン伯爵は髪が黒くなっているかと!」

「そうか...分かった。こちらへ来なさい、イズ」

「は、はい、お父様」

トトトっとお父様のところへ行くとギュッと抱きしめられた

「お、お父様!?」

「お前がある日突然性格がガラリと変わって俺は混乱した。もちろんリリアンもだ。だが元気になったと、二人で喜んでいたのだ。もちろんセバスもだ。屋敷のみんなも元気すぎるお前を見てこれからの成長が楽しみだと。だがこんな危険な事、もう二度としないでくれ。悪魔召喚なんて、自分の魂を代償にするなど、正気の沙汰じゃない。自分の命をかえりみないお前を見ていると怖いのだ。」

何とお父様が泣いてしまった

ど、どうしよう!

「お、お父様っ、申し訳ありませんでした。危ないことはもうこれきりです。それに考え方を変えれば寿命以外で死ぬことはありません!」

「だが輪廻転生の輪にはもう二度と戻れないとオブシディアン殿が言っていた。次の輪廻転生ができないと言うことはもう二度と私たちには会えないと言うことだ!」

「お父様...」

「頼むから、もう大人しくして言う事を聞いてくれ。俺はお前を失うのが怖いのだ。」

「はい、お父様」

コンコン

「あなた、先ほどの膨大な魔力はいったい?」

ガチャリと空いた扉にはお母様が心配そうにこちらを覗いていた

「お母様」

そう言ってお母様の方を見るとお母様の目が見開かれた。

「イズ、その目は一体...?」

先ほどお父様にした説明をもう一度するとお父様と一緒にお母様まで俺を抱きしめてきた。

「イズ、イズ、そんなのあんまりだわ!!何とかならないの!?」

「お母様、これは俺が望んでやった行動の結果です。後悔はしていません。公爵家の顔に泥を塗らぬ様左目は常に眼帯をつけて過ごす様にはしますが...」

「そんなことどうでも良いのよ!!貴方が魂をかけてまで成し遂げなければならなかったことなの!?」

「ある程度覚悟はできてましたし、友達が苦しんでるのを見て見ぬふりはできませんでした。」

「イズ...貴方のそう言った優しい性格は変わってないのですね。分かりました。イズにはメイル様の事をきちんと話さなければなりませんね、あなたも、イズにきちんと話しましょう」

「ああ、そうだな、イズ、そこの椅子に座りなさい。」

それからメイルがこの国の第一王子だと言うことや第二王妃派の過激派が今活発的になっていること、あのメイドの賊はゲスン伯爵家の間者だった事、色々と教わった。

「分かりました。お父様の友達の王様にはこの事丸っと全部伝えてもらって構いません。信用しているので。」

後は俺の出る幕はない様だな

後はメイルの心の回復次第か

「後もう一つ、オブシディアン、人の記憶って弄れる?」

「何だ、記憶の改竄か、簡単だぞ?誰かにして欲しいのか?」

「ああ、メイル様に」

「なんだ、あのガキか」

「ちょっと待て、イズ、何故殿下にそんな事を?」

「きっと俺が魂を代償にメイル様を助けた事、負い目に感じると思うんだ。だからメイル様がこの屋敷に来た記憶を曖昧にしたい。どこかの貴族の屋敷に行ったら呪い解いてくれた人がいたーくらいにぼんやりとさ!」

「...イズはそれでいいのか?友達ができたと喜んでいただろ?」

「俺が覚えておけばそれはもうずっと友達だから大丈夫!残された時間を使ってたくさん思い出作るよ、俺がね!」

「何故私があのガキのためにそこまでしなければならないのだ」

「何でそんなにメイル様のこと嫌いなんだよ」

「イズリル以外はどうでも良いだけだ」

「何なのお前、本当に疲れる!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

司書ですが、何か?

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。  ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。

処理中です...