上 下
41 / 43
三章

39.魔法陣発動

しおりを挟む
「ここがレベルC区域の中心部...」

視界はまだ薄暗い程度だ。

「魔法陣を発動します!魔物は皆さんにお任せします!」

「うんー、リョカ頑張れー」

「守りは我々に任せてください、リョカ先生!」

上から順にレビアと第一王子が、騎士団長と魔術師団長はお互いに顔を見合わせて頷き、周囲を警戒する。

俺は指先に魔力を込めると何も無い空間に魔法陣を描く。

まずはレベルC区域の範囲に絞って空気の魔法陣、その次に解毒の魔法陣、闇魔法でろ過する魔法陣、永続の魔法陣、封印の魔法陣、全5個の魔法陣を複雑に絡め、やがてその魔法陣はレベルC区域全体を覆った。








どのくらい経っただろう

思ったより魔力を消費したようだ

俺は額に浮かんだ汗を拭う。

集中しすぎて周囲の音などを遮断していた。

チラリと周りを見ると魔物の山が出来上がっていた。

「うわぉ、圧巻ですね。」

俺がそう言うと一斉に俺の方をみんなが見た。

「リョカ先生!魔法陣の方はどうですか!?」

第一王子が俺に駆け寄り、結果を聞いてくる

それに俺は笑って

「勿論、無事に発動しています、じきにこのレベルC区域の瘴気は無くなると思います。」

「流石、リョカだねぇー」

「リョカ先生!魔法陣を見せてもらっても!?」

そう言いながら魔術師団長は俺にグイッと詰め寄ってきた

「ええ、好きなだけ見てください、そしてもし改良出来るところがあるなら教えて欲しいです。」

「分かりました!」

「リョカ先生は凄いですね、たった1時間であの魔法陣を一人で完成させるなんて」

そう言いながら騎士団長が俺に声をかけてきた

そっか、1時間もかかったのか、あの魔法陣。

「1時間もかかってしまいましたか、次からはもう少し早く完成させるよう頑張りますね。」

これからここよりもずっと強い魔物がウジャウジャしているところに行くのだ。

1時間もかけて魔法陣を描いていてはみんなの負担が大きい。

「リョカー、普通はこの規模の魔法陣を描くにはねー、数十人の魔術師とー、丸一日の時間が必要になるんだよー?それを一人で、しかも1時間で描き上げるなんてリョカは優秀すぎるよー」

えらいえらいと言うかのように俺の頭を撫でてくるレビア。

「そうですよ、リョカ先生。あなたの魔法陣はとても美しい、あの短時間で描き上げたとは到底思えません!」

「魔術師団長、もう魔法陣は見なくて大丈夫ですか?」

「ええ、しっかり堪能させていただきました。それにしても本当に素晴らしい、あれは奇跡の上に成り立っているかのように見えて、きちんと理論に基づいて緻密に計算され尽くされた魔法陣だ。一切の綻びもない、完璧な魔法陣です、リョカ先生!」

おぉ、随分と評価されたものだ。

「ありがとうございます」

「どうでしょう、これを機に我々の魔術師団に入りませんか!」

「ダメでーす、リョカは俺の助手なので忙しいでーす」

「おや、残念ですね、ではもし職に困ったらいつでも歓迎いたしますよリョカ先生」

その言葉に俺はハハッと愛想笑いしておいた。

俺が国のために戦うとか天地がひっくり返ってもあり得ない話だ。

「うわっ!」

第一王子の驚く声が聞こえ、話し込んでいた俺たちはバッと声のした方へ駆けつけた。

「コール殿下!いかがなさいましたか!?」

騎士団長がいち早く第一王子のところへ駆けつける 

「あ、あぁ、大声を出してすまない。ただ、今しがた我々が倒した魔物が黒い粒子となり消え出したのだ。あ!ほら!また!」

「!?、これは...」

俺たちもその場に駆けつけると確かに死んだ魔物が黒い粒子となって消えていっていた。

「恐らく死んだ魔物が瘴気に変換されたのでは?それを私がさっき施した魔法陣によって分解し、正常な空気に戻しているかと...」

「その工程がリョカが言ってた空気清浄機の仕組みなのー?」

「ああ、そうだよレビア。」

すると俺とレビアの会話を聞いた魔術師団長がグワっとこちらを向き、空気清浄機とは!?と聞いてきて面倒だったのでシカトすることにした。

「さ、いずれこの死体の山は消えることでしょう、殿下、先に進みませんか?」

「ああ、そうだな。では皆先に進もう!」

リョカ先生ー!と嘆いている魔術師団長を騎士団長に預けて俺たちは先を進むことにした。













それからは概ね順調に予定通り進んでいた

強いて言えば魔物が強くなった

魔法が効かない魔物も出てくるようになりはじめたのだ。

その時は物理攻撃でなんとか対処しているが、今後魔術も物理攻撃も効かない魔物とかも現れそうで面倒臭い

「これから予定通りレベルB区域の森に入る!皆心して入るように!」

第一王子の言葉に皆気が引き締まったのか顔が心なしか緊張気味だ。

まぁ、たるんだ雰囲気より少しピリピリしている方がいい。

それも行き過ぎるとダメだが。

そんなことを考えていると探索の魔法に警戒アラームが鳴った

結構強いという事だな

おれは声をひそめレビアに話しかける。

「レビア、今までの魔物より強い、気をつけろ」

「んふー、俺の心配なんてしてくれるのはリョカだけだよー」

そうやって嬉しそうに言うレビア

だが俺が警戒したと言う事実にレビアは一気に気配を変えた。

「今までより強い魔物の気配がします!戦闘準備!」

俺が声を上げて警戒を促した

こう言うのは全て魔術師団長に今まで任せていたが今回はしょうがない。

俺の索敵範囲が魔術師団長よりはるかに広いことがバレても俺の索敵にアラームが鳴った時点でヤバそうなのが近づいてきているのは確かなのだ

「後どのくらいで接敵しますか!?リョカ先生!」

魔術師団長がすんなり俺の言葉を受け入れて戦闘体制に入ったため、周りの緊張がグッと高まった。

「十秒後!正面から来ます!9!8!7!」

俺がカウントしている間に殿下を守りやすいよう騎士団長が部下に指示を出した

まぁ第一王子もそこそこ戦えるのだが念には念を入れてと言うわけだ。

「2!1!」

ガササッ!!

凄い勢いで茂みの方から出てきて突進してきたのは大きな鹿のようなツノを持った大型の魔獣だった。

取り敢えず鑑定!

ふむ、成程、魔法攻撃は効かないが物理攻撃は効く、だが回復力が極となっている...

さて、どうしたものかな




しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

処理中です...