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一章

6.ちょっと待って!

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「リョカ!!待ってくれ!」

デリーの必死な声にピタリと動きが止まる

「あららー、デリーとギャルに見つかっちゃったねぇ、リョカー」

「レビア様っ、何故こちらに!?」

「えー?なぁに、ギャルー、俺がいたら...駄目なのー?」

急に空気がピンッと張り詰める

そんな空気をものともせずにデリーがギャルを背に庇ってすぐに謝る。

「レビア様、申し訳ありません!ギャルはちょっと馬鹿なんです!許してやってください!」

「んー、どうしよっかなぁー、ギャルはお馬鹿さんなのー?」

そう言ってレビア様と呼ばれた男がギャルを見る

「えっと、う、は、はいっ、お馬鹿です?」

その場に沈黙がはしる。

「なぁーんだ!そっかそっかぁー!ギャルはお馬鹿さんー!アハハッ!」

デリーとギャルがホッと息をついた所で俺はお肉さんたちの恨みをはらすべくシャドウバインドで拘束している男たちに向き直ると情けない声を出して怯え出した。

「まっ、待ってくれリョカ!それ以上は俺の顔に免じて許してやってくれねえか!」

「コイツらから俺に喧嘩売って来た。お前の注意喚起とやらは意味なかったみたいだな。これからもコイツらみたいなのはウジャウジャ湧いてくる。そう考えるとここで一回殺しておくのはまともな判断だと思わないか?デリー」

そう言って鋭い視線をデリーに向ける

俺の顔は見えてないはずなのにまた空気が張り詰める。

流石に今回ばかりはギャルも片唾を飲んで事の成り行きを見守っている

「それはっ!その通りだが...もう一度チャンスをくれ、リョカ!頼む!」

「えー、デリーってば相変わらず真面目さんのお人好しだねぇー、こんな奴らなんて代わりはいくらでもいるんだからサクッと殺しちゃえばいいのにー」

緊張感のないゆるい喋り方でバサっとあの2人を切り捨てる恐らく何らかの組織の中核を担うレビア様とやら。

俺もその意見に賛成だ

「今回だけでいい、もしも次があったら...その時はもうお前のすることを止めたりしないっ、約束する!」

そう言って頭を下げて来た

えー、こんなにコイツ仲間思いなの?

裏の世界の人間なのに甘過ぎない?

大丈夫?なんかこっちが心配になるんですけど

こんなに頭下げられてもこの2人殺すって言ったら何かこっちが悪者みたいじゃん

「はぁ、頭上げろ」

そう言うとおずおずと頭を上げるデリー。

「本当に今回だけなんだな」

「ああ、今回だけだ。」

はぁ、とため息を吐くと

「分かった、デリーの顔に免じて今日の所は許すだが次は無い」

パチンッと指を鳴らして魔法を解除する。

ドサリと地面に座り込む2人はシカトだ。

ギャルが近くにいる奴等に声を掛けて元凶の2人を何処かへ運ぶ様指示を出した。

賢明な判断だな、これ以上不快なものを目の前に置かれていても困る。

「えー、殺さないのー?血はー?肉はー?ねーねー!」

「黙れ」

「えー、リョカは厳しいにゃー」

「それで、リョカは何が原因であんな状況になったんだ」

「俺が買った肉の串焼きを駄目にされた」

そう言って地面を指差す

「あ゛ー、成る程、分かった。とにかくリョカに手を出さない様もう一度徹底的に指導しとくから。それとほら、リョカの身分証、確認してくれ。」

「おやおやー?リョカは身分証持ってなかったのー?」

「...ああ」

「ふーん、今どこに住んでるのー?」

「お前に言う必要があるのか」

「えー、俺一応こう見えても偉い人なんだよー?ねぇ!デリー、ギャルー?」

「偉いと言うか...そうですね、偉い人です」

「偉い人です。」

デリーとギャルが顔を見合わせて答えた。

「はぁ、すぐそこの空き家だ。デリーとギャルがそこを用意してくれた。」

「へーぇ、俺そんな報告きいてないぞー?」

「その報告は今日この後行く予定だったんですよ、レビア様」

「そーなのー?ならしょうがなーいねー」

「...お前、名前はレビアと言うのか」

「おやおやー!リョカ君俺に興味出て来たー?」

「...別にただあんたがレビア様と呼ばれているから何かの組織のトップなのかと思って」

「リョカ君、それを興味と言うんだよー!」

そんなやりとりをしているとデリーとギャルが真っ青な顔で俺とレビアを見ていた

何故そんなに顔色が悪いんだ?

「ふっふっふー、特別にリョカにはレビアって呼ばせてあげるー!俺リョカの事気に入っちゃったー!」

そう言うレビアに2人は更に顔色を悪くして同情する様な目で見てくる

やめろ、何だその目は。

なんか嫌な予感しかしない

「まぁ、今日は様子見に来ただけだからー、その内リョカにも色々教えてあげるねー、バイバーイ!」

そう言ってピンクブロンドの髪をなびかせて去って行った。

何だったんだ一体。

はぁ、なんか疲れたなぁ

「俺、もう帰るけど他に用事は?」

「あ、ああ、いや今日はもう特には...」

「おい、リ、リョカ、これ。」

そう言って差し出されたのはお肉の串焼きが沢山入った紙袋だった。

俺は無言でギャルを見つめる

「べ、別にお前のためじゃねーぞ!デリーが色々と、その、大変だから!少しでもサポートするために買って来たんだ!」

そう言って俺に袋を押し付けてデリーの後ろに隠れる

まるで懐かない野良猫の様だ。

「フッ、分かったありがたく貰っておく。」

俺はすれ違いざまに俺より少し高い位置にあるギャルの頭を軽くひとなでして家に帰る道を進んだ。

後ろから、んなぁ!?と言う声が聞こえたが気にしないでおこう。

俺は今気分がいいのだ。

家に帰って先程レビアにつけられた金のリング状の髪飾りを取ろうと思っても取れなかった。何これ怖い。

そんなことを思いながらギャルから貰った出来立て熱々の肉を頬張る

うん、何だかんだで今日はいい日だったな。





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