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不思議なあの人
一つの推測
しおりを挟む……にしても結構、時間経ったと思うけど文香遅いなあ、何しているんだろ。
ふとスマホを見るとその本人からLINEが来ていた。
『ごめんね! ちょっと体調悪いから先に帰るね~』
文香が体調悪くなるなんて珍しい。
記憶の限り覚えている中でだけど彼女が風邪をひいたのは数回ほどだったはずだ。
元気と笑顔がチャームポイントな印象が強い彼女だ。
いつも基本的に笑顔で明るくてその点は本当に見習いたいなと思う。
『そっか了解っお大事に~占いの結果どーだった?』
とだけ打ちスマホを鞄の中に入れた。
「そういえば結さんはどうして占いを受けようって思ったのかしら。良かったら私に教えて欲しいわ」
結さんがにこりと微笑んで聞いた。優しそうな笑顔。本当に性格が良い人なのだと改めて分かるような。
隠す必要がなかったので言うことにした。
「多分ですけどあたし大切な人のことを忘れていて……それを思い出したくて受けようって思いました」
これで言いたいことは絵里さんに伝わったはずだ。多分。
正直に言うとちょっと自信がない。こういうのって伝ったり伝わなかったりするからだ。
例え100%確実に伝えきったとしても相手に理解力が無ければ伝わることがない。
まあ絵里さんなら大丈夫だと思うけれども。
「なるほどね……。いいじゃない青春ね~大切な人だけど覚えていないのですね……。
確かに何で覚えていないのかしら」
それは自分も気になっていた。何でそんなにも大切な人のことを忘れているのか。
ただ一つの推測が思いついた。当時の自分にとっては覚えていたくなかったのではないかと。
人から聞けば矛盾していると言われるかもしれない。けどその考えに至ったのだ。
「それがあたしも分からなくて……だから占いで教えて貰おうと思いました」
「そっか」
そう短く絵里さんは呟いた。自分が絵里さんの立場だとしてもきっとそう言っていただろう。
「でもそういうのって初恋の相手だったり……するんじゃないかしら」
初恋の相手か……確かにそうかもしれない。
きっとあたしにも初恋の人がいて、あの人がもしかしたらそうかもしれない。
はたまたそうじゃないかもしれない。それは今は分からないことだった。
「まあ私の妹に任せればそんなのは安心ね。あの子本当に凄いから!」
今は絵里さんと話をしながら自分の番を待つしかなかった。早く自分の番が来ないかと思っていると。
「50番のお方、大変長らくお待たせしました。黒いテントの方へと来て下さい」
やっとだ。
絵里さんにお礼を言い立ち去ろうとした。けど絵里さんはスマホを取り出しこう言った。
「LINE交換しましょ」
深いことを考えずに絵里さんと交換してその場を去った。きっとまたどこかで会うだろう。
そんな予感を抱きながら。
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