青い春を漂う

CHIKA(*´▽`*)

文字の大きさ
上 下
10 / 39
不思議なあの人

思わぬ出会い

しおりを挟む

時刻は午後4時を示そうとしていた、その時だ。
 「46番のお方。大変長らくお待たせしました。黒いテントの方へと来て下さい」
 シャノワール小村の声の放送が聞こえた。どうやら文香の番が来たようだ。
 「じゃあ私さきに行って来るね! 終わったらまたここに戻って来るね~」
 文香は上機嫌にスキップをしながら黒いテントの方へと向かっていった。

 自分一人となってしまった。とても暇だ。誰か話し相手が欲しい。
 あれから5時間以上が経過した、屋台も全部巡ったし何もすることがない。
 スマホのアプリで遊ぼうと思ったがなんかやる気がなくてやめた。
 本当に何をして時間を潰せばいいのか分からない。
 誰かと話せたらこんな時間あっという間に潰せるのだけれども。

 人が少なくなった噴水の近くまでに行き腰を下ろした。
 屋台で何かを食べようと思ったが食べ過ぎては体重が増えるかもしれない。
 スマホで音楽でも聴こうかと思ったけど……。
 「あっ」
 イヤホンを持ってくるのを忘れたことに気がついた。自宅に置いて来てしまったのだ。
 「やっちまったなあ……」
 本当に何もすることがない。ただぼーっとして文香が帰って来るのを待つしかないのだろうか。
 今なら噴水の中にダイブしても別にいいくらい本当に何もすることがない。
 何かをして時間を潰したい。

 「もしかして暇ですか」
 俯いている自分に頭上から声が聞こえた。見上げるとそこには茶髪ロングの女性がいた。
 背中まで伸びている髪。ぱっちりとした二重。決して濃すぎない自分に合ったメイク。しゅんとした鼻。
 まさに美少女という雰囲気の人。
 私と目が合った途端ににこりと優しく微笑んだ。
 ……私の目の前には女神がいるのではないか。とつい思ってしまった。
 女性の後ろに後光が見えるような神々しいオーラを感じた。

 「ひっ……暇ですけど……」
 もうなんか驚く気力もない。いつもなら驚いている気がするけど別に誰でもいいや。
 時間が潰せるのなら何でもいい。
 「良かったら私とお話しませんか」
 すぐ返事をした。迷う必要なんて何もない。
 「是非ともお話しましょう」
 女性はふふっと笑い隣に座った。

 よく見ると身長はとても高くスタイルも良かった。
 自分の身長は162くらいだがそれより少し高く見える。165くらいだろうか。
 それより少し大きいくらいか。
 丈が長めのグリーンのチェックワンピは彼女にとても似合っていた。
 手には少し大きめのベージュ色のバッグ。

 「私の名前は正野絵里まさのえり。あなたは?」
 名前は下の名前だけかなと思っていたけどまさかフルネームとは。
 これは自分もフルネームを言うのが礼儀だろう。
 「水本結です」
 絵里さんはにこりと笑った。元から綺麗なのに笑うと更に綺麗に見えた。
 ただの一般人には見えない。どこかの女優のようだ。

 「結さんは何をしているのですか」
 もう少し遠回しに聞いてくるのかと思っていた。けど結構どストレートに聞かれて驚いた。
 絵里さんは顔をじっと見てくる。そんなに見られると顔を逸らしてしまいたくなる。
 別に隠す必要もなかったからきちんと答えた。
 「シャノワール小村の占いに来ました」
 来たというか仕方なく行く羽目になってしまったのやら。
 とりあえず自分の意志では来てはいない。
 でも流石にそこまで言わないでいいかと思い、言わなかった。

 「私の妹の占いですね」
 「ん?」
 つい声に出てしまった。まるで息を吐くように驚きの言葉を言ったから。
 「シャノワール小村は実を言うと私の妹なんですよ」
 つい叫んでしまいそうになったので咄嗟に両手で口を覆った。
 覆わなかったから本当に叫んでしまいそうだったから。
 こういうのはドッキリではないだろうかとつい思ってしまう。
 周囲をきょろきょろと見渡してみるがカメラやカメラマンらしきものは見つからない。
 ……となると本当に姉なのかという決断に至る。

 「……本当にそうなのですか……?」
 つい恐る恐る聞いてしまった。深い意味なんて何もない。ただ、なんとなく。
 「そうですよ。あと私は化粧品を作っているのですよ」
 シャノワール小村の姉なのかを判断するだけ。だったのにまた新たに情報が増えてしまった。
 化粧品を作っている……?さらっと絵里さんは言ったけどそれはとても凄いことだ。
 「あなたがつけているリップ。シャノワールのものよね?」
 自分がつけているブランド名は覚えていなかった。けど急に思い出した。
 シャノワール。初めて買ったデパコスのブランドの名前だということを。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた

迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」  待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。 「え……あの、どうし……て?」  あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。  彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。 ーーーーーーーーーーーーー  侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。  吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。  自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。  だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。  婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。 ※基本的にゆるふわ設定です。 ※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます ※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。 ※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。 ※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)  

処理中です...