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EP4 闇に溶ける懺悔3 手よ届け
散り散りバラバラ
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「っぁぐ!?」
腹をどつかれたような衝撃に思わず呻く。
相当ゴツい装甲車のはずだが、天井部分が取り払われていたこともありいともたやすく泥の侵入を許す。
逃げ場など当然なく、最早飲み込まれる……!と、死を覚悟した瞬間だった。
身体がふわりと浮かぶ。
というか、浮遊感を急に覚えた、が正しいだろうか。
同時に視界いっぱいに空と泥が映る。
上空を見上げれば、空間の亀裂。
『夜一が空間魔法を使って私たちを逃がしてくれたみたい。でも皆ばらばらに……!』
最後に見えたのは、トツカが瑞雪の腕を掴み抱え、夜一がヴェルデの首根っこを掴んだところだ。
だから、完全に孤立しているメンバーはいないと、思いたい。
「夏輝、レイ、大丈夫か!?……いや、現在進行形で落ちてるんだけどさ!」
シイナよりも高く空へと放り投げられたのは、きっと泥が空には昇ってこないはずだから。
咄嗟に夜一が俺達を逃がしたのだから、文句など言えるわけもない。
「何とか俺は大丈夫……!」
「おれ、も。まさか落ちるとは思ってなかったけど」
そんな言葉を交わしている間にも、どんどん地面へ向かって落ちていく。
上から見る事で図らずも、シイナの全貌が露わになる。
泥の範囲は刻一刻と拡大しており、車だったものは完全に泥に飲み込まれてしまっていた。
ぐったりとする瑞雪をトツカが抱え、何とか逃れているのが見える。
ヴェルデも夜一に連れられて無事のようだ。
トロンの報告だけでなく、自らの目で確認できるのはホっとした。
「とにかく、レイがシイナに呼びかけられるところまで何とか連れて行かないと……まず、この空中でどうするかなんだけどさ!」
夏輝の言葉に俺も頷く。
「とりあえず、俺に捕まれ……っ!」
このまま落ち続けるのも当然まずい。そう猶予はない。
レイに何か策があるのか叫び、俺と夏輝に向けて手を差し出した。
手を掴むと、レイの腰のあたりから着ているパーカーを捲り上げ翼が飛び出した。
尾てい骨の部分に二つスリットがあり、そこから翼を出せるらしい。
「レイは空を飛べたんだね」
「これも、ぅぐ……っ、中途半端で、ただでさえ強度の低い羽がさらに脆くなってる出来損ないだぞ。一人で飛ぶのが精いっぱいだから
シイナの顔がこちらを向く。正しくは、レイだけれど。
真っすぐに見据え、口を開く。
開くたびに泡が溢れ、魔物の形をとり街へ向かって流れ出ていく。
「うぅぐ、重い……」
俺と夏輝を掴み、なんとか空を飛ぼうとするレイだったがその重さに耐えきれない。
歯を食いしばり、ばたばたと翼を動かしても、どんどん高度は下がっていく。
「このままじゃ泥に飲み込まれちまう!風魔法で巻き上げられないか!?」
「やってみるっ!」
俺の手持ちの魔法では、レイをアシストすることはほぼ不可能だ。
土魔法だって、地面に触れていなければ使えない。
夏輝が風のマナを練り上げ、下から突風を噴き上げる。
「落ちは、しなさそうだけどっ!コントロールが全くできない!」
何とか落下死は免れそうだったが、レイが今度は別の意味で悲鳴を上げた。
シイナは俺達をめがけて腕を伸ばしてくる。
万事休す、俺達がそう覚悟した瞬間大きな黒い影が俺達を覆った。
腹をどつかれたような衝撃に思わず呻く。
相当ゴツい装甲車のはずだが、天井部分が取り払われていたこともありいともたやすく泥の侵入を許す。
逃げ場など当然なく、最早飲み込まれる……!と、死を覚悟した瞬間だった。
身体がふわりと浮かぶ。
というか、浮遊感を急に覚えた、が正しいだろうか。
同時に視界いっぱいに空と泥が映る。
上空を見上げれば、空間の亀裂。
『夜一が空間魔法を使って私たちを逃がしてくれたみたい。でも皆ばらばらに……!』
最後に見えたのは、トツカが瑞雪の腕を掴み抱え、夜一がヴェルデの首根っこを掴んだところだ。
だから、完全に孤立しているメンバーはいないと、思いたい。
「夏輝、レイ、大丈夫か!?……いや、現在進行形で落ちてるんだけどさ!」
シイナよりも高く空へと放り投げられたのは、きっと泥が空には昇ってこないはずだから。
咄嗟に夜一が俺達を逃がしたのだから、文句など言えるわけもない。
「何とか俺は大丈夫……!」
「おれ、も。まさか落ちるとは思ってなかったけど」
そんな言葉を交わしている間にも、どんどん地面へ向かって落ちていく。
上から見る事で図らずも、シイナの全貌が露わになる。
泥の範囲は刻一刻と拡大しており、車だったものは完全に泥に飲み込まれてしまっていた。
ぐったりとする瑞雪をトツカが抱え、何とか逃れているのが見える。
ヴェルデも夜一に連れられて無事のようだ。
トロンの報告だけでなく、自らの目で確認できるのはホっとした。
「とにかく、レイがシイナに呼びかけられるところまで何とか連れて行かないと……まず、この空中でどうするかなんだけどさ!」
夏輝の言葉に俺も頷く。
「とりあえず、俺に捕まれ……っ!」
このまま落ち続けるのも当然まずい。そう猶予はない。
レイに何か策があるのか叫び、俺と夏輝に向けて手を差し出した。
手を掴むと、レイの腰のあたりから着ているパーカーを捲り上げ翼が飛び出した。
尾てい骨の部分に二つスリットがあり、そこから翼を出せるらしい。
「レイは空を飛べたんだね」
「これも、ぅぐ……っ、中途半端で、ただでさえ強度の低い羽がさらに脆くなってる出来損ないだぞ。一人で飛ぶのが精いっぱいだから
シイナの顔がこちらを向く。正しくは、レイだけれど。
真っすぐに見据え、口を開く。
開くたびに泡が溢れ、魔物の形をとり街へ向かって流れ出ていく。
「うぅぐ、重い……」
俺と夏輝を掴み、なんとか空を飛ぼうとするレイだったがその重さに耐えきれない。
歯を食いしばり、ばたばたと翼を動かしても、どんどん高度は下がっていく。
「このままじゃ泥に飲み込まれちまう!風魔法で巻き上げられないか!?」
「やってみるっ!」
俺の手持ちの魔法では、レイをアシストすることはほぼ不可能だ。
土魔法だって、地面に触れていなければ使えない。
夏輝が風のマナを練り上げ、下から突風を噴き上げる。
「落ちは、しなさそうだけどっ!コントロールが全くできない!」
何とか落下死は免れそうだったが、レイが今度は別の意味で悲鳴を上げた。
シイナは俺達をめがけて腕を伸ばしてくる。
万事休す、俺達がそう覚悟した瞬間大きな黒い影が俺達を覆った。
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