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EP3 復讐の黄金比5 復讐に駆られる者たち
吸血鬼VS竜2
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「うぉ!?」
竜がアレウの生み出した血の網に向かって炎を吐き出す。
炎は着火し、瞬く間に燃え上がる。
「網を辿って追尾するとか……っ!案外考えるじゃねえか!」
知能の低い竜、と言えば飛竜などの亜竜だ。
あれらは竜であって竜ではない。ただの爬虫類だ。
導火線に着火した火の如く凄まじい勢いで迫ってくる炎にアレウは直ちに血の網を解除する。
周囲に火の粉と呼ぶには大きすぎる炎が舞い、皮膚をじりじりと焦がす。
しかし、血の網を解除しても炎はしつこく追ってくる。
今まで出すことのなかった漆黒の翼を出し、空へと飛びあがる。
「っは、空に逃げやがったな!」
勝ち誇ったように竜が吠える。
しかし、アレウは竜の思い通りに空高くへは舞い上がらない。
ビルや住宅の上すれすれを這うように飛ぶ。
いくらかは巻き込み瓦礫と化すだろうが、仕方ない。
コラテラルダメージというやつだ。
竜の腕が変化し、肘から骨が突き出、爪が太く鋭く変化する。
足の形も同様に変化し、竜の強靭な脚へと変わった。
直後、翼をはためかせ竜が滑空と共にアレウに向かって突っ込んでくる。
その速度は目を見張るもので、直撃すればいくらアレウと言えどどてっぱらに大穴があく事だろう。
「マジでフィジカルお化けじゃねえか……!」
即座に反応。
たどり着かれる前に逃げつつ、炎の壁を竜の行く手を阻むように展開。
「がるるるるぁっ!」
しかし、竜は怯むことなく炎の壁を突っ切って飛んでくる。
当然アレウの獄炎だ、無傷では済まない。
露出している部分の肌には軽くない火傷を負う。
「……火傷したところが片っ端から即座に再生開始とかやばいだ、ろっ!」
竜の固有能力は結界に留まらない。
極めて再生能力が高いことも強さの一つに挙げられる。
とはいえアレウも圧倒されているばかりではない。
宙に自らの血で魔法陣を描く。
「流石にこの炎を突っ切ることはいかに竜だってできねえだろうよ!」
魔法陣にマナを注ぎ、魔法を練り上げる。
吸血鬼の血は起爆剤だ。
血を用いて描いた魔法陣による魔法の威力は通常の何倍にも膨れ上がる。
練り上げた魔法を人差し指で上から下へと切り結べば、先程までとは比べ物にならない威力と規模の炎の濁流が竜へ向かって放たれた。
「流石にあれを真正面から喰らったらヤバいな」
本能的に危機を察知した竜は暴力から逃れるべく上へ向かって急上昇する。
しかし、血の仕込まれた炎はアレウの思うがままにまるで生き物かなにかのように縦横無尽に空を駆け回る。
複雑な軌道をえがき飛び逃げる竜に食らいつき、幾筋にも分かたれ逃げ場をなくしていく。
「ようするに、それより速く飛べばいいんだろっ!」
竜の翼が煌めき、より巨大に広がる。
「翼強化の魔法か……竜が使うとそれだけで段違いだな」
速度が上がり、炎で捉えきれなくなる。
これ以上の追跡は無駄だと炎を霧散させ、血で投げナイフを造り飛び回りながら竜に向かって放つ。
「おせえおせえ!吸血鬼っつっても大したことはねえな!」
ナイフは竜をかすりもしない。
竜は高らかに笑い、右腕に炎を収束し、宿す。
腕は竜の鱗と炎の爪を纏い、上から下へと薙ぐように振り下ろす。
刹那、巨大な衝撃波が巻き起こり、アレウを飲み込もうとする。
建物を巻き込まない、灰燼に帰さないぎりぎりを攻めたコントロール。
竜の飛行に巻き込まれた瓦礫を巻き上げつつ、竜の右腕がアレウをとらえる。
「今度は逃がさないぜ?」
「っぐ、ぅ”……!」
竜の右腕はアレウの腹に大穴を開ける……ギリギリでアレウの腕が竜の腕を掴み防いでいた。
しかし、真正面から受け止めた腕を掴んだことで手の骨は砕け、皮膚は焼け爛れる。
それでも腹に穴は開かず、ギリギリ掠る程度で済んでいた。
「お前にゃ恨みはねえが、このまま骨の髄まで焼き尽くしてやる」
竜の口元が吊り上がり、鋭くとがった白い犬歯が覗く。
(久々に感じた痛みだな……なんだか新鮮だ)
地球では、自ら首を突っ込みさえしなければ戦いに巻き込まれることなどほぼない。
そんなアレウが感じる痛みなど、うっかり包丁で指を切ったときだとか、ロセに噛まれたときくらいなわけで。
久々に感じた戦いの痛みにアレウはすぅっと目を細める。
「そうは問屋が卸さねえよ、お嬢さん」
痛みに脳が活性化する。
アドレナリンがどばどばと放出され、アレウの瞳孔がキュっと縦に割れた。
負けじと獰猛な笑みを浮かべ返し、空いた手で指を鳴らす。
刹那、竜に当たらず各所に散らばっていた血で出来た投げナイフが輝きだす。
「闇の縛鎖、いくら竜と言えど力づくで解除するのは難しいぜ?」
「っぐぅ……はなから時間稼ぎかよ」
「今更気づいたのか?自分の強さに自信を持つのはいいが、ちょっとばかり青臭いみたいだな」
魔法陣から竜の全身にどす黒い血で出来た闇の鎖が絡みつく。
マナで身体強化を行い、引きちぎろうとしてもみしみしと軋むだけで千切れはしなかった。
「さ、もう少し俺と遊んでもらうぜ、黒竜さんよ」
竜がアレウの生み出した血の網に向かって炎を吐き出す。
炎は着火し、瞬く間に燃え上がる。
「網を辿って追尾するとか……っ!案外考えるじゃねえか!」
知能の低い竜、と言えば飛竜などの亜竜だ。
あれらは竜であって竜ではない。ただの爬虫類だ。
導火線に着火した火の如く凄まじい勢いで迫ってくる炎にアレウは直ちに血の網を解除する。
周囲に火の粉と呼ぶには大きすぎる炎が舞い、皮膚をじりじりと焦がす。
しかし、血の網を解除しても炎はしつこく追ってくる。
今まで出すことのなかった漆黒の翼を出し、空へと飛びあがる。
「っは、空に逃げやがったな!」
勝ち誇ったように竜が吠える。
しかし、アレウは竜の思い通りに空高くへは舞い上がらない。
ビルや住宅の上すれすれを這うように飛ぶ。
いくらかは巻き込み瓦礫と化すだろうが、仕方ない。
コラテラルダメージというやつだ。
竜の腕が変化し、肘から骨が突き出、爪が太く鋭く変化する。
足の形も同様に変化し、竜の強靭な脚へと変わった。
直後、翼をはためかせ竜が滑空と共にアレウに向かって突っ込んでくる。
その速度は目を見張るもので、直撃すればいくらアレウと言えどどてっぱらに大穴があく事だろう。
「マジでフィジカルお化けじゃねえか……!」
即座に反応。
たどり着かれる前に逃げつつ、炎の壁を竜の行く手を阻むように展開。
「がるるるるぁっ!」
しかし、竜は怯むことなく炎の壁を突っ切って飛んでくる。
当然アレウの獄炎だ、無傷では済まない。
露出している部分の肌には軽くない火傷を負う。
「……火傷したところが片っ端から即座に再生開始とかやばいだ、ろっ!」
竜の固有能力は結界に留まらない。
極めて再生能力が高いことも強さの一つに挙げられる。
とはいえアレウも圧倒されているばかりではない。
宙に自らの血で魔法陣を描く。
「流石にこの炎を突っ切ることはいかに竜だってできねえだろうよ!」
魔法陣にマナを注ぎ、魔法を練り上げる。
吸血鬼の血は起爆剤だ。
血を用いて描いた魔法陣による魔法の威力は通常の何倍にも膨れ上がる。
練り上げた魔法を人差し指で上から下へと切り結べば、先程までとは比べ物にならない威力と規模の炎の濁流が竜へ向かって放たれた。
「流石にあれを真正面から喰らったらヤバいな」
本能的に危機を察知した竜は暴力から逃れるべく上へ向かって急上昇する。
しかし、血の仕込まれた炎はアレウの思うがままにまるで生き物かなにかのように縦横無尽に空を駆け回る。
複雑な軌道をえがき飛び逃げる竜に食らいつき、幾筋にも分かたれ逃げ場をなくしていく。
「ようするに、それより速く飛べばいいんだろっ!」
竜の翼が煌めき、より巨大に広がる。
「翼強化の魔法か……竜が使うとそれだけで段違いだな」
速度が上がり、炎で捉えきれなくなる。
これ以上の追跡は無駄だと炎を霧散させ、血で投げナイフを造り飛び回りながら竜に向かって放つ。
「おせえおせえ!吸血鬼っつっても大したことはねえな!」
ナイフは竜をかすりもしない。
竜は高らかに笑い、右腕に炎を収束し、宿す。
腕は竜の鱗と炎の爪を纏い、上から下へと薙ぐように振り下ろす。
刹那、巨大な衝撃波が巻き起こり、アレウを飲み込もうとする。
建物を巻き込まない、灰燼に帰さないぎりぎりを攻めたコントロール。
竜の飛行に巻き込まれた瓦礫を巻き上げつつ、竜の右腕がアレウをとらえる。
「今度は逃がさないぜ?」
「っぐ、ぅ”……!」
竜の右腕はアレウの腹に大穴を開ける……ギリギリでアレウの腕が竜の腕を掴み防いでいた。
しかし、真正面から受け止めた腕を掴んだことで手の骨は砕け、皮膚は焼け爛れる。
それでも腹に穴は開かず、ギリギリ掠る程度で済んでいた。
「お前にゃ恨みはねえが、このまま骨の髄まで焼き尽くしてやる」
竜の口元が吊り上がり、鋭くとがった白い犬歯が覗く。
(久々に感じた痛みだな……なんだか新鮮だ)
地球では、自ら首を突っ込みさえしなければ戦いに巻き込まれることなどほぼない。
そんなアレウが感じる痛みなど、うっかり包丁で指を切ったときだとか、ロセに噛まれたときくらいなわけで。
久々に感じた戦いの痛みにアレウはすぅっと目を細める。
「そうは問屋が卸さねえよ、お嬢さん」
痛みに脳が活性化する。
アドレナリンがどばどばと放出され、アレウの瞳孔がキュっと縦に割れた。
負けじと獰猛な笑みを浮かべ返し、空いた手で指を鳴らす。
刹那、竜に当たらず各所に散らばっていた血で出来た投げナイフが輝きだす。
「闇の縛鎖、いくら竜と言えど力づくで解除するのは難しいぜ?」
「っぐぅ……はなから時間稼ぎかよ」
「今更気づいたのか?自分の強さに自信を持つのはいいが、ちょっとばかり青臭いみたいだな」
魔法陣から竜の全身にどす黒い血で出来た闇の鎖が絡みつく。
マナで身体強化を行い、引きちぎろうとしてもみしみしと軋むだけで千切れはしなかった。
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