青い月にサヨナラは言わない

Cerezo

文字の大きさ
上 下
203 / 334
EP3 復讐の黄金比4 秘されたモノ

一息ついて

しおりを挟む
「モデルって重労働なんだなぁ……」

「うふふ。ある意味普段はできないような職業体験ができて見分が広がったんじゃない?」

 昼下がりのカフェ『朱鷺』。
 午前中みっちりロセのモデルの仕事の手伝い、基着せ替え人形にされ俺はぐったりと力なくカウンターに横たわっていた。

「そ・れ・に。変装、よくできてると思わない?」

「まあ、それは……そうだけど」

 ロセの言葉に俺は渋々頷いた。
 普段俺が着ないような服を貸し出してくれたのはロセだ。
 そして俺は変化の魔法で姿かたちを変えている。

「お疲れですね、ラテアくん」

 ことり。
 俺の耳元で音がして、顔を上げると八潮がアイスココアを置いてくれたのが見えた。
 ロセには温かい八潮特製ブレンドの紅茶だ。

「え、八潮……俺がラテアってわかるの?バレバレ?」

「バレバレではないと思いますよ。名前呼びはやめたほうがよろしそうですね」

 一発で八潮に見破られ、俺はため息をつく。
 単に八潮が鋭いだけなのか?謎だ。
 
「慣れないことをするってとにかく疲れるんだな。俺、バイトするならモデルよりも絶対ここで働く方がいいよ……」

「あーらら。モデルの仕事はお気に召さなかった?」

「モデルっていうか、どちらかというと着せ替え人形だっただけじゃねえか」

 ロセにあれやこれやと引っ張りまわされ時間はあっという間に過ぎ、とるものをとったカメラマンはロセに頭を下げつつ去っていった。
 アレウは後で合流すると言っていたが仕事に出ているため、俺とロセでカフェに昼食を取りに来たというわけだ。

「それはラテア君の素材がいいからだよ。普段いつもいもく……似たような服を着てるからね、色々と可能性を試してみたかったんだよ」

「お前……」

 今、ロセがすさまじく失礼なことを言ったのを俺は聞き逃さなかった。
 ぐるる、と喉の奥で唸り威嚇するとロセはやっべ、なんて顔をして肩をすくめた。

「でもでも、いい写真一杯撮れたからさ。あのカメラマンは一眼レフに強いこだわりを持っていてね。腕も確かだから」

 ロセの言葉にひとまずは納得しておく。
 というより噛みついても不毛だ。

「お昼ご飯はどうされますか?」

「私はサラダランチBで」

 八潮の言葉にロセはにこりと愛想よく笑い注文する。

「……それで腹膨れるのか?」

「昨日たっぷり食べたから。ね?」

 ロセはにやりと妖艶な笑みを浮かべ軽く下腹部を摩る。
 こいつは淫魔で、つまりそういうことなのだろう。

(つか、バレてたのかよ)

 俺は思わずバツの悪そうな顔をした。

「君はどうします?」

「俺はナポリタンランチで」

 と、注文したところでちりんちりんと入口に備え付けられた鈴が鳴る。
 入ってきたのは神父の格好をした背の高い銀髪男と、金魚の糞みたいな緑髪の青年と少年の間位のやつ。
 そいつの首には首輪が慎められており、銀髪の男の動きがどうにも隙のない動きだったこともあり羊飼いと猟犬なのだろうと推察が出来た。

(こんな真昼間から羊飼いが来るのも珍しいな)

 先程の傭兵の事もあり、変装しているとはいえ当然俺は警戒する。
 しかし、声をあげたのは俺ではない二人だった。

「ロセ!?」

「……エヴァン?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

オムツの取れない兄は妹に

rei
大衆娯楽
おねしょをしてしまった主人公の小倉莉緒が妹の瑞希におむつを当てられ、幼稚園に再入園させられてしまう恥辱作品。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おっぱい編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート詰め合わせ♡

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

処理中です...