106 / 334
EP2 卵に潜む悪意7 二転三転
7-6
しおりを挟む
「それじゃあ送ったし私たちは帰るからね。無理はしちゃだめだよラテアくん」
「わかってるっつの。それなら手伝ってくれりゃいいのに」
今は猫の手もどころではなく魔族の手も借りたい状況……かもしれない。
車に乗ること十分ほど。俺はアレウとロセに夏輝の通う高校のすぐ傍まで連れてきてもらっていた。学校の敷地内からは確かにマナ反応を複数感じる。
そして何より周囲には夏輝が張ったと思しき結界が存在した。もちろん現在進行形でだ。
「俺が出たら一瞬で終わっちまうからなあ。お前らのいいとこなーんもなくなっちまう」
不敵に笑うアレウ。車から降り、外の空気を目一杯吸う。既に結界内だから尻尾と耳は出しても大丈夫なはず。
うんと伸びをして俺はスマホを着ているパーカーのポケットに突っ込む。
「けっ、上位種がよ。ま、もともと手伝ってもらおうなんざ思ってねーよ!」
半分くらい妬みだとか嫉妬が入っているのは認めよう。もしも俺がアレウみたいな強い種族だったら夏輝が苦労することもない。
……でも、トツカを見ていると強くても扱いづらい場合もあるという事をひしひしと感じてしまった。
トツカの本気ってどれくらい強いんだろう。強いのと同時に瑞雪は何分で干からびちまうんだろうと不謹慎なことを考える。
「嗅ぎ当て 追いつめろ 猟犬の鼻(グエス ペルセクイトル カニスナスム)」
魔法で嗅覚を強化。マナ反応をしっかりと補足しつつ、夏輝の匂いを嗅ぎ当てそれ以外を避けていく。
夏輝がいないということは俺もイオを使えないという事。普段よりも余計に弱いわけで。
そりゃネズミに負けるつもりはないが、足止めされても困る。
強化された嗅覚はもともとイヌ科の優秀な鼻を持っていることも相まってここ最近ずっと一緒に居た夏輝の匂いをちゃんと嗅ぎ分けることが出来た。
(それにしても嫌な感じだな。夏輝以外にもいくつかのマナ反応がある。……なんかちょっとうごうごしてるやつもあるな。あれはトツカと買い物行ったときに感じた奴に似てる……ってことはネズミなのか?)
夏輝から離れた場所、俺の方に近い場所に一つ。残りは夏輝を囲むようにマナ反応がある。
夏輝自身は逃げるように動いていた。状況はまずいのかもしれない。俺はとにかく夏輝のところに駆けつけるべくとにかく走る。
敷地内には生徒や教師と思しき地球人たちがバタバタと倒れていた。胸が上下していたしマナ反応はなかったので呪いをかけられているということはなさそうで少し安堵する。
チクチクと胸が痛む。早く、早く、早く。
不安は拭えず、鉛のように重苦しい時間に感じた。うごうごと蠢くマナ反応のいくつかがこちらへと向かってくる。どうやら索敵範囲に俺は入ってしまったようだった。
「最悪……!無駄に動物の五感を持ってるのか、マナ反応を感知したのかどっちなんだっ!?」
今日は日差しが強めで麗らかな昼下がり。太陽の位置が真上から少しずつ西に向かって傾いていく。
本来なら完璧な昼寝日和だっただろうに、今はホラー映画か何かの一場面みたいに誰もいない。ただ、夏輝の匂いと耳に届く敷地内の戦闘音が俺に現実味を持たせていた。
(戦闘、二か所で起こってる?)
夏輝の方と、俺の近くの二か所で戦闘が起こっているようだった。それ以外の場所では全くと言っていいほど音がしていないように思える。
もっとも、俺は日本の偉人みたく多方面からの音をマルチに処理なんてできないのでふんわりと別々の場所から聞こえるくらいしかわからない。
学校は洋風の建物であり、この辺りでは見慣れない建築物ばかりだ。それが余計に非現実的な雰囲気を醸し出している。
可能な限りマナ反応は迂回して回りたかったが、どうしても難しい。初めて来た場所の為、地の利がそもそもない。
「ぐるるるるっ」
大きなマナ反応よりかはネズミを相手にした方がましだと判断。俺は蠢くマナ反応の存在すルートを突っ切って夏輝の元へと走ることにした。
警戒しつつ、慎重に……なーんてことは出来るわけもない。とにかく俺は急いでいるんだ!
「きやがったか……!」
建物の影、死角となる場所からウサギの着ぐるみがやってくる。白とピンク。
今までは白色以外はおかしなウサギはいなかったが、今回は違う。どちらからも蠢くマナ反応が感知できた。
二色のふわふわの着ぐるみ。動きはコミカルで、前に見た朝やっている子供向けの海外アニメのキャラクターみたいだった。
ウサギは大げさなわざとらしい動きをしながらこちらへと近づいてくる。まるでサーカスのピエロみたいだ。気味が悪い。
腕にはバスケットがさげられている。あの中にチョコエッグが入っているのだろう。
「ぐるるるるるっ……!」
どうせ中身はネズミなのだ。言葉は不要。それ以上近づけばただでは済まさないと俺は牙を剥き出しにし毛を逆立て唸り声をあげた。
ウサギは全くかまう様子がない。バスケットの中へと手を突っ込み、卵を取り出す。
時折首がぐにゃりと変な方向へと曲がるのが酷く悍ましく思えた。
イオはない。マナのみだ。距離を取りつつ普段よりも随分と勢いのない炎の球を投げつける。
ウサギたちは踊るようにおどけたステップを踏みながら左右に飛びのく。足首がぐにゃりと曲がり、明らかに人体としてはおかしな動き。
「うぉ!?」
ウサギたちの動きは案外機敏で、バスケットの中の卵をこちらへと投げつけてくる。地面に当たった卵は爆発し、カラフルな煙を垂れ流す。
咄嗟に口と鼻を手で押さえながら煙の範囲から逃れる。どう考えても吸っちゃいけないやつだからな!
(一人だと長時間の詠唱が必要な魔法は使えない、かといって肉弾戦を挑んで何とかなるもんか!?)
そもそも俺の目的はこいつと戦う事ではない。夏輝と合流することだ。
ならこんなやつの相手をしている暇はない。幸いにも身体能力自体は高いんだから、さっさと撒くに限る。
(脚力強化、腕力強化)
方針がブレてはならない。身体強化魔法をかけつつ俺はウサギたちの合間を縫うように強行突破を試みる。
ウサギたちは俺に向かって手を伸ばし、捕まえようとする。その腕もぐにゃぐにゃでまるでグミのよう。しかし、その程度で俺を捕まえようなんて百年早い。
腕を思いっきり踏みつけ、足の裏に気色悪い感触を感じる。それでも幾分か着ぐるみのおかげでマシだ。うぞうぞと蠢く大量のネズミを直接踏みつけたら今以上の不快感は間違いない。
そのままウサギたちを飛び越えて走る。追い縋るウサギたち。夏輝と合流させまいと追い立ててくる。
まるでちゃんと知能があるみたいだ。俵が言っていたブレインとなる存在は本当にいるのかもしれない。
今のネズミたちは群れというよりも群体なのだ。
ウサギたちのコンビネーションは絶妙で、夏輝の場所はわかっているのに徐々に徐々に遠くへと追いやられる。夏輝も夏輝で俺から遠ざかっていく。
「くっそ……!こいつら命の危機は感じねえけどしつこい!」
そんなことを考えつつ走っていると上から俺に向かって何かが急降下してくる。
間一髪気づくことが出来、後ろへと飛びのく。
「がぅるるるるるッ!」
目の前の地面が大きく抉れ、瓦礫が飛び散る。
「っ……!」
大きな瓦礫は避けたものの、細かな瓦礫が俺の目の下や腕、首を掠める。ぴりぴりとした痛みが発生し、少しだけ顔をしかめた。
「黒狐……」
「ぐるるるるう……!」
俺の目の前に立ちふさがったのは鳥の羽を生やした例の黒い狐の獣人だった。
怒りや憎しみに満ちた瞳で俺を見る。何もしていないし、出会ったこともないはずだ。なのに何故?
(どちらにせよもしかして超ピンチ?)
前門の黒狐、後門のウサギ。俺は知らず知らずのうちに追いつめられていたのだ。
「ただでさえイオが使えないってのに……!っていうかお前と会ったことあったっけ?そんなすごい顔してるのは俺が敵だから?それとも俺が自由だから?」
黒狐の首には無骨な首輪が慎められている。着ている手術着みたいな服はぼろぼろだし、自由にのびのび現状生きることが出来ている俺のことを恨んでもおかしくはない。
というよりそれしか思い浮かばない。
「お前に……」
「ん?」
俺が困惑しつつも問うと黒狐は牙を剥き出しにして睨んでくる。しかし、言葉をなさない唸り声ではない。
「お前に全部盗られるから……!何で!お前さえいなければ!」
全くいわれのないことを告げられ、理解に苦しむ。
「は?俺はお前に何もしてないだろうが!ついこの間初対面だし、エデンにいた時に会っているかってそんなわけはねえ。俺は獣人の村にいなかったからな!人違いじゃねえのか?」
しかし、俺の言葉に黒狐は逆に激昂したようだった。尾が蠍の尾、腕がゴリラの腕へと変化する。やはり魔法を詠唱した気配はない。
「お前のせいで俺は認めてもらえない!お前のせい!本当は殺したい!」
「っぐぅ!?」
翼が力強く羽ばたき、瓦礫を吹き飛ばす。すさまじい風圧に俺は吹き飛ばされまいと踏ん張る。
一切身に覚えのないことを責め立てられ、いい加減俺だって腹が立ってきた。
とにかく一つはっきりしたのはこいつは俺に対して殺意を持ってるってこと。そして。
「ああもうウサギ忘れてた!」
後ろから卵が投げつけられ、煙が周囲に充満する。煙は甘ったるいチョコレートの匂いがする。
不意打ちを食らい俺は思いっきり煙を肺いっぱいに吸い込んでしまった。
「っ……!?」
息が出来ない。卵爆弾はどんどんと投げ込まれ、周囲の煙は濃くなっていく。
意識が遠のく。こんなところで意識を失ったら殺される。そうは思っても身体が動かない。
黒狐が嗤う声がする。大きなうねりを上げる黒渦に結局逆らえず、俺は意識を失った。
「わかってるっつの。それなら手伝ってくれりゃいいのに」
今は猫の手もどころではなく魔族の手も借りたい状況……かもしれない。
車に乗ること十分ほど。俺はアレウとロセに夏輝の通う高校のすぐ傍まで連れてきてもらっていた。学校の敷地内からは確かにマナ反応を複数感じる。
そして何より周囲には夏輝が張ったと思しき結界が存在した。もちろん現在進行形でだ。
「俺が出たら一瞬で終わっちまうからなあ。お前らのいいとこなーんもなくなっちまう」
不敵に笑うアレウ。車から降り、外の空気を目一杯吸う。既に結界内だから尻尾と耳は出しても大丈夫なはず。
うんと伸びをして俺はスマホを着ているパーカーのポケットに突っ込む。
「けっ、上位種がよ。ま、もともと手伝ってもらおうなんざ思ってねーよ!」
半分くらい妬みだとか嫉妬が入っているのは認めよう。もしも俺がアレウみたいな強い種族だったら夏輝が苦労することもない。
……でも、トツカを見ていると強くても扱いづらい場合もあるという事をひしひしと感じてしまった。
トツカの本気ってどれくらい強いんだろう。強いのと同時に瑞雪は何分で干からびちまうんだろうと不謹慎なことを考える。
「嗅ぎ当て 追いつめろ 猟犬の鼻(グエス ペルセクイトル カニスナスム)」
魔法で嗅覚を強化。マナ反応をしっかりと補足しつつ、夏輝の匂いを嗅ぎ当てそれ以外を避けていく。
夏輝がいないということは俺もイオを使えないという事。普段よりも余計に弱いわけで。
そりゃネズミに負けるつもりはないが、足止めされても困る。
強化された嗅覚はもともとイヌ科の優秀な鼻を持っていることも相まってここ最近ずっと一緒に居た夏輝の匂いをちゃんと嗅ぎ分けることが出来た。
(それにしても嫌な感じだな。夏輝以外にもいくつかのマナ反応がある。……なんかちょっとうごうごしてるやつもあるな。あれはトツカと買い物行ったときに感じた奴に似てる……ってことはネズミなのか?)
夏輝から離れた場所、俺の方に近い場所に一つ。残りは夏輝を囲むようにマナ反応がある。
夏輝自身は逃げるように動いていた。状況はまずいのかもしれない。俺はとにかく夏輝のところに駆けつけるべくとにかく走る。
敷地内には生徒や教師と思しき地球人たちがバタバタと倒れていた。胸が上下していたしマナ反応はなかったので呪いをかけられているということはなさそうで少し安堵する。
チクチクと胸が痛む。早く、早く、早く。
不安は拭えず、鉛のように重苦しい時間に感じた。うごうごと蠢くマナ反応のいくつかがこちらへと向かってくる。どうやら索敵範囲に俺は入ってしまったようだった。
「最悪……!無駄に動物の五感を持ってるのか、マナ反応を感知したのかどっちなんだっ!?」
今日は日差しが強めで麗らかな昼下がり。太陽の位置が真上から少しずつ西に向かって傾いていく。
本来なら完璧な昼寝日和だっただろうに、今はホラー映画か何かの一場面みたいに誰もいない。ただ、夏輝の匂いと耳に届く敷地内の戦闘音が俺に現実味を持たせていた。
(戦闘、二か所で起こってる?)
夏輝の方と、俺の近くの二か所で戦闘が起こっているようだった。それ以外の場所では全くと言っていいほど音がしていないように思える。
もっとも、俺は日本の偉人みたく多方面からの音をマルチに処理なんてできないのでふんわりと別々の場所から聞こえるくらいしかわからない。
学校は洋風の建物であり、この辺りでは見慣れない建築物ばかりだ。それが余計に非現実的な雰囲気を醸し出している。
可能な限りマナ反応は迂回して回りたかったが、どうしても難しい。初めて来た場所の為、地の利がそもそもない。
「ぐるるるるっ」
大きなマナ反応よりかはネズミを相手にした方がましだと判断。俺は蠢くマナ反応の存在すルートを突っ切って夏輝の元へと走ることにした。
警戒しつつ、慎重に……なーんてことは出来るわけもない。とにかく俺は急いでいるんだ!
「きやがったか……!」
建物の影、死角となる場所からウサギの着ぐるみがやってくる。白とピンク。
今までは白色以外はおかしなウサギはいなかったが、今回は違う。どちらからも蠢くマナ反応が感知できた。
二色のふわふわの着ぐるみ。動きはコミカルで、前に見た朝やっている子供向けの海外アニメのキャラクターみたいだった。
ウサギは大げさなわざとらしい動きをしながらこちらへと近づいてくる。まるでサーカスのピエロみたいだ。気味が悪い。
腕にはバスケットがさげられている。あの中にチョコエッグが入っているのだろう。
「ぐるるるるるっ……!」
どうせ中身はネズミなのだ。言葉は不要。それ以上近づけばただでは済まさないと俺は牙を剥き出しにし毛を逆立て唸り声をあげた。
ウサギは全くかまう様子がない。バスケットの中へと手を突っ込み、卵を取り出す。
時折首がぐにゃりと変な方向へと曲がるのが酷く悍ましく思えた。
イオはない。マナのみだ。距離を取りつつ普段よりも随分と勢いのない炎の球を投げつける。
ウサギたちは踊るようにおどけたステップを踏みながら左右に飛びのく。足首がぐにゃりと曲がり、明らかに人体としてはおかしな動き。
「うぉ!?」
ウサギたちの動きは案外機敏で、バスケットの中の卵をこちらへと投げつけてくる。地面に当たった卵は爆発し、カラフルな煙を垂れ流す。
咄嗟に口と鼻を手で押さえながら煙の範囲から逃れる。どう考えても吸っちゃいけないやつだからな!
(一人だと長時間の詠唱が必要な魔法は使えない、かといって肉弾戦を挑んで何とかなるもんか!?)
そもそも俺の目的はこいつと戦う事ではない。夏輝と合流することだ。
ならこんなやつの相手をしている暇はない。幸いにも身体能力自体は高いんだから、さっさと撒くに限る。
(脚力強化、腕力強化)
方針がブレてはならない。身体強化魔法をかけつつ俺はウサギたちの合間を縫うように強行突破を試みる。
ウサギたちは俺に向かって手を伸ばし、捕まえようとする。その腕もぐにゃぐにゃでまるでグミのよう。しかし、その程度で俺を捕まえようなんて百年早い。
腕を思いっきり踏みつけ、足の裏に気色悪い感触を感じる。それでも幾分か着ぐるみのおかげでマシだ。うぞうぞと蠢く大量のネズミを直接踏みつけたら今以上の不快感は間違いない。
そのままウサギたちを飛び越えて走る。追い縋るウサギたち。夏輝と合流させまいと追い立ててくる。
まるでちゃんと知能があるみたいだ。俵が言っていたブレインとなる存在は本当にいるのかもしれない。
今のネズミたちは群れというよりも群体なのだ。
ウサギたちのコンビネーションは絶妙で、夏輝の場所はわかっているのに徐々に徐々に遠くへと追いやられる。夏輝も夏輝で俺から遠ざかっていく。
「くっそ……!こいつら命の危機は感じねえけどしつこい!」
そんなことを考えつつ走っていると上から俺に向かって何かが急降下してくる。
間一髪気づくことが出来、後ろへと飛びのく。
「がぅるるるるるッ!」
目の前の地面が大きく抉れ、瓦礫が飛び散る。
「っ……!」
大きな瓦礫は避けたものの、細かな瓦礫が俺の目の下や腕、首を掠める。ぴりぴりとした痛みが発生し、少しだけ顔をしかめた。
「黒狐……」
「ぐるるるるう……!」
俺の目の前に立ちふさがったのは鳥の羽を生やした例の黒い狐の獣人だった。
怒りや憎しみに満ちた瞳で俺を見る。何もしていないし、出会ったこともないはずだ。なのに何故?
(どちらにせよもしかして超ピンチ?)
前門の黒狐、後門のウサギ。俺は知らず知らずのうちに追いつめられていたのだ。
「ただでさえイオが使えないってのに……!っていうかお前と会ったことあったっけ?そんなすごい顔してるのは俺が敵だから?それとも俺が自由だから?」
黒狐の首には無骨な首輪が慎められている。着ている手術着みたいな服はぼろぼろだし、自由にのびのび現状生きることが出来ている俺のことを恨んでもおかしくはない。
というよりそれしか思い浮かばない。
「お前に……」
「ん?」
俺が困惑しつつも問うと黒狐は牙を剥き出しにして睨んでくる。しかし、言葉をなさない唸り声ではない。
「お前に全部盗られるから……!何で!お前さえいなければ!」
全くいわれのないことを告げられ、理解に苦しむ。
「は?俺はお前に何もしてないだろうが!ついこの間初対面だし、エデンにいた時に会っているかってそんなわけはねえ。俺は獣人の村にいなかったからな!人違いじゃねえのか?」
しかし、俺の言葉に黒狐は逆に激昂したようだった。尾が蠍の尾、腕がゴリラの腕へと変化する。やはり魔法を詠唱した気配はない。
「お前のせいで俺は認めてもらえない!お前のせい!本当は殺したい!」
「っぐぅ!?」
翼が力強く羽ばたき、瓦礫を吹き飛ばす。すさまじい風圧に俺は吹き飛ばされまいと踏ん張る。
一切身に覚えのないことを責め立てられ、いい加減俺だって腹が立ってきた。
とにかく一つはっきりしたのはこいつは俺に対して殺意を持ってるってこと。そして。
「ああもうウサギ忘れてた!」
後ろから卵が投げつけられ、煙が周囲に充満する。煙は甘ったるいチョコレートの匂いがする。
不意打ちを食らい俺は思いっきり煙を肺いっぱいに吸い込んでしまった。
「っ……!?」
息が出来ない。卵爆弾はどんどんと投げ込まれ、周囲の煙は濃くなっていく。
意識が遠のく。こんなところで意識を失ったら殺される。そうは思っても身体が動かない。
黒狐が嗤う声がする。大きなうねりを上げる黒渦に結局逆らえず、俺は意識を失った。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる