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EP1 狐と新緑1 果てに出会う
拾われて
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「ーーーーが!ーーおさ、ーーーーて!」
煩い……。脳みそが直接手で掴まれて揺さぶられているみたいにガンガンする。
一体誰だ、俺の近くで馬鹿みたいに騒いでいるやつは。疲れやら怪我やらで消えていた意識が少しずつ浮上していく。ぼうっとしていて、何を話しているのか聞き取れない。
そもそも、俺は今どこにいる?何故寝ている?そうだ、まず己が誰なのかを確認しよう。俺はプラテアダ。よし、ちゃんと覚えている。
自己を自己と認識できること、狂っていないことに安堵する。周りの実験体たちの多くは皆狂っちまったからだ。
「っ……!」
「あ、起きた!」
重すぎる瞼を無理やりこじ開け、飛び起きる。
その瞬間、ゴンッなんて鈍い音が額からする。次いで、俺の額が燃えるように熱くなって、それで、いってえ……!?
「ギャッ……!?」
額に走る激痛、そして衝撃。まるで岩に頭を思いっきりぶつけたような。
一体何だっていうんだ、涙目になりつつ何度か瞬きをしているうちに、ぼやけていた視界のピントが合い始める。
明るくなる視界、いっそ眩しさを覚えつつ何度も何度も目を瞬かせる。ぼろぼろと涙が頬を伝う感覚が気持ち悪い。
目の前には、黒髪の地球人らしき子供がいたわけで。それにまた驚き、後ずさる。
地球人に見つかった。やっと、やっと逃げ出せたのに。慌てて口を噤み、睨みつける。今すぐに動けるか?自分の身体の調子を確認する。
途端、ずきずきと全身が酷く痛み出した。額の痛みよりもずっと酷い。そうだ、思い出した。俺は息も絶え絶えで、安全な場所も見つけられずに気絶したのだ。
「ご、ごめんよ!大丈夫!?怪我はない?」
「ぐるるるる……!」
「あ、ああ……やっぱり怒って……!」
思わず喉の奥からぐるぐると低い唸り声が漏れ出す。周囲に目を向ければ、椅子と机がごちゃごちゃとたくさん置かれ、倉庫みたいだった。
逃げ道となりそうなのはドアが一つ、そして窓。部屋の中に一つだけ置かれたソファの上に、どうやら俺は寝かされていたらしい。 男はそんな俺の顔を覗き込んでおり、飛び起きた瞬間に俺が思い切りそいつの額に頭突きをかましてしまったってわけ。
……最も、こいつはちぃともダメージを受けていないようだったが。この黒髪以外人はいない。
どうやら研究員じゃあないらしい。毒気のない顔だし、若く見える。何より怪我はない?だなんて聞いてきたのはこいつが初めてだった。
(見られたのがこいつだけなら、逃げ道はあるし、殺してとっとと逃げちまえば……)
そう、目撃者を消してしまえば。簡単だ。ただの地球人は俺よりずっと弱い。俺のような獣人でも、爪や牙を急所に突き立てれば一瞬で死ぬ。俺はそれを知っている。
体勢を立て直し、ソファから降りる。ふらふらして、視界が眩む。太腿がぶるぶると震え、立っていられずにその場に蹲った。
何度も立ち上がろうとするのだが、脚に力が入らずうまくいかない。そんな俺を見て黒髪の男は慌てたようにしゃがみこんだ。
「やっぱり怪我とかしてる!?ほら、無理に立ち上がろうとしないで……ソファで御免だけどちゃんと寝てないと」
その顔は眉が八の字になっており、こちらを案じていることがありありと浮かんでいて見て取れた。毒気のない間抜け面。
「かひゅ、っけほ……さわ」
だとしても信用する気にならず、俺は牙を剥きだしにしつつ何とか距離を取ろうとする。
「ほら、寝かせるからね!」
しかし、今の俺はあまりにも無力だった。子供は問答無用とばかりに俺のことを抱き上げると、再びソファの上に寝かしつけた。更に上からさらさらの肌触りのブランケットをかけられる。
こちらを見てくる子供の瞳はどこまでも純粋で、そして心配そうだった。こいつはどうやら、本当に俺のことを心配しているようだった。
……エデン人のことを知らないのか?ひとまず動くこともままならないため、様子を見ることにするほかない。
もっと殺すならチャンスを、タイミングを見極めなければならない。この子供に罪はないのだろう。
しかし、俺のことをエデンのことを知っている人間に知られれば今度こそ殺されるか、二度と日の目を見ることは出来なくなるだろう。
「日本人じゃないよね……!日本語喋れる?わかる?家族はいる?」
天井についているライトが陰る。子供が俺のことを見下ろしているからだ。弱っていようと、子供の柔らかな喉笛に牙を突き立てれば簡単に引き裂ける。
「熱とかあるかな……ちょっとごめんね、おでこ触るからね」
そんなことを考えているうちに、子供の顔が近づいてくる。身体がびくりと震え、強張り、反射的に手を子供の後頭部に伸ばす。
「うわ、ちょ……!?なに!?」
そのままぐわりと掴み、身体のばねを使い捻り、子供を床へと引き倒す。子供は咄嗟のことに反応もできず、背中を床にしこたま打ち付け顔を歪めた。
怖い。人に触れられるのが恐ろしい。こいつは敵だ、地球人だ。そう俺の本能が警鐘を鳴らす。
喉の奥から漏れる唸り声が止まらない。全身の産毛が嫌悪感と恐怖で逆立っていた。今までの地球人から受けた行いによる本能的な嫌悪だった。
このまま首に手をかけ、喉笛に牙か爪を突き立てれば簡単に子供は死ぬ。そして、俺は逃げられる。
でも、子供を手にかけていいのか?そんなことを考えているうちに、がちゃりと背後で音がする。
「ご、ごめんな!驚かせちゃったよな……!あ、八潮さん」
「すごい音がしたから来てみましたが、一体何が……?」
慌てて振り向くと初老の男がこちらを見て険しい顔を一瞬し、すぐに目を丸くした。
「気が動転してたみたいで、俺が驚かせちゃったのが悪いんだ。日本語がわかるかもわからなくて……」
あわや殺される寸前だったというのに、平和ボケしているのか目の前の子供は心配そうに俺を見ていた。全く気付いていない。
ラッキーだが、それでいいのか……?毒気を抜かれ、俺は小さく口を開き、言葉を漏らした。
「……わかる」
俺が喋ったことに安堵したのか感激したのか。子供はぱぁっと顔を輝かせ、年相応の笑顔を見せた。
「本当!?よかった、安心したよ!俺英語とか喋れないしさ。あ、俺は大神夏輝!こっちの人は俺の保護者で羽須八潮さん。君の名前は?」
「一気に言うなよ……」
バッと勢いよく起き上がった子供ー夏輝は俺の手をとり矢継ぎ早にまくし立てていく。
床の上に押し倒され、背中まで強打しているにもかかわらずよくもまあ口が回ると一瞬意識が遠くなる。軽々と再び抱き上げられ、ソファの上に座らされる。年季が入っているのか少しばかりくたびれていたが、ふっかふかだ……。
今更ながら部屋は倉庫っぽくはあるが綺麗に整えられ、生活感がある。今迄閉じ込められていた白い箱とはどこまでも正反対だった。
「っていうかすごく軽いよ!ご飯食べてる?」
夏輝がそう言った瞬間、俺の腹の音がぐぅと部屋に鳴り響く。
あまりにも大きく響いたものだから、夏輝と八潮と呼ばれた男は何度かぱちぱちと瞬きを繰り返してから互いに顔を見合わせる。八潮の方は特にきょとんとした表情だった。
「今ご飯持ってくるから待ってて!自慢じゃないけど俺の作ったご飯はすっごく美味しいから期待しててね」
「あ……」
すぐさま笑顔になった夏輝はどこか得意げにそういって脱兎のごとく部屋から飛び出していく。残されたのは俺と、八潮だけ。
八潮はやれやれといった様子で苦笑いを漏らしていた。そのまま俺へと視線を向け、口を開く。ふかふかのソファがなんとも居心地が悪かった。
「すみませんね、夏輝は悪い子じゃないんです。それにお腹がすいているのは本当なのでしょう?朝、君を担いで夏輝が慌てて駆け込んできたんですよ、うちに。あ、ここはカフェ”朱鷺”です。怪しい場所なんかではないので……。ぼろぼろですし、きっと何か事情があるのでしょう。夏輝も私も詮索はしませんから、とにかくゆっくりしてくださって構いませんからね」
意外な言葉だった。見張り、というよりかは本当に俺のことが心配だから見守っているようだった。
しかしまあ、特に詮索もせず、ここにいていいという。自分自身、動けそうか確認したものの身体が怠くて力が入らない。
……相手に危害を加える気が今のところはないというのなら、せめて体力が回復するまではここにいたほうがいい、と判断する。
「わか、った……。暫く、ここにいる」
小さく消え入るくらいの掠れた声で呟いても、八潮の耳にはきっちりと届いたようだった。
「ありがとう。夏輝もきっと喜びます。君が起きるまでずっとつきっきりで一緒にいましたから……。服もぼろぼろですし、多分身体のサイズにはあいませんが適当に服を用意しますね」
夏輝と同じくらい、この目の前の男は面倒見がよくてお人よしなのだろうか?どうにもやっぱり居心地が悪く、俺は眉根を潜めた。
「そ、そこまでしなくても……」
「いいですから。気にしないでください、こういう時は助け合いですから」
助け合い、ね。そんな言葉を聞いたのは何年ぶりだろうか。
ひとまず手放しに安心できるわけではないが、休める場所を幸運にも手に入れられた俺は小さく息をつき、ソファに横になる。
頬に当たるソファカバーの感触がとても柔らかくて、さらさらしていて、部屋だって冷たくなくて温かい。
自然と瞼が落ちてくる。自分で感じていた以上に、俺は疲れていたらしい。
煩い……。脳みそが直接手で掴まれて揺さぶられているみたいにガンガンする。
一体誰だ、俺の近くで馬鹿みたいに騒いでいるやつは。疲れやら怪我やらで消えていた意識が少しずつ浮上していく。ぼうっとしていて、何を話しているのか聞き取れない。
そもそも、俺は今どこにいる?何故寝ている?そうだ、まず己が誰なのかを確認しよう。俺はプラテアダ。よし、ちゃんと覚えている。
自己を自己と認識できること、狂っていないことに安堵する。周りの実験体たちの多くは皆狂っちまったからだ。
「っ……!」
「あ、起きた!」
重すぎる瞼を無理やりこじ開け、飛び起きる。
その瞬間、ゴンッなんて鈍い音が額からする。次いで、俺の額が燃えるように熱くなって、それで、いってえ……!?
「ギャッ……!?」
額に走る激痛、そして衝撃。まるで岩に頭を思いっきりぶつけたような。
一体何だっていうんだ、涙目になりつつ何度か瞬きをしているうちに、ぼやけていた視界のピントが合い始める。
明るくなる視界、いっそ眩しさを覚えつつ何度も何度も目を瞬かせる。ぼろぼろと涙が頬を伝う感覚が気持ち悪い。
目の前には、黒髪の地球人らしき子供がいたわけで。それにまた驚き、後ずさる。
地球人に見つかった。やっと、やっと逃げ出せたのに。慌てて口を噤み、睨みつける。今すぐに動けるか?自分の身体の調子を確認する。
途端、ずきずきと全身が酷く痛み出した。額の痛みよりもずっと酷い。そうだ、思い出した。俺は息も絶え絶えで、安全な場所も見つけられずに気絶したのだ。
「ご、ごめんよ!大丈夫!?怪我はない?」
「ぐるるるる……!」
「あ、ああ……やっぱり怒って……!」
思わず喉の奥からぐるぐると低い唸り声が漏れ出す。周囲に目を向ければ、椅子と机がごちゃごちゃとたくさん置かれ、倉庫みたいだった。
逃げ道となりそうなのはドアが一つ、そして窓。部屋の中に一つだけ置かれたソファの上に、どうやら俺は寝かされていたらしい。 男はそんな俺の顔を覗き込んでおり、飛び起きた瞬間に俺が思い切りそいつの額に頭突きをかましてしまったってわけ。
……最も、こいつはちぃともダメージを受けていないようだったが。この黒髪以外人はいない。
どうやら研究員じゃあないらしい。毒気のない顔だし、若く見える。何より怪我はない?だなんて聞いてきたのはこいつが初めてだった。
(見られたのがこいつだけなら、逃げ道はあるし、殺してとっとと逃げちまえば……)
そう、目撃者を消してしまえば。簡単だ。ただの地球人は俺よりずっと弱い。俺のような獣人でも、爪や牙を急所に突き立てれば一瞬で死ぬ。俺はそれを知っている。
体勢を立て直し、ソファから降りる。ふらふらして、視界が眩む。太腿がぶるぶると震え、立っていられずにその場に蹲った。
何度も立ち上がろうとするのだが、脚に力が入らずうまくいかない。そんな俺を見て黒髪の男は慌てたようにしゃがみこんだ。
「やっぱり怪我とかしてる!?ほら、無理に立ち上がろうとしないで……ソファで御免だけどちゃんと寝てないと」
その顔は眉が八の字になっており、こちらを案じていることがありありと浮かんでいて見て取れた。毒気のない間抜け面。
「かひゅ、っけほ……さわ」
だとしても信用する気にならず、俺は牙を剥きだしにしつつ何とか距離を取ろうとする。
「ほら、寝かせるからね!」
しかし、今の俺はあまりにも無力だった。子供は問答無用とばかりに俺のことを抱き上げると、再びソファの上に寝かしつけた。更に上からさらさらの肌触りのブランケットをかけられる。
こちらを見てくる子供の瞳はどこまでも純粋で、そして心配そうだった。こいつはどうやら、本当に俺のことを心配しているようだった。
……エデン人のことを知らないのか?ひとまず動くこともままならないため、様子を見ることにするほかない。
もっと殺すならチャンスを、タイミングを見極めなければならない。この子供に罪はないのだろう。
しかし、俺のことをエデンのことを知っている人間に知られれば今度こそ殺されるか、二度と日の目を見ることは出来なくなるだろう。
「日本人じゃないよね……!日本語喋れる?わかる?家族はいる?」
天井についているライトが陰る。子供が俺のことを見下ろしているからだ。弱っていようと、子供の柔らかな喉笛に牙を突き立てれば簡単に引き裂ける。
「熱とかあるかな……ちょっとごめんね、おでこ触るからね」
そんなことを考えているうちに、子供の顔が近づいてくる。身体がびくりと震え、強張り、反射的に手を子供の後頭部に伸ばす。
「うわ、ちょ……!?なに!?」
そのままぐわりと掴み、身体のばねを使い捻り、子供を床へと引き倒す。子供は咄嗟のことに反応もできず、背中を床にしこたま打ち付け顔を歪めた。
怖い。人に触れられるのが恐ろしい。こいつは敵だ、地球人だ。そう俺の本能が警鐘を鳴らす。
喉の奥から漏れる唸り声が止まらない。全身の産毛が嫌悪感と恐怖で逆立っていた。今までの地球人から受けた行いによる本能的な嫌悪だった。
このまま首に手をかけ、喉笛に牙か爪を突き立てれば簡単に子供は死ぬ。そして、俺は逃げられる。
でも、子供を手にかけていいのか?そんなことを考えているうちに、がちゃりと背後で音がする。
「ご、ごめんな!驚かせちゃったよな……!あ、八潮さん」
「すごい音がしたから来てみましたが、一体何が……?」
慌てて振り向くと初老の男がこちらを見て険しい顔を一瞬し、すぐに目を丸くした。
「気が動転してたみたいで、俺が驚かせちゃったのが悪いんだ。日本語がわかるかもわからなくて……」
あわや殺される寸前だったというのに、平和ボケしているのか目の前の子供は心配そうに俺を見ていた。全く気付いていない。
ラッキーだが、それでいいのか……?毒気を抜かれ、俺は小さく口を開き、言葉を漏らした。
「……わかる」
俺が喋ったことに安堵したのか感激したのか。子供はぱぁっと顔を輝かせ、年相応の笑顔を見せた。
「本当!?よかった、安心したよ!俺英語とか喋れないしさ。あ、俺は大神夏輝!こっちの人は俺の保護者で羽須八潮さん。君の名前は?」
「一気に言うなよ……」
バッと勢いよく起き上がった子供ー夏輝は俺の手をとり矢継ぎ早にまくし立てていく。
床の上に押し倒され、背中まで強打しているにもかかわらずよくもまあ口が回ると一瞬意識が遠くなる。軽々と再び抱き上げられ、ソファの上に座らされる。年季が入っているのか少しばかりくたびれていたが、ふっかふかだ……。
今更ながら部屋は倉庫っぽくはあるが綺麗に整えられ、生活感がある。今迄閉じ込められていた白い箱とはどこまでも正反対だった。
「っていうかすごく軽いよ!ご飯食べてる?」
夏輝がそう言った瞬間、俺の腹の音がぐぅと部屋に鳴り響く。
あまりにも大きく響いたものだから、夏輝と八潮と呼ばれた男は何度かぱちぱちと瞬きを繰り返してから互いに顔を見合わせる。八潮の方は特にきょとんとした表情だった。
「今ご飯持ってくるから待ってて!自慢じゃないけど俺の作ったご飯はすっごく美味しいから期待しててね」
「あ……」
すぐさま笑顔になった夏輝はどこか得意げにそういって脱兎のごとく部屋から飛び出していく。残されたのは俺と、八潮だけ。
八潮はやれやれといった様子で苦笑いを漏らしていた。そのまま俺へと視線を向け、口を開く。ふかふかのソファがなんとも居心地が悪かった。
「すみませんね、夏輝は悪い子じゃないんです。それにお腹がすいているのは本当なのでしょう?朝、君を担いで夏輝が慌てて駆け込んできたんですよ、うちに。あ、ここはカフェ”朱鷺”です。怪しい場所なんかではないので……。ぼろぼろですし、きっと何か事情があるのでしょう。夏輝も私も詮索はしませんから、とにかくゆっくりしてくださって構いませんからね」
意外な言葉だった。見張り、というよりかは本当に俺のことが心配だから見守っているようだった。
しかしまあ、特に詮索もせず、ここにいていいという。自分自身、動けそうか確認したものの身体が怠くて力が入らない。
……相手に危害を加える気が今のところはないというのなら、せめて体力が回復するまではここにいたほうがいい、と判断する。
「わか、った……。暫く、ここにいる」
小さく消え入るくらいの掠れた声で呟いても、八潮の耳にはきっちりと届いたようだった。
「ありがとう。夏輝もきっと喜びます。君が起きるまでずっとつきっきりで一緒にいましたから……。服もぼろぼろですし、多分身体のサイズにはあいませんが適当に服を用意しますね」
夏輝と同じくらい、この目の前の男は面倒見がよくてお人よしなのだろうか?どうにもやっぱり居心地が悪く、俺は眉根を潜めた。
「そ、そこまでしなくても……」
「いいですから。気にしないでください、こういう時は助け合いですから」
助け合い、ね。そんな言葉を聞いたのは何年ぶりだろうか。
ひとまず手放しに安心できるわけではないが、休める場所を幸運にも手に入れられた俺は小さく息をつき、ソファに横になる。
頬に当たるソファカバーの感触がとても柔らかくて、さらさらしていて、部屋だって冷たくなくて温かい。
自然と瞼が落ちてくる。自分で感じていた以上に、俺は疲れていたらしい。
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