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side エドガー
世界の崩壊
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「残念ですが、既に亡くなってしまった命を蘇らせる事は不可能です」
彼の元を訪ね、事情を説明した僕は、その言葉を聞いてガックリと肩を落とした。
当たり前だ。別に期待なんてしていなかった。
「ただ、彼女を生かす方法が一つだけあります」
「!? 本当か!!?」
「はい。ただ、この方法には少し問題があります」
「いいから続けてくれ」
男は少し難色を示しながら、詳細を話し始めた。
「今から貴方にある魔法をかけます。その瞬間、貴方は今の記憶を保持したまま、過去の貴方として目を覚まします。どれだけ時間を遡るかは分かりません。ですが、彼女の死がまだ確定していない時なのは確かです」
「過去に戻って、彼女を助ける……ということか? そんな事が出来るのか?」
「はい。ですが、この魔法は呪いの様なものです。もし彼女が死んでしまった場合、再び同じ時間まで巻き戻ります。つまり、彼女が死ぬ運命を覆さない限り、永遠に同じ時を繰り返す事になります。その覚悟が貴方におありですか? 彼女と運命を共にする覚悟が」
「ある」
迷いはなかった。彼女が生きられる可能性があるのなら、どんな事でもしてみせる。
「分かりました。では、貴方への御恩を、今ここでお返し致します。最後に一つだけ。人が死ぬという運命を覆すには、それに見合う代償と覚悟が必要です。不要な物は全て切り捨てて下さい」
「ああ。肝に銘じておくよ」
「ご健闘をお祈りします」
男が魔法を僕にかけた瞬間、僕の目の前の光景にヒビが入りだし、今いる世界が崩れ落ちていくと同時に僕の意識も途切れた。
*
目を覚ました僕は、すぐに戻った時間を確認した。
彼女が死ぬ一年前――つまり、イースト国で聖女が召喚される日。
僕はすぐに使者を呼び、アメリア嬢の動きを監視する様に指示を出した。
よりによって戻ってきたのが一年前とは……。
この時期は、国境付近で隣国との紛争が勃発し、国同士の戦争へと発展しかけていた。
更には大雨による洪水も発生し、農作物は大きな被害を受けて食糧難に見舞われた。
僕はそれらの問題に対応するため、各地へ出ずっぱりの日々だった。
だが、もしも本当にここが過去と同じだとしたら、前よりは上手く動ける筈だ。
僕は早速、先に起こる事態を予測して動き始めた。
王太子としての責務を果たしながら、イースト国での動きにも気を配った。
報告を聞く限り、アメリア嬢が聖女を憎む様子はなく、それどころか聖女を守るような行動を取っている事が分かった。
本当に彼女は処刑されるのか?
僕の行動が変わった事が影響しているのか、僕の周囲の人達の行動にはズレが生じ、前の人生と全く同じ展開にはならなかった。
もしかしたら今回、彼女は処刑されないのかもしれない。
そんな能天気な事を考えしまっていた。
「なんだと? アメリア嬢が、聖女を階段から突き落としただと?」
出先から戻り、報告を受けた僕は苛立ちを声に滲ませた。
階段で足を滑らせて落ちた聖女は、誰かに押されたと嘘の証言をしたというのだ。
「何が聖女だ! 悪女の間違いじゃないのか!?」
さらに数日後、聖女暗殺未遂事件が起き、アメリア嬢が疑われる事になった。
結局彼女は、前回と同様に婚約破棄後、投獄された。
自分の考えの甘さに腹が立った。
それからは、僕は魂が抜けた様な日々を送った。
イースト国へ乗り込み、彼女を救う事も考えた。
ウエスト国の王族のみが使える、瞬間転移魔法を使えば、数十メートル先までなら一瞬で移動出来る。
彼女が投獄されている地下牢から救出する事も可能だ。
だが、この力を他国で使う事は強く禁じられている。
あの男の言う事を信じるしかない。もう一度、過去に戻ってやり直すしか……。
彼女が処刑される日、僕は自室で静かにその時を待った。
処刑執行の予定時間が過ぎた頃、あの時と同じ様に世界にひび割れが起こり始め、この世界は崩壊した。
彼の元を訪ね、事情を説明した僕は、その言葉を聞いてガックリと肩を落とした。
当たり前だ。別に期待なんてしていなかった。
「ただ、彼女を生かす方法が一つだけあります」
「!? 本当か!!?」
「はい。ただ、この方法には少し問題があります」
「いいから続けてくれ」
男は少し難色を示しながら、詳細を話し始めた。
「今から貴方にある魔法をかけます。その瞬間、貴方は今の記憶を保持したまま、過去の貴方として目を覚まします。どれだけ時間を遡るかは分かりません。ですが、彼女の死がまだ確定していない時なのは確かです」
「過去に戻って、彼女を助ける……ということか? そんな事が出来るのか?」
「はい。ですが、この魔法は呪いの様なものです。もし彼女が死んでしまった場合、再び同じ時間まで巻き戻ります。つまり、彼女が死ぬ運命を覆さない限り、永遠に同じ時を繰り返す事になります。その覚悟が貴方におありですか? 彼女と運命を共にする覚悟が」
「ある」
迷いはなかった。彼女が生きられる可能性があるのなら、どんな事でもしてみせる。
「分かりました。では、貴方への御恩を、今ここでお返し致します。最後に一つだけ。人が死ぬという運命を覆すには、それに見合う代償と覚悟が必要です。不要な物は全て切り捨てて下さい」
「ああ。肝に銘じておくよ」
「ご健闘をお祈りします」
男が魔法を僕にかけた瞬間、僕の目の前の光景にヒビが入りだし、今いる世界が崩れ落ちていくと同時に僕の意識も途切れた。
*
目を覚ました僕は、すぐに戻った時間を確認した。
彼女が死ぬ一年前――つまり、イースト国で聖女が召喚される日。
僕はすぐに使者を呼び、アメリア嬢の動きを監視する様に指示を出した。
よりによって戻ってきたのが一年前とは……。
この時期は、国境付近で隣国との紛争が勃発し、国同士の戦争へと発展しかけていた。
更には大雨による洪水も発生し、農作物は大きな被害を受けて食糧難に見舞われた。
僕はそれらの問題に対応するため、各地へ出ずっぱりの日々だった。
だが、もしも本当にここが過去と同じだとしたら、前よりは上手く動ける筈だ。
僕は早速、先に起こる事態を予測して動き始めた。
王太子としての責務を果たしながら、イースト国での動きにも気を配った。
報告を聞く限り、アメリア嬢が聖女を憎む様子はなく、それどころか聖女を守るような行動を取っている事が分かった。
本当に彼女は処刑されるのか?
僕の行動が変わった事が影響しているのか、僕の周囲の人達の行動にはズレが生じ、前の人生と全く同じ展開にはならなかった。
もしかしたら今回、彼女は処刑されないのかもしれない。
そんな能天気な事を考えしまっていた。
「なんだと? アメリア嬢が、聖女を階段から突き落としただと?」
出先から戻り、報告を受けた僕は苛立ちを声に滲ませた。
階段で足を滑らせて落ちた聖女は、誰かに押されたと嘘の証言をしたというのだ。
「何が聖女だ! 悪女の間違いじゃないのか!?」
さらに数日後、聖女暗殺未遂事件が起き、アメリア嬢が疑われる事になった。
結局彼女は、前回と同様に婚約破棄後、投獄された。
自分の考えの甘さに腹が立った。
それからは、僕は魂が抜けた様な日々を送った。
イースト国へ乗り込み、彼女を救う事も考えた。
ウエスト国の王族のみが使える、瞬間転移魔法を使えば、数十メートル先までなら一瞬で移動出来る。
彼女が投獄されている地下牢から救出する事も可能だ。
だが、この力を他国で使う事は強く禁じられている。
あの男の言う事を信じるしかない。もう一度、過去に戻ってやり直すしか……。
彼女が処刑される日、僕は自室で静かにその時を待った。
処刑執行の予定時間が過ぎた頃、あの時と同じ様に世界にひび割れが起こり始め、この世界は崩壊した。
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