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20.心の声は聞こえなくても
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王宮内にある個室へと案内された私達は、部屋の中央部に置かれているソファーに腰かけた。
ヴィンセント様は王宮の使用人から渡された救急箱を目の前のテーブルに置き、中からピンセットを取り出すと私の右手を取った。
私の右手の甲に刺さっている木の棘を取り除こうというのだろう。
「レイナ、少し痛むと思うが我慢してほしい」
「あ……大丈夫です。自分で出来ますから」
ヴィンセント様が持っているピンセットを渡してもらおうと手を差し出したが、彼はそれを奪われまいと手を引っ込めた。
「……いや。俺がやる」
ムッと口を尖らせ意地を張る姿から、子供を演じていたヴィンセント様の面影を感じてムズムズとくすぐったい気持ちになった。
「……分かりました。お願いします」
笑ってしまいそうな口元をなんとか堪えて承諾すると、ヴィンセント様はピンセットで私の手に刺さる棘を取り除き始めた。
チクチクと痛みはするけれど、そんな事よりもヴィンセント様の真剣な表情にドキドキと胸の鼓動が高鳴り落ち着かない。
手を握られ、そこから直に伝わる彼の熱が私の体を駆け巡る様に熱くさせ……とにかく、大袈裟に感じるほど私はこの状況にどぎまぎしているという事を誰かに分かってほしい。
だって今までこの目で見てきたのは子供の様な彼の姿のみ。
それがいきなりこんなに気の利く優しい好青年で、超絶イケメンに変身してしまったのだから。
特に外見が変わった訳でもないのに、言葉遣いや態度が違うだけでこんなにも別人の様に見えるなんて……なんだか良い香りもしてきたわ。なんで香りまで変わるのよ。
「とりあず、破片は全部取り除けたはずだ」
その声に我に返ってみると、私の手に刺さっていた棘は既に綺麗に取り除かれていた。
ヴィンセント様は傷口に薬を塗ると、包帯でクルクルと巻き始めた。
器用に動く手先を見つめながら、自分の不甲斐なさに恥ずかしくなる。
だってこの傷って、私が頭に血が上って扉に八つ当たりをして出来た傷な訳で……完全に自業自得。
そんな女性が婚約者だなんて、ヴィンセント様としてはどういう心境なのだろう。
こういう時こそ、心の声を聞いて確認したいのに……。そう思いながら感覚を研ぎ澄ませてみるも、やはり心の声は沈黙を貫いている。
「レイナ」
ふいに、ヴィンセント様が優しい声で私の名前を呼んだ。
「……はい」
私もいつになく、しおらしく返事をしてしまう。
すると、ヴィンセント様は少し困った様に笑った。
「驚かせてすまない。こんな俺の姿に戸惑うのも当然だろう。レイナは子供の様な俺の姿しか見た事がないのだから」
「……はい」
確かに、本来のヴィンセント様の姿を見るのは初めて。だけど、その事に違和感は感じていない。
ずっと彼の心の声を聞いてきたから、本当はどんな人なのか、どんな口調で話をするのかは知っていた。
ただ、実際にその姿を前にしてみると、予想以上のイケメンっぷりに動揺している訳で。
「さっき言った通り、どうやら階段から落ちて頭をぶつけた衝撃で元の自分に戻れたようだ。……だが、子供返りしていた時の記憶もちゃんとある。だからレイナが俺に優しく接してくれていた事も……全部覚えている」
うん……。それは知っている。全部自作自演だものね。
「それと……君があの場で、俺の名誉を守ろうとしてくれた事もだ」
照れる様に頬を赤らめ、嬉しそうにそう言ってくれた事はありがたいのだけど……それは記憶から消してほしかった。
今になって思えば、恥ずかしい事を色々と言っていた気がする。
壁は壊すし、首絞めたいとか心の声が聞こえるとかも言っちゃってるし……。あと……真実の愛なんて……。
恥ずかしくてとても目を合わせられない私に、ヴィンセント様は言葉を続けた。
「レイナ。俺の為に立ち向かってくれてありがとう。君の勇敢な姿は本当に素敵だった。思わず見惚れて動けなくなってしまう程に。……だが……どうやら俺は少し勘違いをしていたようだ」
「勘違い……ですか?」
「ああ。俺はずっと君はとても強い人間だと思っていた。それは今も変わりはない。だが、いくら強い人間だからといって、傷付かない訳では無い。君はこんなにも傷付きやすいのだと……今更ながら気付いたよ」
そう言うと、ヴィンセント様は治療を終えた私の右手を気遣う様に優しく撫でた。
「……私なら大丈夫です。たとえ傷付いたとしても、打たれ強さでなんとかなります」
今までもそうだった。
体も心も、どんなに傷付こうともずっと耐えてきた。
それはこれからだって変わらないだろう。
「そんな事はない。君は脆く儚い存在だ」
……その言葉は……私には言ってほしくなかった。
それはずっとヴィンセント様を苦しめていた言葉でもあるのだから。
「だが、何の問題もない」
そう言うヴィンセント様の声はどこか吹っ切れた様に潔かった。
握っている私の手を、ヴィンセント様は宝物でも愛でる様な視線で見つめ、ゆっくりと持ち上げる。
「これからは俺が君を守れば良いのだから。体も、心も」
そう囁くと、ヴィンセント様は私の手の甲に優しく口付けた。
「――!!?」
あまりにも突然の出来事に、沈みかけていた心が飛び上がった。
手の甲から唇を離したヴィンセント様は愛しくて仕方ないという眼差しで私を見つめている。
その唇が再び言葉を紡ぐ。
「俺も、真実の愛を見つけたのかもしれないな」
そう言うと、ヴィンセント様は少しだけ意地悪そうな笑みを浮かべた。
キスされた事にも、その言葉を聞かれていた事にも恥ずかしくて、心音はありえないくらい早くなり頭の熱は沸騰直前。
どこまでも上がり続ける熱に浮かされ、私の思考回路は間もなく完全に停止した――。
そこからの記憶は殆どなく、気付いた時には帰りの馬車の中だった。
向かい側に座るヴィンセント様は言葉を発する事なく、窓の外の景色を眺めている。
ふいに私と目が合うと、彼は月光が反射する瞳を細めて優しい笑顔で応えてくれた。
それがまた恥ずかしくて、思わず視線を逸らしてしまった。
――ずっと彼の心の声を聞いていて、自分が彼の一番の理解者だと思っていた。
彼の事なら何でも分かる……そう思っていたのに。
今は何も分からない。
あれほど私から婚約破棄される事を望んでいた彼は、果たして今どんな気持ちなのだろう。
彼の私に対する気持ちは結構前から知っていた。
心の声で『優しい』『可愛い』と連呼されればさすがに気付いてしまう。
以前、ヴィンセント様は私との結婚を本気で考えてくれた事があった。
彼は私と結婚するのであれば、子供のふりをやめようとしていた。
彼自身も、私の前で偽りの姿を見せ続ける事を気にしていたから。だけど、そうした場合に予想できるのが女性問題の再来である。
残念なことに、この世には結婚している男性にも色目を使ってくる女性は多数存在する。そんな女性に近付かれた場合にハッキリと拒めない彼は、私を傷付けてしまうと思って結婚を諦めていた。
そんな人がいれば私が蹴散らすから問題ないと思ったけれど、それを言う訳にもいかず、何の進展もみられなかった。
だけど今日、彼はハッキリと女性を拒絶する事が出来た。
ずっと縛られていた強固なルールから解放されたのだろう。
だから――もう婚約破棄なんて望んでいないのだと信じたい。
彼が私を守ってくれると言ってくれたのも……きっとそういう事なのだと。
心の声は聞こえなくなってしまったけれど。
これからは、彼の言葉を信じればいい。
たったそれだけの事なんだ――。
その日の夜は、公爵邸の来客用の部屋に泊まらせてもらった。
次の日、朝食をヴィンセント様と一緒に食べた後、当初の予定通り、私は自分の屋敷へ帰るために公爵邸を後にした。
ヴィンセント様は子供のふりをしなくなった事で、やらなければいけない事が多くあるらしく慌ただしく動いていたけれど、私が帰る時間になるとわざわざ時間を作って見送りに来てくれた。
その表情はどことなく寂し気な様子で……きっと別れを惜しんでくれているのだろうと思った。
次に会うのは一ヶ月後。
それまでに、彼の前で緊張しないように心の準備をしておくことを胸に誓った。
この時……彼が何を考えていたのかを知りもせずに――。
ヴィンセント様は王宮の使用人から渡された救急箱を目の前のテーブルに置き、中からピンセットを取り出すと私の右手を取った。
私の右手の甲に刺さっている木の棘を取り除こうというのだろう。
「レイナ、少し痛むと思うが我慢してほしい」
「あ……大丈夫です。自分で出来ますから」
ヴィンセント様が持っているピンセットを渡してもらおうと手を差し出したが、彼はそれを奪われまいと手を引っ込めた。
「……いや。俺がやる」
ムッと口を尖らせ意地を張る姿から、子供を演じていたヴィンセント様の面影を感じてムズムズとくすぐったい気持ちになった。
「……分かりました。お願いします」
笑ってしまいそうな口元をなんとか堪えて承諾すると、ヴィンセント様はピンセットで私の手に刺さる棘を取り除き始めた。
チクチクと痛みはするけれど、そんな事よりもヴィンセント様の真剣な表情にドキドキと胸の鼓動が高鳴り落ち着かない。
手を握られ、そこから直に伝わる彼の熱が私の体を駆け巡る様に熱くさせ……とにかく、大袈裟に感じるほど私はこの状況にどぎまぎしているという事を誰かに分かってほしい。
だって今までこの目で見てきたのは子供の様な彼の姿のみ。
それがいきなりこんなに気の利く優しい好青年で、超絶イケメンに変身してしまったのだから。
特に外見が変わった訳でもないのに、言葉遣いや態度が違うだけでこんなにも別人の様に見えるなんて……なんだか良い香りもしてきたわ。なんで香りまで変わるのよ。
「とりあず、破片は全部取り除けたはずだ」
その声に我に返ってみると、私の手に刺さっていた棘は既に綺麗に取り除かれていた。
ヴィンセント様は傷口に薬を塗ると、包帯でクルクルと巻き始めた。
器用に動く手先を見つめながら、自分の不甲斐なさに恥ずかしくなる。
だってこの傷って、私が頭に血が上って扉に八つ当たりをして出来た傷な訳で……完全に自業自得。
そんな女性が婚約者だなんて、ヴィンセント様としてはどういう心境なのだろう。
こういう時こそ、心の声を聞いて確認したいのに……。そう思いながら感覚を研ぎ澄ませてみるも、やはり心の声は沈黙を貫いている。
「レイナ」
ふいに、ヴィンセント様が優しい声で私の名前を呼んだ。
「……はい」
私もいつになく、しおらしく返事をしてしまう。
すると、ヴィンセント様は少し困った様に笑った。
「驚かせてすまない。こんな俺の姿に戸惑うのも当然だろう。レイナは子供の様な俺の姿しか見た事がないのだから」
「……はい」
確かに、本来のヴィンセント様の姿を見るのは初めて。だけど、その事に違和感は感じていない。
ずっと彼の心の声を聞いてきたから、本当はどんな人なのか、どんな口調で話をするのかは知っていた。
ただ、実際にその姿を前にしてみると、予想以上のイケメンっぷりに動揺している訳で。
「さっき言った通り、どうやら階段から落ちて頭をぶつけた衝撃で元の自分に戻れたようだ。……だが、子供返りしていた時の記憶もちゃんとある。だからレイナが俺に優しく接してくれていた事も……全部覚えている」
うん……。それは知っている。全部自作自演だものね。
「それと……君があの場で、俺の名誉を守ろうとしてくれた事もだ」
照れる様に頬を赤らめ、嬉しそうにそう言ってくれた事はありがたいのだけど……それは記憶から消してほしかった。
今になって思えば、恥ずかしい事を色々と言っていた気がする。
壁は壊すし、首絞めたいとか心の声が聞こえるとかも言っちゃってるし……。あと……真実の愛なんて……。
恥ずかしくてとても目を合わせられない私に、ヴィンセント様は言葉を続けた。
「レイナ。俺の為に立ち向かってくれてありがとう。君の勇敢な姿は本当に素敵だった。思わず見惚れて動けなくなってしまう程に。……だが……どうやら俺は少し勘違いをしていたようだ」
「勘違い……ですか?」
「ああ。俺はずっと君はとても強い人間だと思っていた。それは今も変わりはない。だが、いくら強い人間だからといって、傷付かない訳では無い。君はこんなにも傷付きやすいのだと……今更ながら気付いたよ」
そう言うと、ヴィンセント様は治療を終えた私の右手を気遣う様に優しく撫でた。
「……私なら大丈夫です。たとえ傷付いたとしても、打たれ強さでなんとかなります」
今までもそうだった。
体も心も、どんなに傷付こうともずっと耐えてきた。
それはこれからだって変わらないだろう。
「そんな事はない。君は脆く儚い存在だ」
……その言葉は……私には言ってほしくなかった。
それはずっとヴィンセント様を苦しめていた言葉でもあるのだから。
「だが、何の問題もない」
そう言うヴィンセント様の声はどこか吹っ切れた様に潔かった。
握っている私の手を、ヴィンセント様は宝物でも愛でる様な視線で見つめ、ゆっくりと持ち上げる。
「これからは俺が君を守れば良いのだから。体も、心も」
そう囁くと、ヴィンセント様は私の手の甲に優しく口付けた。
「――!!?」
あまりにも突然の出来事に、沈みかけていた心が飛び上がった。
手の甲から唇を離したヴィンセント様は愛しくて仕方ないという眼差しで私を見つめている。
その唇が再び言葉を紡ぐ。
「俺も、真実の愛を見つけたのかもしれないな」
そう言うと、ヴィンセント様は少しだけ意地悪そうな笑みを浮かべた。
キスされた事にも、その言葉を聞かれていた事にも恥ずかしくて、心音はありえないくらい早くなり頭の熱は沸騰直前。
どこまでも上がり続ける熱に浮かされ、私の思考回路は間もなく完全に停止した――。
そこからの記憶は殆どなく、気付いた時には帰りの馬車の中だった。
向かい側に座るヴィンセント様は言葉を発する事なく、窓の外の景色を眺めている。
ふいに私と目が合うと、彼は月光が反射する瞳を細めて優しい笑顔で応えてくれた。
それがまた恥ずかしくて、思わず視線を逸らしてしまった。
――ずっと彼の心の声を聞いていて、自分が彼の一番の理解者だと思っていた。
彼の事なら何でも分かる……そう思っていたのに。
今は何も分からない。
あれほど私から婚約破棄される事を望んでいた彼は、果たして今どんな気持ちなのだろう。
彼の私に対する気持ちは結構前から知っていた。
心の声で『優しい』『可愛い』と連呼されればさすがに気付いてしまう。
以前、ヴィンセント様は私との結婚を本気で考えてくれた事があった。
彼は私と結婚するのであれば、子供のふりをやめようとしていた。
彼自身も、私の前で偽りの姿を見せ続ける事を気にしていたから。だけど、そうした場合に予想できるのが女性問題の再来である。
残念なことに、この世には結婚している男性にも色目を使ってくる女性は多数存在する。そんな女性に近付かれた場合にハッキリと拒めない彼は、私を傷付けてしまうと思って結婚を諦めていた。
そんな人がいれば私が蹴散らすから問題ないと思ったけれど、それを言う訳にもいかず、何の進展もみられなかった。
だけど今日、彼はハッキリと女性を拒絶する事が出来た。
ずっと縛られていた強固なルールから解放されたのだろう。
だから――もう婚約破棄なんて望んでいないのだと信じたい。
彼が私を守ってくれると言ってくれたのも……きっとそういう事なのだと。
心の声は聞こえなくなってしまったけれど。
これからは、彼の言葉を信じればいい。
たったそれだけの事なんだ――。
その日の夜は、公爵邸の来客用の部屋に泊まらせてもらった。
次の日、朝食をヴィンセント様と一緒に食べた後、当初の予定通り、私は自分の屋敷へ帰るために公爵邸を後にした。
ヴィンセント様は子供のふりをしなくなった事で、やらなければいけない事が多くあるらしく慌ただしく動いていたけれど、私が帰る時間になるとわざわざ時間を作って見送りに来てくれた。
その表情はどことなく寂し気な様子で……きっと別れを惜しんでくれているのだろうと思った。
次に会うのは一ヶ月後。
それまでに、彼の前で緊張しないように心の準備をしておくことを胸に誓った。
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