私、物語りを改竄します。だって、女神様が全否定するんだもん

あの時よりも強く思う

たとえ本当はサイレス王国の乗っ取りを狙っていなかったとしてもギュスタン王家は欲を掻きやり過ぎたのだ。

ケヴィンの差し出した書類に目を通していたラセットとレンバスは次第に口元を綻ばせた。

「これは本当か。これだけの証拠があれば……」
「当家の執事長に鍛えられたケヴィンですから抜かりはありません」

アデルはレンバスに微笑みかけた。
アドラー公爵家の者達は執事長である彼が誰なのか既に知っている。

書類を見ていたレンバスも懐かしそうに目元を和ませ、ケヴィンを見る。

「執事長は元気か？」
「はい。相変わらずアップルパイに目が無いです」
「其処は変わらないのか」

ケヴィンの返事にレンバスは声をあげて笑った。



話し合いが終わり、アデル達は学院の回廊を歩いていた。

楽しげに回廊を行き交う学院生の姿は平和で、水面下の出来事など考えたことも無いだろう。

でもそれで良い。
この国の人達を不安にさせたく無い。

「私はソーレイヌ様が愛するこの国を守りたい」

破滅プログラムの乙女ゲームの物語は全て改ざんする。
あの方の力になると決めた時よりもずっと強く思った。

アデルの突然の言葉にケヴィンは一瞬首を傾げたが、艶やかなアデルの笑みに頷いた。



ニールの毒を盛られた、と言う話はあっという間に下火になり今では誰も話題にすらしない。

ニールとマリーはなんとかしてアデリーンに因縁を付けようと彼女の周りを蠅の様に飛び回っている。

そんななか、アデリーンが学院に隣接している神殿で日課の礼拝をしている時騒ぎは起こった。