私、物語りを改竄します。だって、女神様が全否定するんだもん

紅月

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テンプレが通用しないのだから

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ヒロインマリーはピンクの髪に若草色の瞳の美少女で、金で爵位を買ったバロス男爵の娘。設定そのままの存在だが、淑女としての教育はまるで身に付いていない。


そんなマリーが学院に編入した時、違和感を感じてクラスの生徒を見回した。

ゲームではアデリーンとケヴィン、ルーファスも同じクラスに居たのにあの派手な3人が居ない。

でも、学院に居ないわけでは無い。
見た事もないクラスバッチを付けて廊下を歩いているアデリーンとケヴィンの姿を見てマリーはニヤッと笑った。

「きゃあ」

マリーは悲鳴をあげ、女生徒の着る制服のアデリーンの足元に転がった。

マリーは見えない様に顔を俯かせニヤッと笑った。ゲームではケヴィンが声を掛けて手を差し出し、助けてくれた。

ゲームでは、である。

だが、声が掛からない事におかしいと思い顔を上げると不思議そうにマリーを見るアデリーンの側でケヴィンは無表情でマリーを見下ろしている。

「何をしている。さっさと立て。お嬢様の邪魔だ」
「えっ?お嬢様?ケヴィンは義兄でしょ」
「義兄?俺はお嬢様の執事兼護衛だ」

ケヴィンの言葉にマリーは目を白黒させる。
執事兼護衛?ゲームじゃあり得ない言葉だ。

「ケヴィン、いつの間に護衛まで兼任したの?」

16歳とは思えない女性らしい柔らかな雰囲気のアデリーンの涼やかな声に周りの生徒達は頬を染め、ケヴィンは真面目な顔で答えた。

「お嬢様付きになると決めた時からです。旦那様の許可も頂いております」
「レートン伯爵が嘆くわよ」
「義父も喜んで賛成してますので、ご心配はお掛けしません」

2人の会話に聞いた事のない名前が上がり、マリーは更に目を白黒させた。

「レートン伯爵って誰?」

疑問がマリーの口から溢れたのか、さっきより低い声が出た。

「君が知る必要はない」
「グェェ」

スパッと音がしそうな程あっさり切り捨て、マリーの制服の襟首を掴むと淑女らしからぬ声を上げる彼女を強制的に廊下の端に移動させ、ケヴィンはアデリーンに謝罪をした。

「お嬢様のお目汚しを見過ごして申し訳ありません」
「あの方も学生ですもの、廊下で転ぶ事もありますわ。それと、女性に対してはもう少し優しくね」

アデリーンの慈愛に満ちた眼差しに廊下に居た生徒達は更に頬を染め、廊下にへたり込んでいるマリーは拳が白くなる程握り締める手を隠せないでいた。
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