[完結]ヤンデレ・メリバは好きですか?

紅月

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ずぶ濡れのヒロイン

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ノートイベント?から数日後。
学院の裏にある泉でデニスロードと見事な黒髪の女子生徒が魔法を練習していた。

デニスロードが優しく見詰める女子生徒の後ろ姿を、セレナは歯軋りしながら睨み付けていた。

「なんであの女を側に置くのよ。イベントだってちゃんとこなしてるアタシがあそこにいる筈なのに」

泉のイベントでは、セレナが魔法の練習をしていた時、カサンドラに突き飛ばされ制服がびしょ濡れになったところをデニスロードが助けてくれる物だ。

「ちょっと違うけど、アイツに足を引っ掛けられたって言って、デニスに抱き付けばオッケーよね」

そうぶつぶつ言ってから、デニスロード達のもとに走り出した。

泉を背にして立つデニスロードは震える程のイケメン。
その腕の中に飛び込むなんて、最高のイベントじゃない。

見事な程頭の中が花盛りのセレナが足を引っ掛けられたフリをしてデニスロードに抱きつこうとした時、見えない壁に顔からぶつかり、そのまま丸い壁に従って勢い良く泉に突っ込んだ。

制服が濡れるどころでは無い。全身泥まみれになってしまった。

「きゃあーカサンドラ、どうして足を掛けるの……」

泥まみれになった顔で黒髪の女子生徒を睨もうとした時、大量の水が落ちて来た。
雨が降るとか、バケツの水を被ったのでは無い。
文字通り、水の塊が落ちて来たのだ。

「シェラ、魔法を練習している時は集中を欠くな、と言われているだろ」

呆れた様な声で黒髪の女子生徒にデニスロードが声を掛けると

「ごめんなさい、お兄様。泥塗れの羽虫が耳障りな音を立てたので……」

黒髪のリーヴシェランが悲しそうな顔で謝った。

「な……なんで」

黒髪の女子生徒はカサンドラだと思っていたセレナは全身ずぶ濡れの状態で、リーヴシェラン達を見上げたが、とうの本人達は一滴の水にも濡れていない。

「防御の壁は見事だが」

もの凄い水が落ちて来たのに、防御の壁はびくともしていなかった。

「アリー直伝ですもの」

当然よ、と言いたげにリーヴシェランは黒髪をかき上げた。

「サラの様な髪が憧れだ、とか言ってアリーに頼み込んでいた様だが、私はいつものシェラの方が好きだな」
「まぁ嬉しい。ナリス先生も同じ事言って下さったけど、黒髪は憧れですもの」

クスクス笑うリーヴシェランと彼女を優しく見詰めるデニスロード。
全くセレナの話を聞いていない。

泉のイベントは盛大に肩透かしを食らった感じだが、全くフラグの立つ気配なく終わり、デニスロード達は笑い合いながら泉を後にし、その場にはずぶ濡れのセレナがぽつんと残された。
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