[完結]ヤンデレ・メリバは好きですか?

紅月

文字の大きさ
上 下
28 / 39

不発のイジメイベント

しおりを挟む
「どうしてこんな事するんですか?」

セレナはクラスの机や床に散らばる、破られた自分のノートを見ながら泣いて見た。
これがイジメイベントだって知ってるけど、気分は良くない。

「なんの話?わたくしは破れたノートが有る、とだけ言ったのよ」

廊下からカサンドラが呆れた顔で言うけど、アンタの取り巻きがした事くらい知ってんだから。

「それに、わたくし、貴女の私物入れの棚がどこに有るかなんて知りませんもの」

クラスの違う彼女の使う棚の場所など知らないし、わざわざ鍵を開けてまで探す必要もない、と言われセレナは青褪めた。
ゲームでは同じクラスだった為、棚がどこかも知っていたし、鍵は取り巻きが壊したのだ。

「嘘よ。カサンドラ、アンタが……」

セレナがカサンドラを呼び捨てにした事で、Bクラス全員の顔が青褪めたが、カサンドラは目で取りあわなくていい、と伝える。

「それ、コール男爵令嬢のノートだったのか。出しっぱなしで汚い落書きばかりだからてっきりゴミだと思ってたよ」

Bクラスの男子生徒が呆れた顔で破いた事を話した。

「本当に酷いわね。何が書いてあるかさっぱりわからないです」

黒髪の女子生徒がノートの切れ端を拾い、しげしげと見る。

「えっと、レオを魅了して……シオンとデニスとで……カサンドラとアリアを潰す!なんて非道な」

ノートの切れ端を持っていた女子生徒が目を吊り上げてセレナを睨んだ。

拙い。書き殴ってた事、読まれた。
誤魔化さないと。
デニス達を魅了してるのがバレちゃう。
と、セレナがアワアワしながら言い訳を始めた。

「アタシ、そんな事書いてない。カサンドラが嫌がらせで……」
「冗談でも、わたくしがアリアを害するなんて、書きませんわ。アリアはわたくしの大切な幼馴染の親友で、学院を卒業後わたくしの侍女になるのですもの」

廊下から一歩も動かないカサンドラが、凍る様な目でセレナを睨む。 
「そうよ。フロランス伯爵令嬢がカレドラス侯爵令嬢と幼馴染で、カレドラス侯爵家の皆様に可愛がられているのは社交界でも有名ですもの」

廊下にいる伯爵家以上の令嬢達が、白い目でセレナを見て、カサンドラの後ろに控えているアリアを優しい目で見詰めた。

「たまにカレドラス侯爵家の皆様は、アリアをカレドラス侯爵家の養女に、とさえ仰ってくださいますからね」

後ろから現れたジークハルトがため息混じりに言えば

「お父様は今も諦めてないご様子よ」

と、カサンドラがコロコロ笑った。

カサンドラがデニスロードの正妃になれば、カレドラス侯爵家の後継は、カサンドラが子を産むまで空席になる。
アリア程優秀であれば、養女に迎えカレドラス侯爵家の女当主として教育する道もある。

「侯爵ご夫妻も気が早すぎます。カサンドラ様のお子を当主として御教育しても問題無い筈です」

アリアが眉をハの字にして困った顔をすると、ジークハルトはアリアの肩に手を置き、優しく笑った。

「そうなると、侯爵ご夫妻は後継者の教育係としてアリアを侯爵家に呼ぶだろうな」
「駄目よ。アリアはわたくしの侍女として王宮に入るのだから」

カサンドラがアリアの手を取り、ぷぅと頬を膨らませた。
感情を表に出さない様、淑女の教育を施されているカサンドラの年相応の態度に周りの者達が和かに見詰めていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

婚約破棄された私の結婚相手は殿下限定!?

satomi
恋愛
私は公爵家の末っ子です。お兄様にもお姉さまにも可愛がられて育ちました。我儘っこじゃありません! ある日、いきなり「真実の愛を見つけた」と婚約破棄されました。 憤慨したのが、お兄様とお姉さまです。 お兄様は今にも突撃しそうだったし、お姉さまは家門を潰そうと画策しているようです。 しかし、2人の議論は私の結婚相手に!お兄様はイケメンなので、イケメンを見て育った私は、かなりのメンクイです。 お姉さまはすごく賢くそのように賢い人でないと私は魅力を感じません。 婚約破棄されても痛くもかゆくもなかったのです。イケメンでもなければ、かしこくもなかったから。 そんなお兄様とお姉さまが導き出した私の結婚相手が殿下。 いきなりビックネーム過ぎませんか?

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。 二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。 けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。 ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。 だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。 グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。 そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

公爵令嬢は愛に生きたい

拓海のり
恋愛
公爵令嬢シビラは王太子エルンストの婚約者であった。しかし学園に男爵家の養女アメリアが編入して来てエルンストの興味はアメリアに移る。 一万字位の短編です。他サイトにも投稿しています。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

処理中です...