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優しい方へ、でも黒い?

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幼少の時のトラウマから男性恐怖症だったシェラや騎士一族の出身だが、騎士になれなかったナリス先生、そして自分の弱さから弟を失ったレニも過去のトラウマが徐々にだが緩和され、優しい方へ温かい方へと考え方や行動が変わってきている。

「ただね、行動や言動は良い方に変わりつつあるけど、基本病んだままだぞ」

ユリシリアの渋い顔をユキは、口元を引き攣らせながら見た。

「恋人や仲間に対してはデレるが、敵に対しては以前のままだ」
「アイツは敵認定のままなのね」
「当然だ。魔法の制約を無視したのだからね」

ユリシリアの、聞きなれない言葉にユキはまた首を傾げた。

「良く分かんないけど、また進展があったら呼んで。そろそろ戻らないと」
「そうだね。もっと面白くなるだろうから、期待していておくれ」

スッと消えて行ったユキにユリシリアが小さく笑う。

「私も、まともな神じゃ無いからね」




数日後の執務室はまたも賑やかだった。

「ねぇマミ、セレナ・コールはどうやってデニー様達を……」

カーラの質問にマミは首を振った。

「ゲームではフラグを立てて恋情を募らせて行くんですが、現実的じゃ無いので私も分かりません」

15個のフラグ条件を見ても、すんなりと納得など出来ない。

「可能性としては、魅了魔法ですね」

ナリス先生が徐に口を開いた。

「あ、魔法大辞典に載ってました。確か、光属性しか持たない者は魔法を使う者達の中で最弱である為、1人だけ魅了できるはずです」
「相変わらず、アリーは読書家だね」
「人よりちょっと多いだけですよ」

アリーの読書量は半端では無い事は皆知っていたが、まさか魔法大辞典まで読み込んでいるとは思っていなかった。

「魅了魔法は最弱のものが使える魔法です。ただしそれには制約が掛けられます。魅了魔法を使用する者は、生きる為に必要な者、たった1人だけにしか掛けてはいけない、と」
「複数人にかける事は出来ないのか?」

ロードの疑問にナリス先生が首を振った。

「いえ、掛ける事は出来ます。ですが、反動でその者が最も望まない結果が、解除不能の呪いとして掛かります」

ナリス先生の返事に全員の目が点になった。

「解呪不可能の呪い?」

ロードの疑問は皆の疑問。

「はい。女好きなら一切、女性にモテないとか」
「セレナ・コールのゲームでの立ち位置や望みは何?」

シェラが素早くマミを見た。

「立ち位置ですか。個人を攻略したら、その方の恋人になる、でしたが今のアイツは全員を侍らせて悦に浸る感じです」

ますます嫌な女認定される言葉だが、マミは一言も嘘は言っていない。

「その魅了魔法、デニー様達に掛けさせれば面白い結果になりそうです事」

カーラがチラッと黒い笑みを見せる。

「でも、魅了魔法は厄介ですよ」

アリーが心配そうに言うが、ナリス先生も黒い笑みを浮かべ、首を横に振った。

「完全に掛かれば厄介ですが、一度や二度ではたいした威力では無いので、解除魔法で無かったことに出来ます」

掛かった魔法は無かったことに出来るなら、制約を破った事にはならないのでは、とクルトが聞けば、ナリス先生は更に笑みを黒くする。
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