[完結]ヤンデレ・メリバは好きですか?

紅月

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ユリシリアの世界と折られたフラグ

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久しぶりにユキはユリシリアに呼ばれ、彼のもとに来ると、ユリシリアがあの子が暮らす世界をクスクスと楽しそうに笑って見ている。

「どうしたの?」
「アリアが楽しい事を始めたんだよ。見るかい?」

そう言ってさっと手を振ると、場面が学院内に変わった。

「あの子、何を始めたの?」
「逆ハーエンドのフラグを折り始めたんだ」
「フラグを折る?」

意味が分からないがユキが首を傾げると、ユリシリアは笑顔のまま、視線を掲示板の様なものに向けた。

新学期初めの試験の結果が貼り出されているのか、学生達がワイワイ騒いでいるのが見えた。

ユキが掲示板の名前を見ていくと、学年一位の所にアリアの名前があった。

「流石ハナね。あの子、頭が良かったもの」

ユキがうんうんと頷けば、アリアがカサンドラ達に褒められて、頬を染めているのが見えた。

「これが、一本目のフラグが折れた所だ」

ゲームでは、ヒロインが学年一位を取る事で王太子デニスロードの興味を引くのだが、見事にセレナの名前が上位に無い。

「アイツ馬鹿だったから当然よ」

病院に長く入院していた為、確かに同年代より学力は劣っていたが、更に怠け者だったから知識など欠片も無い、劣等生だった。

「それだけじゃ無い。騎士との出会いイベントはカサンドラが潰し、魔術師の方はリーヴシェランが潰したんだ。その場面、見るかい?」

見るか?と聞いているが、ユリシリアは見せたくてウズウズしている様だ。
あの女が顔を引き攣らせている所ならぜひ見たい、と答えればユリシリアが再度手を振った。




「宿題提出の為に廊下を走るなんて……」

カサンドラは計画に渋っていたが、アリアやナビ子爵令嬢がクスクス笑い、変わりましょうか?と聞けば

「余計大惨事になりそうな予感しかしませんわ」

と、諦めた様に宿題を手に廊下を走り始めた。


軽やかな足取りで廊下を走るカサンドラを他の学生達は笑みを浮かべながら道を開けてくれ、カサンドラが目で礼をしながら角を曲がろうとした時、レオアニスとぶつかった。

「きゃあ」
「はっ、すみません」

衝撃は大した事が無かったし、咄嗟にレオアニスがカサンドラを支えたので倒れる事もなかったが、手に持っていた宿題の束がバサバサと落ちる。

「申し訳ありません」
「いえ、此方も急いでいたので前を見ていなかったから」

2人して屈み込み、宿題の束を拾う姿を廊下の角でセレナが顔を引き攣らせて見ている。

「これで全てですか?」
「ご親切に。はい、大丈夫です」

レオアニスから宿題を受け取ると、カサンドラは柔らかな笑みを浮かべ、頭を下げると受け取った宿題を抱え、また廊下を走り始めた。

走り去ってしまったカサンドラの背中をレオアニスがじっと見詰める横顔は何処かうっとりしているようにも見え、セレナの顔が更に引き攣っていく。
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