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運動神経は何処に置いて来たのか?
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デビューする子供達は王族に挨拶をし、エスコートの者とファーストダンスを踊る事で社交界にデビューする。
エスコートは婚約者がいれば婚約者がするが、だいたいは家族がする。
アリアも兄のジークハルトがエスコートをする事になっている。
淡いブラウンの髪は複雑に編み込まれ、宝石の様な青紫の瞳によく似た色の繊細なネックレスだけをアクセサリーとして身に付けた、白を基調としたデビューらしいドレス姿にジークハルトは目を細め、綺麗だ、と褒めた。
「お兄様もいつも以上にかっこいいです」
2つ上だから少年というより青年貴族の立ち姿に、アリアは頬を染めてはしゃいだ。
家族全員で王宮に向かい、会場に入ると当然のようにカサンドラ達がアリアを出迎えた。
本来、侯爵家のカレドラス家の者は、ある程度招待客が入ってから入場するものだが、今回はアリアの為、既に会場入りしていた。
「カレドラス侯爵閣下、本日は」
アリアの父、セオドア・フロランスがラーシェフに挨拶をすると、ラーシェフは満足そうに笑った。
アリアと同じ淡いブラウンの髪にサファイアの様な瞳の知的な紳士であるセオドア。
彼の後妻になりたがる令嬢や未亡人は多いが、亡き妻を今でも愛している彼は、外野の騒ぎなど気にも止めていない。
父親に似たジークハルトもアリアしか見ていない為、令嬢達の熱い視線などまるっきり無視である。
「では、陛下達に挨拶に伺おうか」
ラーシェフの言葉に従い、アリア達は王族の下に挨拶に向かった。
堅苦しい挨拶を終え、アリアが貴婦人の様な美しいカーテシーをすると、王太子のデニスロード・エセルバスが優しげな微笑みを浮かべ、アリアに手を差し伸べた。
「アリア・フロランス嬢、君の話はカサンドラから聞いている。では、デビューを祝い、ファーストダンスを踊ろうか」
アリアだけでなく、その場にいた者全てがギョッとしただろう。
王族のファーストダンスは配偶者か婚約者に決まっている。
デニスロードにはカサンドラを筆頭に候補者は居ても、まだ婚約者はいないから、今回のダンスは婚約者の最有力者になる。
羨望と嫉妬が入り混じる視線がアリアの背中に向けられたが、誰一人声を上げないのはアリアの側にカレドラス侯爵家族が居るからだろう。
「お言葉、まことにありがたいのですが、デニスロード殿下の足を踏むのは……」
アリアの言葉にデニスロードが首を傾げる。
「ずっとパートナーを務めてくれる兄の足をいまだに踏まないで踊れないのです」
小さな声の告白に、デニスロードは目を丸くし、ジークハルトは苦笑していた。
学院で同じクラスの為、ジークハルトはデニスロードとはそれなりに親しい為、言葉も飾らないものだった。
「妹は、運動神経が全て頭脳に行ってしまった様で」
ジークハルトの言葉にアリアは赤くなっているし、カサンドラ達はそんなアリアを慰めている。
「面白いな。どれだけ踏まれるか、試しに踊ろう」
「おやめ下さい。妹は私の足を踏む事さえ罪悪感で眠れなくなるのに、殿下の足を踏んだら、不眠症になります」
ジークハルトの言葉にデニスロードはまた目を丸くした。
「そうですわ。アリアは今回のダンスも死に物狂いで練習してやっとなのです。パートナーが変わったら、足に乗って踊った方がいいくらいになりますわ」
けして貶しているわけでは無い。
悲しい程、事実なのだ。
「それほどなのか」
「はい。運動神経を亡き母のお腹の中に置いてきてしまいました」
項垂れるアリアが、悲しげに呟く。
エスコートは婚約者がいれば婚約者がするが、だいたいは家族がする。
アリアも兄のジークハルトがエスコートをする事になっている。
淡いブラウンの髪は複雑に編み込まれ、宝石の様な青紫の瞳によく似た色の繊細なネックレスだけをアクセサリーとして身に付けた、白を基調としたデビューらしいドレス姿にジークハルトは目を細め、綺麗だ、と褒めた。
「お兄様もいつも以上にかっこいいです」
2つ上だから少年というより青年貴族の立ち姿に、アリアは頬を染めてはしゃいだ。
家族全員で王宮に向かい、会場に入ると当然のようにカサンドラ達がアリアを出迎えた。
本来、侯爵家のカレドラス家の者は、ある程度招待客が入ってから入場するものだが、今回はアリアの為、既に会場入りしていた。
「カレドラス侯爵閣下、本日は」
アリアの父、セオドア・フロランスがラーシェフに挨拶をすると、ラーシェフは満足そうに笑った。
アリアと同じ淡いブラウンの髪にサファイアの様な瞳の知的な紳士であるセオドア。
彼の後妻になりたがる令嬢や未亡人は多いが、亡き妻を今でも愛している彼は、外野の騒ぎなど気にも止めていない。
父親に似たジークハルトもアリアしか見ていない為、令嬢達の熱い視線などまるっきり無視である。
「では、陛下達に挨拶に伺おうか」
ラーシェフの言葉に従い、アリア達は王族の下に挨拶に向かった。
堅苦しい挨拶を終え、アリアが貴婦人の様な美しいカーテシーをすると、王太子のデニスロード・エセルバスが優しげな微笑みを浮かべ、アリアに手を差し伸べた。
「アリア・フロランス嬢、君の話はカサンドラから聞いている。では、デビューを祝い、ファーストダンスを踊ろうか」
アリアだけでなく、その場にいた者全てがギョッとしただろう。
王族のファーストダンスは配偶者か婚約者に決まっている。
デニスロードにはカサンドラを筆頭に候補者は居ても、まだ婚約者はいないから、今回のダンスは婚約者の最有力者になる。
羨望と嫉妬が入り混じる視線がアリアの背中に向けられたが、誰一人声を上げないのはアリアの側にカレドラス侯爵家族が居るからだろう。
「お言葉、まことにありがたいのですが、デニスロード殿下の足を踏むのは……」
アリアの言葉にデニスロードが首を傾げる。
「ずっとパートナーを務めてくれる兄の足をいまだに踏まないで踊れないのです」
小さな声の告白に、デニスロードは目を丸くし、ジークハルトは苦笑していた。
学院で同じクラスの為、ジークハルトはデニスロードとはそれなりに親しい為、言葉も飾らないものだった。
「妹は、運動神経が全て頭脳に行ってしまった様で」
ジークハルトの言葉にアリアは赤くなっているし、カサンドラ達はそんなアリアを慰めている。
「面白いな。どれだけ踏まれるか、試しに踊ろう」
「おやめ下さい。妹は私の足を踏む事さえ罪悪感で眠れなくなるのに、殿下の足を踏んだら、不眠症になります」
ジークハルトの言葉にデニスロードはまた目を丸くした。
「そうですわ。アリアは今回のダンスも死に物狂いで練習してやっとなのです。パートナーが変わったら、足に乗って踊った方がいいくらいになりますわ」
けして貶しているわけでは無い。
悲しい程、事実なのだ。
「それほどなのか」
「はい。運動神経を亡き母のお腹の中に置いてきてしまいました」
項垂れるアリアが、悲しげに呟く。
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