[完結]ヤンデレ・メリバは好きですか?

紅月

文字の大きさ
上 下
4 / 39

あの子の全てが欲しい

しおりを挟む
「カレドラス侯爵閣下。一度だけ目を瞑って頂けませんか?子供は間違いをする者です」

アリアの言葉にカレドラス侯爵は苦笑した。

「小さなレディ。君もカサンドラと同じ歳だろ」
「はい。10歳になりました」
「君が理解している物を、他の子供も理解出来ない筈はないはずだ」
「私は人よりちょっと多くの本を読んでいます。今回はそれが役に立っただけだと思います」

小生意気な事を言っている様にも聞こえるが、高位の貴族に対しての態度は完璧だ。

「ふむ、では今回だけは目を瞑ろう。だが、次は無い」
「ありがとうございます。カレドラス侯爵閣下」
「小さなレディに感謝するのだな。では、小さなレディ、君の名前を教えてくれないか?」
「ご無礼を致しました。フロランス伯爵の長女、アリアです。お初にお目に掛かります」

男の子達に向ける目と違い、アリアを見る目は優しげだった。

「アリア嬢。よければ、カサンドラの友達になってはくれないか?」
「カサンドラ・カレドラス侯爵令嬢様がお望みならば、喜んで」
「アリア、本当にお友達になってくれるの?お父様の命令では無くて……」
「勿論です。私は本ばかり読んでいるので、お友達が居ません。ですから、カサンドラ・カレドラス侯爵令嬢様が初めてのお友達に……」

アリアが言い終わる前に、カサンドラがアリアを抱き締めた。

「嬉しいわ。アリアみたいな可愛いお友達が出来るなんて。お父様、アリアは私の可愛いお友達よ」
「良かったね。アリア嬢、これからはカサンドラの事もちゃんと名前だけで呼んでやってくれるかな?」
「宜しいのですか?失礼になりませんか?」
「勿論よ。ちゃんとカサンドラって呼んでね」
「はい、カサンドラ様」

アリアの笑顔を眩しい物を見るように、カサンドラは嬉しげに目を細め、じっと見詰めた。

「お話中、失礼します」

静かにアリアを見詰めていたジークハルトが、カレドラス侯爵に声をかける。

「君は、アリア嬢の兄上かな?」
「初めてのお目に掛かります。アリアの兄、ジークハルト・フロランスです」

ジークハルトも12歳にしてはしっかりした子供で、礼儀も弁えている。

「フロランス伯爵は、良い後継ぎを育てているようだ」

納得したように、カレドラス侯爵は何度か頷いた。

「お言葉、父に伝えます。アリア、そろそろお暇しないと、先生をお待たせしてしまうよ」

軽く頭を下げて、アリアに柔らかな笑みを向けた。

「もう行ってしまうの?今度はいつ会えるの?」

カサンドラがぎゅっとアリアの手を握り、再会を切に願った。

「週末は先生もお休みなので、カサンドラ様のご都合が宜しければ」
「週末ね。絶対空けておくから、遊びに来て」
「はい」

2人は再会の約束を交わし、アリアは家へと戻った。
白い顔をした男の子達とその両親達をさっさと追い出し、サロンでカレドラス侯爵はカサンドラを見た。

「カサンドラ、あの子が欲しいかい?」
「欲しいですわ。アリアみたいな可愛いお友達、ずっと手元に置きたいの」
「欲しいなら……」
「でも、お父様。アリアはとても頭が良いから、お金や権力では私のモノにならない気がします」

カサンドラが目を細めると、カレドラス侯爵は低い声で笑う。

「カサンドラも頭が良いね。そうだね、アリア嬢は金にも権力にも屈しないだろう」
「ですから時間を掛けて、アリアの全てを私のものにしたいの」
「カサンドラはなんて頭が良いのでしょう。わたくしも力を貸すわ」

フロランス伯爵家の知識は、この先、魔力を凌駕するだろう。
今のうちにアリアを手の内に入れて置けば、知識による恩恵をも手に入れられるだろう。
そう、カレドラス侯爵は考えていたが

「アリアの知識だけじゃないわ。アリア自身が欲しいの。私をまっすぐ見て、笑うアリアの全てが欲しいの」

カサンドラの目は、まるで恋をしているかの様だ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

婚約破棄された私の結婚相手は殿下限定!?

satomi
恋愛
私は公爵家の末っ子です。お兄様にもお姉さまにも可愛がられて育ちました。我儘っこじゃありません! ある日、いきなり「真実の愛を見つけた」と婚約破棄されました。 憤慨したのが、お兄様とお姉さまです。 お兄様は今にも突撃しそうだったし、お姉さまは家門を潰そうと画策しているようです。 しかし、2人の議論は私の結婚相手に!お兄様はイケメンなので、イケメンを見て育った私は、かなりのメンクイです。 お姉さまはすごく賢くそのように賢い人でないと私は魅力を感じません。 婚約破棄されても痛くもかゆくもなかったのです。イケメンでもなければ、かしこくもなかったから。 そんなお兄様とお姉さまが導き出した私の結婚相手が殿下。 いきなりビックネーム過ぎませんか?

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。 二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。 けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。 ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。 だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。 グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。 そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

公爵令嬢は愛に生きたい

拓海のり
恋愛
公爵令嬢シビラは王太子エルンストの婚約者であった。しかし学園に男爵家の養女アメリアが編入して来てエルンストの興味はアメリアに移る。 一万字位の短編です。他サイトにも投稿しています。

処理中です...