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あの子の全てが欲しい
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「カレドラス侯爵閣下。一度だけ目を瞑って頂けませんか?子供は間違いをする者です」
アリアの言葉にカレドラス侯爵は苦笑した。
「小さなレディ。君もカサンドラと同じ歳だろ」
「はい。10歳になりました」
「君が理解している物を、他の子供も理解出来ない筈はないはずだ」
「私は人よりちょっと多くの本を読んでいます。今回はそれが役に立っただけだと思います」
小生意気な事を言っている様にも聞こえるが、高位の貴族に対しての態度は完璧だ。
「ふむ、では今回だけは目を瞑ろう。だが、次は無い」
「ありがとうございます。カレドラス侯爵閣下」
「小さなレディに感謝するのだな。では、小さなレディ、君の名前を教えてくれないか?」
「ご無礼を致しました。フロランス伯爵の長女、アリアです。お初にお目に掛かります」
男の子達に向ける目と違い、アリアを見る目は優しげだった。
「アリア嬢。よければ、カサンドラの友達になってはくれないか?」
「カサンドラ・カレドラス侯爵令嬢様がお望みならば、喜んで」
「アリア、本当にお友達になってくれるの?お父様の命令では無くて……」
「勿論です。私は本ばかり読んでいるので、お友達が居ません。ですから、カサンドラ・カレドラス侯爵令嬢様が初めてのお友達に……」
アリアが言い終わる前に、カサンドラがアリアを抱き締めた。
「嬉しいわ。アリアみたいな可愛いお友達が出来るなんて。お父様、アリアは私の可愛いお友達よ」
「良かったね。アリア嬢、これからはカサンドラの事もちゃんと名前だけで呼んでやってくれるかな?」
「宜しいのですか?失礼になりませんか?」
「勿論よ。ちゃんとカサンドラって呼んでね」
「はい、カサンドラ様」
アリアの笑顔を眩しい物を見るように、カサンドラは嬉しげに目を細め、じっと見詰めた。
「お話中、失礼します」
静かにアリアを見詰めていたジークハルトが、カレドラス侯爵に声をかける。
「君は、アリア嬢の兄上かな?」
「初めてのお目に掛かります。アリアの兄、ジークハルト・フロランスです」
ジークハルトも12歳にしてはしっかりした子供で、礼儀も弁えている。
「フロランス伯爵は、良い後継ぎを育てているようだ」
納得したように、カレドラス侯爵は何度か頷いた。
「お言葉、父に伝えます。アリア、そろそろお暇しないと、先生をお待たせしてしまうよ」
軽く頭を下げて、アリアに柔らかな笑みを向けた。
「もう行ってしまうの?今度はいつ会えるの?」
カサンドラがぎゅっとアリアの手を握り、再会を切に願った。
「週末は先生もお休みなので、カサンドラ様のご都合が宜しければ」
「週末ね。絶対空けておくから、遊びに来て」
「はい」
2人は再会の約束を交わし、アリアは家へと戻った。
白い顔をした男の子達とその両親達をさっさと追い出し、サロンでカレドラス侯爵はカサンドラを見た。
「カサンドラ、あの子が欲しいかい?」
「欲しいですわ。アリアみたいな可愛いお友達、ずっと手元に置きたいの」
「欲しいなら……」
「でも、お父様。アリアはとても頭が良いから、お金や権力では私のモノにならない気がします」
カサンドラが目を細めると、カレドラス侯爵は低い声で笑う。
「カサンドラも頭が良いね。そうだね、アリア嬢は金にも権力にも屈しないだろう」
「ですから時間を掛けて、アリアの全てを私のものにしたいの」
「カサンドラはなんて頭が良いのでしょう。わたくしも力を貸すわ」
フロランス伯爵家の知識は、この先、魔力を凌駕するだろう。
今のうちにアリアを手の内に入れて置けば、知識による恩恵をも手に入れられるだろう。
そう、カレドラス侯爵は考えていたが
「アリアの知識だけじゃないわ。アリア自身が欲しいの。私をまっすぐ見て、笑うアリアの全てが欲しいの」
カサンドラの目は、まるで恋をしているかの様だ。
アリアの言葉にカレドラス侯爵は苦笑した。
「小さなレディ。君もカサンドラと同じ歳だろ」
「はい。10歳になりました」
「君が理解している物を、他の子供も理解出来ない筈はないはずだ」
「私は人よりちょっと多くの本を読んでいます。今回はそれが役に立っただけだと思います」
小生意気な事を言っている様にも聞こえるが、高位の貴族に対しての態度は完璧だ。
「ふむ、では今回だけは目を瞑ろう。だが、次は無い」
「ありがとうございます。カレドラス侯爵閣下」
「小さなレディに感謝するのだな。では、小さなレディ、君の名前を教えてくれないか?」
「ご無礼を致しました。フロランス伯爵の長女、アリアです。お初にお目に掛かります」
男の子達に向ける目と違い、アリアを見る目は優しげだった。
「アリア嬢。よければ、カサンドラの友達になってはくれないか?」
「カサンドラ・カレドラス侯爵令嬢様がお望みならば、喜んで」
「アリア、本当にお友達になってくれるの?お父様の命令では無くて……」
「勿論です。私は本ばかり読んでいるので、お友達が居ません。ですから、カサンドラ・カレドラス侯爵令嬢様が初めてのお友達に……」
アリアが言い終わる前に、カサンドラがアリアを抱き締めた。
「嬉しいわ。アリアみたいな可愛いお友達が出来るなんて。お父様、アリアは私の可愛いお友達よ」
「良かったね。アリア嬢、これからはカサンドラの事もちゃんと名前だけで呼んでやってくれるかな?」
「宜しいのですか?失礼になりませんか?」
「勿論よ。ちゃんとカサンドラって呼んでね」
「はい、カサンドラ様」
アリアの笑顔を眩しい物を見るように、カサンドラは嬉しげに目を細め、じっと見詰めた。
「お話中、失礼します」
静かにアリアを見詰めていたジークハルトが、カレドラス侯爵に声をかける。
「君は、アリア嬢の兄上かな?」
「初めてのお目に掛かります。アリアの兄、ジークハルト・フロランスです」
ジークハルトも12歳にしてはしっかりした子供で、礼儀も弁えている。
「フロランス伯爵は、良い後継ぎを育てているようだ」
納得したように、カレドラス侯爵は何度か頷いた。
「お言葉、父に伝えます。アリア、そろそろお暇しないと、先生をお待たせしてしまうよ」
軽く頭を下げて、アリアに柔らかな笑みを向けた。
「もう行ってしまうの?今度はいつ会えるの?」
カサンドラがぎゅっとアリアの手を握り、再会を切に願った。
「週末は先生もお休みなので、カサンドラ様のご都合が宜しければ」
「週末ね。絶対空けておくから、遊びに来て」
「はい」
2人は再会の約束を交わし、アリアは家へと戻った。
白い顔をした男の子達とその両親達をさっさと追い出し、サロンでカレドラス侯爵はカサンドラを見た。
「カサンドラ、あの子が欲しいかい?」
「欲しいですわ。アリアみたいな可愛いお友達、ずっと手元に置きたいの」
「欲しいなら……」
「でも、お父様。アリアはとても頭が良いから、お金や権力では私のモノにならない気がします」
カサンドラが目を細めると、カレドラス侯爵は低い声で笑う。
「カサンドラも頭が良いね。そうだね、アリア嬢は金にも権力にも屈しないだろう」
「ですから時間を掛けて、アリアの全てを私のものにしたいの」
「カサンドラはなんて頭が良いのでしょう。わたくしも力を貸すわ」
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今のうちにアリアを手の内に入れて置けば、知識による恩恵をも手に入れられるだろう。
そう、カレドラス侯爵は考えていたが
「アリアの知識だけじゃないわ。アリア自身が欲しいの。私をまっすぐ見て、笑うアリアの全てが欲しいの」
カサンドラの目は、まるで恋をしているかの様だ。
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