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異世界に転生します、覚えて無いですが

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此処は雲の様な白い、何もない空間。
天国?と聞けば、神様は首を横に振って私の髪を撫でてくれた。


私は、交通事故で死んだ。
うっすら記憶はある。突然誰かに突き飛ばされ、目が痛くなる様なヘッドライトに、道路に叩きつけられた時の痛みと、泣きながら私の手を握っていたユキお姉ちゃん。

意識が真っ黒くなって、次に目を開けたら此処にいた。
暫く1人で座っていたら、凄く美形の神様が現れて私に謝った。
本当ならもっと長生きできたのに、邪悪な思念によって死んでしまった、と。

「守れなくて、すまない」
「お姉ちゃんは大丈夫?ツキちゃんは?」
「君のお姉さんは大丈夫だが、ツキはもう長くない」
「私の心臓、移植出来なかったんだ」

私はポロポロ涙が溢れるのを止められなかった。
双子のツキちゃんは心臓が悪くて、移植手術しか助かる方法が無かった。

「……いや、例え君の心臓が移植出来ても、もたなかった」

そんなに悪かったんだ、と改めて悲しくなった。

「君はこれから、過去を全て忘れ、真っ新な魂となって生まれ変わるけど、何か希望はある?」
「希望?兄弟は欲しいけど、お姉ちゃんはユキお姉ちゃんだけで良いから、お兄ちゃんが欲しいし、魔法が使えたら面白そう」

ツキちゃんの趣味だった乙女ゲームでは使えてたから、あんまり深く考えないで言ってみた。
そしたら……

「乙女ゲームね。では、ヤンデレ、メリバは好きですか?」

って神様が聞いて来た。
正直、ゲームや小説だから気にしないけど、現実でヤンデレは嫌だし、メリバはハピエン至上主義の私には受け入れられない。

「大っ嫌いです。私はハピエン至上主義です」

ついドヤ顔で答えたら、神様はびっくりした後、物凄く楽しそうに笑った。

「そう。では、君は前世の記憶を持たず、真っ新な魂で生まれ変わるが、私は君を祝福するよ」
「ありがとうございます。お姉ちゃんやお母さん達にあんまり悲しまないで、て言えたら良かったけど、仕方ないか」

俯く私の頭をまた、神様は撫でてくれた。

「ハナ、君のお姉さんは、君の幸せを願っていたよ」
「ありがとう。私もお姉ちゃんの幸せを願っている。記憶が無くたって、いつも願っている」

大好きだったお姉ちゃん、最後まで手を握っててくれてありがとう。
そう言って、私は真っ白な光に包まれて、白い場所から新しい家族の下に生まれ変わった、と思う。もう、覚えてないけど。
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