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……の揺籠。
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何度か、同じ事の繰り返しの世界でエリスはずっとこの世界をゲームだ、と言っていたが、現実世界はゲームではない。
ただ、偶然にもゲームに似た世界が広がっただけ。
選択肢が変われば、未来も変わる。
そして、選択肢は多くの者達の手で悉く変えられた。
「お前が望んでいた世界はもう無い。全て我々が消し去った」
アルレスは青褪めガタガタと震えるエリスを冷たく見据え、ゼウリスが頷く。
「すぐには殺さない。いや、死が最大の救いかも知れないな、これからのお前の未来は。なぁアルレス」
「はい。死んで終わりになんてさせない。トーラス侯爵令嬢を何度も殺したお前は自分の罪を自分で償え」
獰猛な肉食獣の様な笑みに、エリスは声も出なかった。
「あっ、言い忘れてたけど、なんでお前のドレス、そんなテカテカしてるか知ってるか?」
ずっと黙っていたアーモンがケラケラ笑いながらドレスの裾を踏み付ける。
言われて気が付けば、気持ち悪い程ベッタリとドレスが肌に貼り付いている。
唯の布ではない。
「コレ、無魔蛙の毒を染み込ませてんだよ」
「ムマガエル?」
聞いたことが無い言葉に、エリスは怯えながら首を傾げた。
「魔族の国にしか居ない、魔力の無い希少な蛙で、獲物の魔力を全部吸い取り、内臓から時間を掛けて喰うんだ」
アーモンの死刑宣告よりも残酷な言葉にエリスは嫌だ、と必死に首を振った。
「でも、お前はついている。魔力が無くなったお前は、産卵場所を探しているメスに気に入られれば喰われないぜ」
ケロっと声だけは可愛く鳴く、大人の手のひら大のテラテラした、緑の蛙の様なものがよじよじとエリスのドレスを登り始め、腹の所で止まった。
「いだいぃ、いだいぃ、ひぎぃぃ」
突然エリスが叫び出しガチャガチャと鎖を振り回す様暴れたが、蛙はぴったり貼り付いて後ろ足をモゾモゾ動かしていた。
「どうやら気に入ったみたいだ」
「何をしてるんだ?」
アルレスが不思議そうな顔でアーモンを見る。
「子宮に直接卵を産んでる。これで大人には喰われない」
大人には、と言う事は……。
「無魔蛙の揺籠になったのか」
ゼウリスがフッと笑い、ゆっくりと牢から出た。
「アーモン、無魔蛙は此方では生きていけないのだろ。親と揺籠の事は魔族の国で何とかしてくれ」
「当然。無魔蛙は貴重種だからね。ちゃんとメスの産卵が終わったら、揺籠は国に持ってくよ」
エリスの助けを求める声が響く中、アルレスはアーモンがケラケラ笑いながら頷くのを確認してから、ゼウリスの後を追った。
ただ、偶然にもゲームに似た世界が広がっただけ。
選択肢が変われば、未来も変わる。
そして、選択肢は多くの者達の手で悉く変えられた。
「お前が望んでいた世界はもう無い。全て我々が消し去った」
アルレスは青褪めガタガタと震えるエリスを冷たく見据え、ゼウリスが頷く。
「すぐには殺さない。いや、死が最大の救いかも知れないな、これからのお前の未来は。なぁアルレス」
「はい。死んで終わりになんてさせない。トーラス侯爵令嬢を何度も殺したお前は自分の罪を自分で償え」
獰猛な肉食獣の様な笑みに、エリスは声も出なかった。
「あっ、言い忘れてたけど、なんでお前のドレス、そんなテカテカしてるか知ってるか?」
ずっと黙っていたアーモンがケラケラ笑いながらドレスの裾を踏み付ける。
言われて気が付けば、気持ち悪い程ベッタリとドレスが肌に貼り付いている。
唯の布ではない。
「コレ、無魔蛙の毒を染み込ませてんだよ」
「ムマガエル?」
聞いたことが無い言葉に、エリスは怯えながら首を傾げた。
「魔族の国にしか居ない、魔力の無い希少な蛙で、獲物の魔力を全部吸い取り、内臓から時間を掛けて喰うんだ」
アーモンの死刑宣告よりも残酷な言葉にエリスは嫌だ、と必死に首を振った。
「でも、お前はついている。魔力が無くなったお前は、産卵場所を探しているメスに気に入られれば喰われないぜ」
ケロっと声だけは可愛く鳴く、大人の手のひら大のテラテラした、緑の蛙の様なものがよじよじとエリスのドレスを登り始め、腹の所で止まった。
「いだいぃ、いだいぃ、ひぎぃぃ」
突然エリスが叫び出しガチャガチャと鎖を振り回す様暴れたが、蛙はぴったり貼り付いて後ろ足をモゾモゾ動かしていた。
「どうやら気に入ったみたいだ」
「何をしてるんだ?」
アルレスが不思議そうな顔でアーモンを見る。
「子宮に直接卵を産んでる。これで大人には喰われない」
大人には、と言う事は……。
「無魔蛙の揺籠になったのか」
ゼウリスがフッと笑い、ゆっくりと牢から出た。
「アーモン、無魔蛙は此方では生きていけないのだろ。親と揺籠の事は魔族の国で何とかしてくれ」
「当然。無魔蛙は貴重種だからね。ちゃんとメスの産卵が終わったら、揺籠は国に持ってくよ」
エリスの助けを求める声が響く中、アルレスはアーモンがケラケラ笑いながら頷くのを確認してから、ゼウリスの後を追った。
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