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歴史が作られた日。

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「お父様。私、アクヤク令嬢なんですって。なんですかそれって」

ミルフィリアが衛兵に押さえ付けられているエリスを見ながら、いつの間にか隣に立つオルセウスにおっとりと声を掛けた。

「アクヤク令嬢?あぁ、女神アクヤクの加護を受け、王家と王国の守り人となる令嬢の事だよ」
「でも、お父様。今までその様な事、聞いたことがありませんが」

周りのもの達へ状況を周知させる為、困惑している様に見せるミルフィリアにオルセウスは頷くと

「それはそうさ、300年も時の影に隠されていたからね。でも、魔女ヒロインにアクヤク令嬢と呼ばれた令嬢は歴史の裏で多くの国や民を守ってきた王家と王国の守り人だ」

オルセウスは朗らかに微笑み、誇らしげにアクヤク令嬢の事を話し始めた。

「邪悪な魔女ヒロインの貪欲な欲望を潰せるただ一人の守り人だが、魔女ヒロインがずっと人々を欺いたせいで、守り人の存在を知る者は殆どいなかったが」
「アドンがありとあらゆる歴史を調べ、女神アクヤクに辿り着いた」

オルセウスの後からアルレスが言葉を足す。
そんな訳ないでしょ、と叫びたかっただろうが、エリスは顔や背中を床に押し付けられ、声を上げることが出来ない。

「やれやれ、アルレス達の卒業を祝いに来たつもりが伝説の魔女討伐の場面に出くわすとは」

ゆっくりとした足取りでゼウリスが壇上から降り、エリスを見下ろした。

会場の者達の中には学園で密かに囁かれている話を知っている者達もいるが、ほとんどは初めて聞く女神アクヤクやアクヤク令嬢と言う存在にどうしたら良いのか悩んでいるようだ。

だが、目の前で衛兵に押さえ付けられた女の言動は非常識を通り越して、嫌悪する物だと納得するとオルセウスやアルレスが言った内容も理解出来るようになった。

「衛兵、その魔女を取り敢えず地下牢に放り込め。逃げられては厄介だから、封魔具もはめろ」

はっ、と衛兵達は声を上げ、叫び声を上げ逃げようと暴れるエリスを引きずる様に会場から連れ出した。

騒つく会場にゼウリスの声が響く。

「諸君。君達は歴史に残る瞬間に立ち会った。今まで歴史の陰に隠れて表に出なかった魔女が断罪された」

自分達が知らない所で、ずっと暗躍していた魔女が捕らえられた瞬間。
歴史が造られた瞬間に立ち会った、と言う衝撃に騒めきが歓喜の声に変わり、しだいに拍手が湧き起こる。

そうしてアルレス達の卒業を祝うパーティーは和やかに終わった。
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