33 / 46
幸せになる為の努力。
しおりを挟む
アルレス達の卒業が後1ヶ月となった。
消し去った過去では、ミルフィリアは卒業式の後にあるパーティーで断罪され、なんの審議もされずその3日後に拷問の上処刑された。
ゼウリスを筆頭にアルレスやオルセウス達はエリスの動向を警戒し、ミルフィリアを出来るだけ1人にしないように配慮した。
目に見える警護の人間が増えただけで無くアーモン達までミルフィリアの側に居た為、更に嫌がらせを捏造しよう、と考えていたエリスはミルフィリアに近づくことも出来ず、忌々しそうに遠くに居る彼女達を睨んでいた。
ふいにミルフィリアの周りに居た女子生徒が輪を離れ、誰かと話し合っているのが見え、エリスはそちらに足音を忍ばせて向かった。
「エルフ伯爵令嬢。ありがとうございます。無事、調教師の資格が取れました」
嬉しそうな声とそれを喜んでいる声がして、校舎の陰から覗き込むと、そこにはノドスと名前も知らない女子生徒が立っていた。
「おめでとうございます。ノドスさん、すごく頑張ってましたもの。ミルフィリア様もきっと喜んで下さいますわ」
エルフ伯爵令嬢と呼ばれた少女がミルフィリアの方に目を向けた。
「あっ、いや、そのぉ。俺は……エルフ伯爵令嬢に知らせたかっただけなんで」
少し強面のノドスが顔を赤くしてモジモジしている。
「ノドスさんは今でこそ家を出ていますが、れっきとした貴族。フローラ様、良き伴侶と腕の良い調教師を手放してはいけないですわ」
エリスとは反対側で2人の様子を伺っていたユーリアが彼女達の元に集まりクスクス笑っている。
ユーリアの言葉にフローラが顔を赤くしながら、チラッとノドスを見た。
「はっ、あの、フローラ嬢。俺、いや、私と結婚して下さい」
片膝を付き、右手を差し伸べながらノドスが真っ赤な顔でフローラに求婚した。
「……喜んで」
エルフ伯爵家の長女で、将来女伯爵になるフローラにとって、ノドスは望んでも得られないほど良い婿候補だ。
しかも、良質の馬の産地でもあるエルフ伯爵領にとっては、短い期間であっても騎士であった経験を活かした軍馬の調教も出来る彼は喉から手が出るほど欲しい人材である。
「おめでとうございます、フローラ様」
ノドスの求婚を受け入れたフローラを周りに集った令嬢や令息達が祝福する。
幸せが幸せを呼び、ミルフィリアの周りに居る令嬢達はそれぞれ最良の相手と縁を結んでいる。
「やはり、ミルフィリア様は女神様の様です。お側に居るだけで幸せが訪れますもの」
真っ赤な顔をしているフローラが、ノドスと手を取りながらミルフィリアを見詰めた。
もし、ノドスに消し去った過去の記憶があったら、物凄い勢いで頷いていただろう。
誰一人幸せになれなかった過去を誰が呼び戻したい、と思うだろう。
誰もが今掴んだ幸せを守る為、過去を切り捨てる覚悟を決めたはずだ。
それに記憶が無くても、体や魂に染み付いた苦しみや憎しみを昇華する優しい空気に包まれている今を、彼らは必死に守りたい、と思っているのかもしれない。
消し去った過去では、ミルフィリアは卒業式の後にあるパーティーで断罪され、なんの審議もされずその3日後に拷問の上処刑された。
ゼウリスを筆頭にアルレスやオルセウス達はエリスの動向を警戒し、ミルフィリアを出来るだけ1人にしないように配慮した。
目に見える警護の人間が増えただけで無くアーモン達までミルフィリアの側に居た為、更に嫌がらせを捏造しよう、と考えていたエリスはミルフィリアに近づくことも出来ず、忌々しそうに遠くに居る彼女達を睨んでいた。
ふいにミルフィリアの周りに居た女子生徒が輪を離れ、誰かと話し合っているのが見え、エリスはそちらに足音を忍ばせて向かった。
「エルフ伯爵令嬢。ありがとうございます。無事、調教師の資格が取れました」
嬉しそうな声とそれを喜んでいる声がして、校舎の陰から覗き込むと、そこにはノドスと名前も知らない女子生徒が立っていた。
「おめでとうございます。ノドスさん、すごく頑張ってましたもの。ミルフィリア様もきっと喜んで下さいますわ」
エルフ伯爵令嬢と呼ばれた少女がミルフィリアの方に目を向けた。
「あっ、いや、そのぉ。俺は……エルフ伯爵令嬢に知らせたかっただけなんで」
少し強面のノドスが顔を赤くしてモジモジしている。
「ノドスさんは今でこそ家を出ていますが、れっきとした貴族。フローラ様、良き伴侶と腕の良い調教師を手放してはいけないですわ」
エリスとは反対側で2人の様子を伺っていたユーリアが彼女達の元に集まりクスクス笑っている。
ユーリアの言葉にフローラが顔を赤くしながら、チラッとノドスを見た。
「はっ、あの、フローラ嬢。俺、いや、私と結婚して下さい」
片膝を付き、右手を差し伸べながらノドスが真っ赤な顔でフローラに求婚した。
「……喜んで」
エルフ伯爵家の長女で、将来女伯爵になるフローラにとって、ノドスは望んでも得られないほど良い婿候補だ。
しかも、良質の馬の産地でもあるエルフ伯爵領にとっては、短い期間であっても騎士であった経験を活かした軍馬の調教も出来る彼は喉から手が出るほど欲しい人材である。
「おめでとうございます、フローラ様」
ノドスの求婚を受け入れたフローラを周りに集った令嬢や令息達が祝福する。
幸せが幸せを呼び、ミルフィリアの周りに居る令嬢達はそれぞれ最良の相手と縁を結んでいる。
「やはり、ミルフィリア様は女神様の様です。お側に居るだけで幸せが訪れますもの」
真っ赤な顔をしているフローラが、ノドスと手を取りながらミルフィリアを見詰めた。
もし、ノドスに消し去った過去の記憶があったら、物凄い勢いで頷いていただろう。
誰一人幸せになれなかった過去を誰が呼び戻したい、と思うだろう。
誰もが今掴んだ幸せを守る為、過去を切り捨てる覚悟を決めたはずだ。
それに記憶が無くても、体や魂に染み付いた苦しみや憎しみを昇華する優しい空気に包まれている今を、彼らは必死に守りたい、と思っているのかもしれない。
112
お気に入りに追加
418
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢の妹ですが幸せは来るのでしょうか?
まるねこ
恋愛
第二王子と結婚予定だった姉がどうやら婚約破棄された。姉の代わりに侯爵家を継ぐため勉強してきたトレニア。姉は良い縁談が望めないとトレニアの婚約者を強請った。婚約者も姉を想っていた…の?
なろう小説、カクヨムにも投稿中。
Copyright©︎2021-まるねこ
悪役令嬢に仕立てあげられて婚約破棄の上に処刑までされて破滅しましたが、時間を巻き戻してやり直し、逆転します。
しろいるか
恋愛
王子との許婚で、幸せを約束されていたセシル。だが、没落した貴族の娘で、侍女として引き取ったシェリーの魔の手により悪役令嬢にさせられ、婚約破棄された上に処刑までされてしまう。悲しみと悔しさの中、セシルは自分自身の行いによって救ってきた魂の結晶、天使によって助け出され、時間を巻き戻してもらう。
次々に襲い掛かるシェリーの策略を切り抜け、セシルは自分の幸せを掴んでいく。そして憎しみに囚われたシェリーは……。
破滅させられた不幸な少女のやり直し短編ストーリー。人を呪わば穴二つ。
侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw
さこの
恋愛
「喜べリリアン! 第一王子の婚約者候補におまえが挙がったぞ!」
ある日お兄様とサロンでお茶をしていたらお父様が突撃して来た。
「良かったな! お前はフレデリック殿下のことを慕っていただろう?」
いえ! 慕っていません!
このままでは父親と意見の相違があるまま婚約者にされてしまう。
どうしようと考えて出した答えが【悪役令嬢に私はなる!】だった。
しかしリリアンは【悪役令嬢】と言う存在の解釈の仕方が……
*設定は緩いです
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
築地シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
婚約者の隣にいるのは初恋の人でした
四つ葉菫
恋愛
ジャスミン・ティルッコネンは第二王子である婚約者から婚約破棄を言い渡された。なんでも第二王子の想い人であるレヒーナ・エンゲルスをジャスミンが虐めたためらしい。そんな覚えは一切ないものの、元から持てぬ愛情と、婚約者の見限った冷たい眼差しに諦念して、婚約破棄の同意書にサインする。
その途端、王子の隣にいたはずのレヒーナ・エンゲルスが同意書を手にして高笑いを始めた。
楚々とした彼女の姿しか見てこなかったジャスミンと第二王子はぎょっとするが……。
前半のヒロイン視点はちょっと暗めですが、後半のヒーロー視点は明るめにしてあります。
ヒロインは十六歳。
ヒーローは十五歳設定。
ゆるーい設定です。細かいところはあまり突っ込まないでください。
婚約破棄された令嬢は変人公爵に嫁がされる ~新婚生活を嘲笑いにきた? 夫がかわゆすぎて今それどころじゃないんですが!!
杓子ねこ
恋愛
侯爵令嬢テオドシーネは、王太子の婚約者として花嫁修業に励んできた。
しかしその努力が裏目に出てしまい、王太子ピエトロに浮気され、浮気相手への嫌がらせを理由に婚約破棄された挙句、変人と名高いクイア公爵のもとへ嫁がされることに。
対面した当主シエルフィリードは馬のかぶりものをして、噂どおりの奇人……と思ったら、馬の下から出てきたのは超絶美少年?
でもあなたかなり年上のはずですよね? 年下にしか見えませんが? どうして涙ぐんでるんですか?
え、王太子殿下が新婚生活を嘲笑いにきた? 公爵様がかわゆすぎていまそれどころじゃないんですが!!
恋を知らなかった生真面目令嬢がきゅんきゅんしながら引きこもり公爵を育成するお話です。
本編11話+番外編。
※「小説家になろう」でも掲載しています。
【 完 】転移魔法を強要させられた上に婚約破棄されました。だけど私の元に宮廷魔術師が現れたんです
菊池 快晴
恋愛
公爵令嬢レムリは、魔法が使えないことを理由に婚約破棄を言い渡される。
自分を虐げてきた義妹、エリアスの思惑によりレムリは、国民からは残虐な令嬢だと誤解され軽蔑されていた。
生きている価値を見失ったレムリは、人生を終わらせようと展望台から身を投げようとする。
しかし、そんなレムリの命を救ったのは他国の宮廷魔術師アズライトだった。
そんな彼から街の案内を頼まれ、病に困っている国民を助けるアズライトの姿を見ていくうちに真実の愛を知る――。
この話は、行き場を失った公爵令嬢が強欲な宮廷魔術師と出会い、ざまあして幸せになるお話です。
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる