【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月

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入れ替わった立ち位置。

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廊下の隅で爪をガリガリ齧りながら、エリスはミルフィリアを睨み付けていた。

数日前に終わった学年末の試験結果が貼り出される掲示板の前で、笑顔で大勢の令嬢や令息に囲まれているミルフィリアは女神の様に美しい。

「ミルフィリア様、今回は私、頑張ったんです」

ユーリアが胸を張って笑った。

「本当に頑張ってましたものね。聖女候補生としてのお仕事もあったのに、1番だなんて。私も見習わなければいけないですね」

成績上位者の名前が並ぶ掲示板の、2年生トップはユーリアで、ミルフィリアは次点だ。
それなのにミルフィリアは自分の様にユーリアの主席を喜び、褒め称えている。

「ミルフィリアお義姉様は王太子妃教育が始まって忙しくなったのに……。わたくし、少し恥ずかしいです」

1年生の順位表を見れば、テーミスは3番に名前がある。

「一年生には特待生が多いから、テーミス様の順位は恥じるものでは無いと思います」

ユーリアが柔らかく微笑むと、ミルフィリアも頷いた。

「おいおい。それだったら俺はどうすりゃあいいんだよ」
「そうです。僕なんて、歴史以外の教科は……」

トップテン止まりのアルレスが呆れた声を上げ、その隣でアドンが地味に落ち込んでいる。

「お兄様。アドン。試験は赤点を取らなければ、学生の勝ちですわ。お兄様達は教師陣に勝ったのですから、胸を張って下さいませ」

テーミスの発言に、周りからドッと笑いが起こる。

笑顔に囲まれ、誰もがミルフィリアと話す事を望んでいる。
独りぼっちで、何をしても誰も振り向いてくれない自分の立場が悔しくて、爪がボロボロになってしまっても噛む事をやめられない。

ゲームや今までの世界では、自分があそこに居たのに。
チヤホヤして、と目で訴えれば皆褒めてくれたし、好きだと言ってよと願えばアルレス達やモブ令息達が好きだと言ってくれた。

ゲームの終盤でもあるこの時間帯では、ヒロインである自分を中心にした世界が広がっていたはずなのに。
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