20 / 46
アクヤク令嬢とは?
しおりを挟む
「と、言うことがありましたの」
学園で起こった事の報告のため王宮に戻ったアリアンナがオルセウス達にエリスの醜態を話すと、執務室の主人であるオルセウスはにやり、と黒い笑みを浮かべた。
「ゼウリス殿下より学園での事は聞いたが、其方も楽しい事があったみたいだね」
「楽しい事、になるのかしら?でも、学園の者達にアレが役立たずだと証明できた事は事実ですわ」
戻す前の時は、気付かれていなかったが学園内の出来事を調べれば、エリスが吹聴したお粗末な企みがボロボロ出て来ていた。
「あの愚か者は、ミルフィリアに教科書を破られた、だの噴水に落とされた、だの嫌がらせを捏造しているようだが」
ポセイダスが書類を見ながら呆れた顔をする。
「ユーリアや友人の令嬢達が、悉く潰してますわ。それにあの3人……」
アリアンナが学園に居る、落ちぶれた男達の顔を思い出し、クスッと笑う。
「何をした?」
「いえ、私が何かをしたのではなく、勝手に」
アリアンナがクスクス笑って、話が続かない。
「もう、アリアンナ様。あの3人、此方が何もしていないのに全くあの女に靡かないのですって」
ローレルが話の続きを引き受けた。
「ほう、あれほど溺れていたのにか?」
「ええ。より美しい存在を見てしまったのですもの、当然の結果ですわ」
計画では、傀儡の魔術を使って落ちぶれたあの3人をエリスから引き離し、適当な令嬢に惚れさせるつもりだったが、3人は学園で、折に触れて噂になるミルフィリアに心を奪われていた。
「漸くミルフィリアの素晴らしさに気が付いたようだな」
「ま、何も出来ないだろうがな」
オルセウスとポセイダスがフッと笑う。
20歳になると同時に立太子するゼウリスの、最愛の婚約者にたいして大それた事は出来ないが、影からミルフィリアを見詰め、エリスに見向きもしない様は面白く、ローレルは話し終えると満足げにお茶を飲んだ。
「此処まで改変出来たなら、後はあの子が処刑された日を無事、乗り切れば目的を達成したと見ていいだろう」
ミルフィリアが処刑されたのは、学園の卒業式から3日後。
まだ数ヶ月の時間はあるが、手を抜く気は無い。
「そう言えば、トーラス侯爵はアクヤク令嬢、と言う言葉をご存知でしょうか?」
「アクヤク令嬢?何だね、それは?」
「あの女が、ミルフィリア様に対してそう呼んでいたので、ちょっと気になったのです」
アリアンナの言葉に、オルセウス達も首を傾げた。
「令嬢と、言っているのですから、ミルフィリアにも当て嵌まるけど、アクヤクって聞いた事ないですわ」
ローレルが真剣に考え始めたが、答えなど出てこない。
「サラ、君は聞いたことあるか?」
壁際に控えているサラに、オルセウスが視線を向けた。
「以前、お嬢様にも尋ねられましたので調べてみましたが、明確な答えは探し出せませんでした」
何故、誰も知らない言葉をあの女が使うのか、多少気になる。
「あの女の言動を調べ、推測する方が早そうだな」
「ならば、俺の方は別口で調べるか」
あの女の行動は不可解で、見過ごすには危険すぎる、と認識を共有した。
学園で起こった事の報告のため王宮に戻ったアリアンナがオルセウス達にエリスの醜態を話すと、執務室の主人であるオルセウスはにやり、と黒い笑みを浮かべた。
「ゼウリス殿下より学園での事は聞いたが、其方も楽しい事があったみたいだね」
「楽しい事、になるのかしら?でも、学園の者達にアレが役立たずだと証明できた事は事実ですわ」
戻す前の時は、気付かれていなかったが学園内の出来事を調べれば、エリスが吹聴したお粗末な企みがボロボロ出て来ていた。
「あの愚か者は、ミルフィリアに教科書を破られた、だの噴水に落とされた、だの嫌がらせを捏造しているようだが」
ポセイダスが書類を見ながら呆れた顔をする。
「ユーリアや友人の令嬢達が、悉く潰してますわ。それにあの3人……」
アリアンナが学園に居る、落ちぶれた男達の顔を思い出し、クスッと笑う。
「何をした?」
「いえ、私が何かをしたのではなく、勝手に」
アリアンナがクスクス笑って、話が続かない。
「もう、アリアンナ様。あの3人、此方が何もしていないのに全くあの女に靡かないのですって」
ローレルが話の続きを引き受けた。
「ほう、あれほど溺れていたのにか?」
「ええ。より美しい存在を見てしまったのですもの、当然の結果ですわ」
計画では、傀儡の魔術を使って落ちぶれたあの3人をエリスから引き離し、適当な令嬢に惚れさせるつもりだったが、3人は学園で、折に触れて噂になるミルフィリアに心を奪われていた。
「漸くミルフィリアの素晴らしさに気が付いたようだな」
「ま、何も出来ないだろうがな」
オルセウスとポセイダスがフッと笑う。
20歳になると同時に立太子するゼウリスの、最愛の婚約者にたいして大それた事は出来ないが、影からミルフィリアを見詰め、エリスに見向きもしない様は面白く、ローレルは話し終えると満足げにお茶を飲んだ。
「此処まで改変出来たなら、後はあの子が処刑された日を無事、乗り切れば目的を達成したと見ていいだろう」
ミルフィリアが処刑されたのは、学園の卒業式から3日後。
まだ数ヶ月の時間はあるが、手を抜く気は無い。
「そう言えば、トーラス侯爵はアクヤク令嬢、と言う言葉をご存知でしょうか?」
「アクヤク令嬢?何だね、それは?」
「あの女が、ミルフィリア様に対してそう呼んでいたので、ちょっと気になったのです」
アリアンナの言葉に、オルセウス達も首を傾げた。
「令嬢と、言っているのですから、ミルフィリアにも当て嵌まるけど、アクヤクって聞いた事ないですわ」
ローレルが真剣に考え始めたが、答えなど出てこない。
「サラ、君は聞いたことあるか?」
壁際に控えているサラに、オルセウスが視線を向けた。
「以前、お嬢様にも尋ねられましたので調べてみましたが、明確な答えは探し出せませんでした」
何故、誰も知らない言葉をあの女が使うのか、多少気になる。
「あの女の言動を調べ、推測する方が早そうだな」
「ならば、俺の方は別口で調べるか」
あの女の行動は不可解で、見過ごすには危険すぎる、と認識を共有した。
293
お気に入りに追加
736
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
「アゼリア・フォン・ホーヘーマイヤー、俺はお前との婚約を破棄する!」
「王太子殿下、我が家名はヘーファーマイアーですわ」
公爵令嬢アゼリアは、婚約者である王太子ヨーゼフに婚約破棄を突きつけられた。それも家名の間違い付きで。
理由は聖女エルザと結婚するためだという。人々の視線が集まる夜会でやらかした王太子に、彼女は満面の笑みで婚約関係を解消した。
王太子殿下――あなたが選んだ聖女様の意味をご存知なの? 美しいアゼリアを手放したことで、国は傾いていくが、王太子はいつ己の失態に気づけるのか。自由に羽ばたくアゼリアは、魔王の溺愛の中で幸せを掴む!
頭のゆるい王太子をぎゃふんと言わせる「ざまぁ」展開ありの、ハッピーエンド。
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2021/08/16 「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過
※2021/01/30 完結
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう

【完結】毒殺疑惑で断罪されるのはゴメンですが婚約破棄は即決でOKです
早奈恵
恋愛
ざまぁも有ります。
クラウン王太子から突然婚約破棄を言い渡されたグレイシア侯爵令嬢。
理由は殿下の恋人ルーザリアに『チャボット毒殺事件』の濡れ衣を着せたという身に覚えの無いこと。
詳細を聞くうちに重大な勘違いを発見し、幼なじみの公爵令息ヴィクターを味方として召喚。
二人で冤罪を晴らし婚約破棄の取り消しを阻止して自由を手に入れようとするお話。

【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~
ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。
長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。
心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。
そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。
そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。
レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。
毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。
レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく――
これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。
※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。
蜜柑
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。
妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。

婚約者の不倫相手は妹で?
岡暁舟
恋愛
公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。


これは未来に続く婚約破棄
茂栖 もす
恋愛
男爵令嬢ことインチキ令嬢と蔑まれている私、ミリア・ホーレンスと、そこそこ名門のレオナード・ロフィは婚約した。……1ヶ月という期間限定で。
1ヶ月後には、私は大っ嫌いな貴族社会を飛び出して、海外へ移住する。
レオンは、家督を弟に譲り長年片思いしている平民の女性と駆け落ちをする………予定だ。
そう、私達にとって、この婚約期間は、お互いの目的を達成させるための準備期間。
私達の間には、恋も愛もない。
あるのは共犯者という連帯意識と、互いの境遇を励まし合う友情があるだけ。
※別PNで他サイトにも重複投稿しています。

君を愛さない……こともないような、そうでもないようなって、どっちなんですか旦那様!?~氷の軍神は羊飼い令嬢を溺愛する~
束原ミヤコ
恋愛
ディジー・エステランドは、人よりも羊の数が多い田舎の領地に住む伯爵家の娘である。
とはいっても名ばかりで、父はほぼ農家。
母は庶民。兄も弟も、そしてディジーもうまれてこのかた領地を出たことがない。
舞踏会にも行ったことがなければ、他の貴族にも会ったことがない。
チーズをつくり牛の乳を搾り、羊の毛を刈って生きてきた。
そんなエステランド家に、ダンテ・ミランティス公爵閣下から婚約の打診の手紙が届く。
氷の公爵と呼ばれる、うまれてから一度も笑ったことがないと評判の男である。
断ることもできずに了承の返事を送ると、半年後迎えに行くと連絡が来る。
半信半疑でいたディジーだが、半年後本当に迎えが来てしまう。
公爵家に嫁いだディジーに、ダンテは言う。
「俺は君を、愛さない……こともない……ような、気が、するような、しないような……!」
――って、どっちなんですか、旦那様!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる