【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月

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アクヤク令嬢とは?

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「と、言うことがありましたの」

学園で起こった事の報告のため王宮に戻ったアリアンナがオルセウス達にエリスの醜態を話すと、執務室の主人であるオルセウスはにやり、と黒い笑みを浮かべた。

「ゼウリス殿下より学園での事は聞いたが、其方も楽しい事があったみたいだね」
「楽しい事、になるのかしら?でも、学園の者達にアレが役立たずだと証明できた事は事実ですわ」

戻す前の時は、気付かれていなかったが学園内の出来事を調べれば、エリスが吹聴したお粗末な企みがボロボロ出て来ていた。

「あの愚か者は、ミルフィリアに教科書を破られた、だの噴水に落とされた、だの嫌がらせを捏造しているようだが」

ポセイダスが書類を見ながら呆れた顔をする。

「ユーリアや友人の令嬢達が、悉く潰してますわ。それにあの3人……」

アリアンナが学園に居る、落ちぶれた男達の顔を思い出し、クスッと笑う。

「何をした?」
「いえ、私が何かをしたのではなく、勝手に」

アリアンナがクスクス笑って、話が続かない。

「もう、アリアンナ様。あの3人、此方が何もしていないのに全くあの女に靡かないのですって」

ローレルが話の続きを引き受けた。

「ほう、あれほど溺れていたのにか?」
「ええ。より美しい存在を見てしまったのですもの、当然の結果ですわ」

計画では、傀儡の魔術を使って落ちぶれたあの3人をエリスから引き離し、適当な令嬢に惚れさせるつもりだったが、3人は学園で、折に触れて噂になるミルフィリアに心を奪われていた。

「漸くミルフィリアの素晴らしさに気が付いたようだな」
「ま、何も出来ないだろうがな」

オルセウスとポセイダスがフッと笑う。
20歳になると同時に立太子するゼウリスの、最愛の婚約者にたいして大それた事は出来ないが、影からミルフィリアを見詰め、エリスに見向きもしない様は面白く、ローレルは話し終えると満足げにお茶を飲んだ。

「此処まで改変出来たなら、後はあの子が処刑された日を無事、乗り切れば目的を達成したと見ていいだろう」

ミルフィリアが処刑されたのは、学園の卒業式から3日後。
まだ数ヶ月の時間はあるが、手を抜く気は無い。

「そう言えば、トーラス侯爵はアクヤク令嬢、と言う言葉をご存知でしょうか?」
「アクヤク令嬢?何だね、それは?」
「あの女が、ミルフィリア様に対してそう呼んでいたので、ちょっと気になったのです」

アリアンナの言葉に、オルセウス達も首を傾げた。

「令嬢と、言っているのですから、ミルフィリアにも当て嵌まるけど、アクヤクって聞いた事ないですわ」

ローレルが真剣に考え始めたが、答えなど出てこない。

「サラ、君は聞いたことあるか?」

壁際に控えているサラに、オルセウスが視線を向けた。

「以前、お嬢様にも尋ねられましたので調べてみましたが、明確な答えは探し出せませんでした」

何故、誰も知らない言葉をあの女が使うのか、多少気になる。

「あの女の言動を調べ、推測する方が早そうだな」
「ならば、俺の方は別口で調べるか」

あの女の行動は不可解で、見過ごすには危険すぎる、と認識を共有した。
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