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新しい友人。
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「だって、ルシード様が面白い力を持った人間が居るって言うから、ちょっと試しただけだ」
アーモンは、呆然とする王宮の魔術師達では封じ切れない、と判断され水晶球から出されたが、ミルフィリアの魔力で拘束されたままクロイヤス王の前に引き出された。
ミルフィリアの魔力に拘束されているのに床に座り、あぐらをかいて悪びれないアーモンの言い分にクロイヤス王は頭を抱えそうになるが、魔族の最高実力者の1人であるアーモンを完璧に封じるミルフィリアの力に、内心驚愕していた。
「それで、どうするつもりだ」
「彼女になら殺されたって文句は言わねーし、ルシード様も納得するぞ。強い奴が正義だからな」
魔王ルシードの側近だけあって、魔力は強いし、少年の様な姿だが生きてきた年数はここに居る誰よりも長いだろう。
魔力の強さが容姿と寿命に反映される魔族。
少し逆立った緑の髪に赤い目のアーモンは、桁外れの美貌の持ち主だ。
それ故、力が全ての魔族らしい返事に、クロイヤス王がミルフィリアを見た。
「トーラス侯爵令嬢はどうしたい?」
「……魔王ルシード様がどなたを面白いと言ったか分かりませんが、アーモン様は王命に従っただけ。学園も、アルレス殿下とテーミス殿下のお陰で被害はありませんので、二度と攻撃をしない、と約束していただければ、私から望むものはありません」
膝の上で気持ち良さそうに眠るグリフォンを撫でながら、ミルフィリアはにこっとアーモンに微笑んだ。
「トーラス侯爵令嬢って言うだ。俺、あんたが命令するなら死ぬけど」
「アーモン様。私は、アーモン様に死んで欲しいなんて思ってません。できればお友達になりたいのです」
アーモンの真っ直ぐな視線に臆する事なく見詰め、拘束魔法を解きながら願いを口にした。
「それって命令?」
「いいえ。強いて言うなら、希望ですね」
ミルフィリアの持つ、柔らかな気配にアーモンは首を捻っていたが
「友達って何すんだ?」
素朴な疑問を口にした。
「一緒に勉強したり、お話ししながらお茶を飲んだり、同性でしたらお買い物にも行きますね」
「それだけ?」
「相手が困っていたら、一緒に解決策を考え、苦しんでいたら側に居ます」
ミルフィリアが語る、友達の姿にアーモンはクスクス笑った。
「それって、偽善だよね」
アルレスの眉がピクッと動いたが、ミルフィリアはまた微笑んだ。
「そう取る方も居ますが、私は友人には誠実でありたい」
揺るぎない、強い意志が込められた言葉にアーモンは大きなため息をついた。
「負けた。完全に俺の負けだ」
何を争っていたのかミルフィリアは理解出来なかったが、髪をかきあげ、吹っ切れた顔で笑うアーモンはアルレスを見た。
「あんたが、トーラス侯爵令嬢の婚約者?」
アーモンの赤い目が、値踏みをするようにギラっと光る。
「兄、ゼウリスがトーラス侯爵令嬢の婚約者だ」
アルレスも赤い目をギラっと光らせ、胸を張って宣言した。
「チェッ、あんたなら奪い取れそうだったけど、ルシード様がゼウリスって王子は、俺達じゃ歯が立たないって仰ってたから諦めるか」
アーモンの言葉に、クロイヤス王とアルレスはため息を吐く。
「我が子ながら、ゼウリスは魔族にも恐れられるとはな」
「兄上と敵対しなくて、本当に良かったと思います」
「私も、アルレスと敵対しなくて良かった、と思ってます」
突然、会話に割り込んで来たゼウリスをアーモンがしげしげと見た。
淡い金髪に水色の瞳の、魔族でも滅多にお目に掛かれないほどの美貌の青年。
「ルシード様が君達は面白いって言ってたけど、凄いな。背中がゾクゾクする程強そうだ」
「褒めて頂けて光栄です。魔王ルシード様の側近、アーモン・レズル大公爵」
さらりとゼウリスは、アーモンの正式名称を口にした。
アーモンは魔王ルシードの2人いる側近の1人。
もう1人はメフレス・パズス大公爵と言い、この3人が全魔族を支配している。
それ程の実力者を前にしても、ゼウリスは謙る態度を見せない。
「で、俺に何をさせるつもりだ?」
「ミルフィリアの友人になって頂けたら、と思ってます」
ゼウリスの目が笑っていない。
「ふーん。まっ、良いぜ。トーラス侯爵令嬢の魔力は心地良い」
「その様ですね。警戒心の強いグリフォンが腹を見せて寝る姿を見るとは思いませんでしたよ」
2人の視線が、ミルフィリアの膝で腹を見せてぐっすり寝ているグリフォンに注がれていた。
「クロイヤス陛下、この子はどうなりますか?」
ミルフィリアが心配そうにグリフォンを見てから、クロイヤス王に顔を向けた。
「グリフォンは聖獣でもあるから、王家で保護するのが良いだろう」
魔族の国に戻す事も考えられるが、これ程人に懐いたグリフォンを無理矢理戻すのも忍びない。
「それなら、私が預かります。私が世話をすれば、ミルフィリアも会いに来やすいだろ」
ゼウリスの提案にミルフィリアは満面の笑みを浮かべ、何度も頷いた。
アーモンは、呆然とする王宮の魔術師達では封じ切れない、と判断され水晶球から出されたが、ミルフィリアの魔力で拘束されたままクロイヤス王の前に引き出された。
ミルフィリアの魔力に拘束されているのに床に座り、あぐらをかいて悪びれないアーモンの言い分にクロイヤス王は頭を抱えそうになるが、魔族の最高実力者の1人であるアーモンを完璧に封じるミルフィリアの力に、内心驚愕していた。
「それで、どうするつもりだ」
「彼女になら殺されたって文句は言わねーし、ルシード様も納得するぞ。強い奴が正義だからな」
魔王ルシードの側近だけあって、魔力は強いし、少年の様な姿だが生きてきた年数はここに居る誰よりも長いだろう。
魔力の強さが容姿と寿命に反映される魔族。
少し逆立った緑の髪に赤い目のアーモンは、桁外れの美貌の持ち主だ。
それ故、力が全ての魔族らしい返事に、クロイヤス王がミルフィリアを見た。
「トーラス侯爵令嬢はどうしたい?」
「……魔王ルシード様がどなたを面白いと言ったか分かりませんが、アーモン様は王命に従っただけ。学園も、アルレス殿下とテーミス殿下のお陰で被害はありませんので、二度と攻撃をしない、と約束していただければ、私から望むものはありません」
膝の上で気持ち良さそうに眠るグリフォンを撫でながら、ミルフィリアはにこっとアーモンに微笑んだ。
「トーラス侯爵令嬢って言うだ。俺、あんたが命令するなら死ぬけど」
「アーモン様。私は、アーモン様に死んで欲しいなんて思ってません。できればお友達になりたいのです」
アーモンの真っ直ぐな視線に臆する事なく見詰め、拘束魔法を解きながら願いを口にした。
「それって命令?」
「いいえ。強いて言うなら、希望ですね」
ミルフィリアの持つ、柔らかな気配にアーモンは首を捻っていたが
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素朴な疑問を口にした。
「一緒に勉強したり、お話ししながらお茶を飲んだり、同性でしたらお買い物にも行きますね」
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「それって、偽善だよね」
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「そう取る方も居ますが、私は友人には誠実でありたい」
揺るぎない、強い意志が込められた言葉にアーモンは大きなため息をついた。
「負けた。完全に俺の負けだ」
何を争っていたのかミルフィリアは理解出来なかったが、髪をかきあげ、吹っ切れた顔で笑うアーモンはアルレスを見た。
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「それなら、私が預かります。私が世話をすれば、ミルフィリアも会いに来やすいだろ」
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