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厄介な束縛の対処法。
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「ゼウリス第一王子殿下、アルレス第二王子殿下にご挨拶申し上げます」
数日後、学園の休日に2人の元へ父親と訪れたミルフィリアが指先まで美しいカーテシーをすると、ゼウリスが優しく微笑んだ。
「ミルフィリアのカーテシーは、いつ見ても綺麗だね。さぁ、楽にして」
オルセウスとミルフィリアは優雅に顔を上げ、2人の前に進んだ。
「で、ミルフィリアは何故、アルレスに会いに?」
ゼウリスの言葉に、ミルフィリアはやはり、アルレスの頭の上に視線を向けながら口を開いた。
「アルレス殿下、殿下に何方かが傀儡の魔術を掛けています」
傀儡の魔術。
ゼウリスが眉を顰めた。
聖魔力を使える者の持つ力の一つだが、病人や怪我人のリハビリを手伝う時に使う魔術で、あまり強い魔術では無い。
「傀儡の魔術?俺は怪我も病気もしてないぞ」
アルレスの反応は、当然だが、オルセウスが扉の方を見ると、其処にはアリアンナが立っていた。
「ご無礼を」
そう言うと、サッと杖をアルレスに向けた。
「立って、微動だにせず、開国時の歴史を話しなさい」
なんの事だ、とアルレスがギョッとした顔でアリアンナを見ていたが、突然立ち上がり歴史書の一節を喋り始めた。
「これが、傀儡の魔術の応用で出来る事です」
アリアンナが杖を下げると、糸が切れた人形のように、アルレスはソファに座り込んだ。
「何という、恐ろしい使い方だ」
ゼウリスも驚きを隠せない顔で、ぐったりしているアルレスを見た。
「漸く分かった。このせいで……」
消した過去の事を口にしそうになったが、アルレスは言葉を濁し、俯いてしまった。
「こんな厄介な魔術を使うとは……。解除方法はないのか?」
ゼウリスが心配そうな顔でアルレスを見れば
「厄介ですが、元々この魔術は弱いので、掛けられている、と自覚すれば解除可能です」
アリアンナのはっきりとした、言葉に漸くアルレスが顔を上げた。
「ならば、これから掛けられても、俺がまたかよって思えば解けるんだな」
「はい。試しに、もう一度掛けてみましょうか?」
アリアンナが杖を持ち、同じ言葉を口にすると、アルレスが立ち上がったが
「またかよ」
と、呟くとフッと力が抜け、アルレスはゆっくりとソファに座った。
「これは助かる。トーラス侯爵令嬢、聖女アリアンナ様、助言に感謝する」
アルレスが安堵した顔でミルフィリア達に礼を言うと、ミルフィリアははんなりと微笑んだ。
「ご歓談中申し訳ありません。王妃様がトーラス侯爵令嬢をお呼びです」
話が落ち着いた時、侍従が申し訳なさそうな顔でゼウリスを見た。
「母上のミルフィリア好きには、困ったものだ」
ゼウリスの婚約者であるミルフィリアが王宮に来ると、王妃セレーネはゼウリスを差し置いて、すぐにミルフィリアとお茶をしたがるのだ。
「王子妃の教育がほぼ終わったので、テーミス殿下を交え、女性同士の交流を深めるつもりなのでしょう」
トーラス侯爵の言っている事は正しいが、ゼウリスにしてみれば、少ない婚約者との逢瀬の時間まで削るなんて、と思う事も多々ある。
「セレーネ王妃様をお待たせするのは良くないね。ミルフィリア、行きなさい」
トーラス侯爵に言葉にミルフィリアは優雅にカーテシーをして、侍従と共に部屋を出た。
数日後、学園の休日に2人の元へ父親と訪れたミルフィリアが指先まで美しいカーテシーをすると、ゼウリスが優しく微笑んだ。
「ミルフィリアのカーテシーは、いつ見ても綺麗だね。さぁ、楽にして」
オルセウスとミルフィリアは優雅に顔を上げ、2人の前に進んだ。
「で、ミルフィリアは何故、アルレスに会いに?」
ゼウリスの言葉に、ミルフィリアはやはり、アルレスの頭の上に視線を向けながら口を開いた。
「アルレス殿下、殿下に何方かが傀儡の魔術を掛けています」
傀儡の魔術。
ゼウリスが眉を顰めた。
聖魔力を使える者の持つ力の一つだが、病人や怪我人のリハビリを手伝う時に使う魔術で、あまり強い魔術では無い。
「傀儡の魔術?俺は怪我も病気もしてないぞ」
アルレスの反応は、当然だが、オルセウスが扉の方を見ると、其処にはアリアンナが立っていた。
「ご無礼を」
そう言うと、サッと杖をアルレスに向けた。
「立って、微動だにせず、開国時の歴史を話しなさい」
なんの事だ、とアルレスがギョッとした顔でアリアンナを見ていたが、突然立ち上がり歴史書の一節を喋り始めた。
「これが、傀儡の魔術の応用で出来る事です」
アリアンナが杖を下げると、糸が切れた人形のように、アルレスはソファに座り込んだ。
「何という、恐ろしい使い方だ」
ゼウリスも驚きを隠せない顔で、ぐったりしているアルレスを見た。
「漸く分かった。このせいで……」
消した過去の事を口にしそうになったが、アルレスは言葉を濁し、俯いてしまった。
「こんな厄介な魔術を使うとは……。解除方法はないのか?」
ゼウリスが心配そうな顔でアルレスを見れば
「厄介ですが、元々この魔術は弱いので、掛けられている、と自覚すれば解除可能です」
アリアンナのはっきりとした、言葉に漸くアルレスが顔を上げた。
「ならば、これから掛けられても、俺がまたかよって思えば解けるんだな」
「はい。試しに、もう一度掛けてみましょうか?」
アリアンナが杖を持ち、同じ言葉を口にすると、アルレスが立ち上がったが
「またかよ」
と、呟くとフッと力が抜け、アルレスはゆっくりとソファに座った。
「これは助かる。トーラス侯爵令嬢、聖女アリアンナ様、助言に感謝する」
アルレスが安堵した顔でミルフィリア達に礼を言うと、ミルフィリアははんなりと微笑んだ。
「ご歓談中申し訳ありません。王妃様がトーラス侯爵令嬢をお呼びです」
話が落ち着いた時、侍従が申し訳なさそうな顔でゼウリスを見た。
「母上のミルフィリア好きには、困ったものだ」
ゼウリスの婚約者であるミルフィリアが王宮に来ると、王妃セレーネはゼウリスを差し置いて、すぐにミルフィリアとお茶をしたがるのだ。
「王子妃の教育がほぼ終わったので、テーミス殿下を交え、女性同士の交流を深めるつもりなのでしょう」
トーラス侯爵の言っている事は正しいが、ゼウリスにしてみれば、少ない婚約者との逢瀬の時間まで削るなんて、と思う事も多々ある。
「セレーネ王妃様をお待たせするのは良くないね。ミルフィリア、行きなさい」
トーラス侯爵に言葉にミルフィリアは優雅にカーテシーをして、侍従と共に部屋を出た。
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