【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月

文字の大きさ
上 下
15 / 46

厄介な束縛の対処法。

しおりを挟む
「ゼウリス第一王子殿下、アルレス第二王子殿下にご挨拶申し上げます」

数日後、学園の休日に2人の元へ父親と訪れたミルフィリアが指先まで美しいカーテシーをすると、ゼウリスが優しく微笑んだ。

「ミルフィリアのカーテシーは、いつ見ても綺麗だね。さぁ、楽にして」

オルセウスとミルフィリアは優雅に顔を上げ、2人の前に進んだ。

「で、ミルフィリアは何故、アルレスに会いに?」

ゼウリスの言葉に、ミルフィリアはやはり、アルレスの頭の上に視線を向けながら口を開いた。

「アルレス殿下、殿下に何方かが傀儡の魔術を掛けています」

傀儡の魔術。
ゼウリスが眉を顰めた。
聖魔力を使える者の持つ力の一つだが、病人や怪我人のリハビリを手伝う時に使う魔術で、あまり強い魔術では無い。

「傀儡の魔術?俺は怪我も病気もしてないぞ」

アルレスの反応は、当然だが、オルセウスが扉の方を見ると、其処にはアリアンナが立っていた。

「ご無礼を」

そう言うと、サッと杖をアルレスに向けた。

「立って、微動だにせず、開国時の歴史を話しなさい」

なんの事だ、とアルレスがギョッとした顔でアリアンナを見ていたが、突然立ち上がり歴史書の一節を喋り始めた。

「これが、傀儡の魔術の応用で出来る事です」

アリアンナが杖を下げると、糸が切れた人形のように、アルレスはソファに座り込んだ。

「何という、恐ろしい使い方だ」

ゼウリスも驚きを隠せない顔で、ぐったりしているアルレスを見た。

「漸く分かった。このせいで……」

消した過去の事を口にしそうになったが、アルレスは言葉を濁し、俯いてしまった。

「こんな厄介な魔術を使うとは……。解除方法はないのか?」

ゼウリスが心配そうな顔でアルレスを見れば

「厄介ですが、元々この魔術は弱いので、掛けられている、と自覚すれば解除可能です」

アリアンナのはっきりとした、言葉に漸くアルレスが顔を上げた。

「ならば、これから掛けられても、俺がまたかよって思えば解けるんだな」
「はい。試しに、もう一度掛けてみましょうか?」

アリアンナが杖を持ち、同じ言葉を口にすると、アルレスが立ち上がったが

「またかよ」

と、呟くとフッと力が抜け、アルレスはゆっくりとソファに座った。

「これは助かる。トーラス侯爵令嬢、聖女アリアンナ様、助言に感謝する」

アルレスが安堵した顔でミルフィリア達に礼を言うと、ミルフィリアははんなりと微笑んだ。

「ご歓談中申し訳ありません。王妃様がトーラス侯爵令嬢をお呼びです」

話が落ち着いた時、侍従が申し訳なさそうな顔でゼウリスを見た。

「母上のミルフィリア好きには、困ったものだ」

ゼウリスの婚約者であるミルフィリアが王宮に来ると、王妃セレーネはゼウリスを差し置いて、すぐにミルフィリアとお茶をしたがるのだ。

「王子妃の教育がほぼ終わったので、テーミス殿下を交え、女性同士の交流を深めるつもりなのでしょう」

トーラス侯爵の言っている事は正しいが、ゼウリスにしてみれば、少ない婚約者との逢瀬の時間まで削るなんて、と思う事も多々ある。

「セレーネ王妃様をお待たせするのは良くないね。ミルフィリア、行きなさい」

トーラス侯爵に言葉にミルフィリアは優雅にカーテシーをして、侍従と共に部屋を出た。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました

神村 月子
恋愛
 貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。  彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。  「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。  登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。   ※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています

【完結】恋は、終わったのです

楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。 今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。 『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』 身長を追い越してしまった時からだろうか。  それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。 あるいは――あの子に出会った時からだろうか。 ――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています

綾森れん
恋愛
「リラ・プリマヴェーラ、お前と交わした婚約を破棄させてもらう!」 公爵家主催の夜会にて、リラ・プリマヴェーラ伯爵令嬢はグイード・ブライデン公爵令息から言い渡された。 「お前のような真面目くさった女はいらない!」 ギャンブルに財産を賭ける婚約者の姿に公爵家の将来を憂いたリラは、彼をいさめたのだが逆恨みされて婚約破棄されてしまったのだ。 リラとグイードの婚約は政略結婚であり、そこに愛はなかった。リラは今でも7歳のころ茶会で出会ったアルベルト王子の優しさと可愛らしさを覚えていた。しかしアルベルト王子はそのすぐあとに、毒殺されてしまった。 夜会で恥をさらし、居場所を失った彼女を救ったのは、美しい青年歌手アルカンジェロだった。 心優しいアルカンジェロに惹かれていくリラだが、彼は高い声を保つため、少年時代に残酷な手術を受けた「カストラート(去勢歌手)」と呼ばれる存在。教会は、子孫を残せない彼らに結婚を禁じていた。 禁断の恋に悩むリラのもとへ、父親が新たな婚約話をもってくる。相手の男性は親子ほども歳の離れた下級貴族で子だくさん。数年前に妻を亡くし、後妻に入ってくれる女性を探しているという、悪い条件の相手だった。 望まぬ婚姻を強いられ未来に希望を持てなくなったリラは、アルカンジェロと二人、教会の勢力が及ばない国外へ逃げ出す計画を立てる。 仮面舞踏会の夜、二人の愛は通じ合い、結ばれる。だがアルカンジェロが自身の秘密を打ち明けた。彼の正体は歌手などではなく、十年前に毒殺されたはずのアルベルト王子その人だった。 しかし再び、王権転覆を狙う暗殺者が迫りくる。 これは、愛し合うリラとアルベルト王子が二人で幸せをつかむまでの物語である。

【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」 婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からくなっていました。 婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。 ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/01  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2022/02/15  小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位 2022/02/12  完結 2021/11/30  小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位 2021/11/29  アルファポリス HOT2位 2021/12/03  カクヨム 恋愛(週間)6位

前世の記憶がある伯爵令嬢は、妹に籠絡される王太子からの婚約破棄追放を覚悟して体を鍛える。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

【完結】断罪後の悪役令嬢は、精霊たちと生きていきます!

らんか
恋愛
 あれ?    何で私が悪役令嬢に転生してるの?  えっ!   しかも、断罪後に思い出したって、私の人生、すでに終わってるじゃん!  国外追放かぁ。  娼館送りや、公開処刑とかじゃなくて良かったけど、これからどうしよう……。  そう思ってた私の前に精霊達が現れて……。  愛し子って、私が!?  普通はヒロインの役目じゃないの!?  

処理中です...