【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月

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違う未来への苛立ち。

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「なんで、今までと違うのよ」

自室でエリスは今までと違う状況に苛立って、枕に八つ当たりをしていた。

何度も繰り返している時間帯なのに、今回はまるで違う。

今まではテーミスと言う存在は居なかったし、属性判定の時も自分が聖属性の判定を受けると学園全体がどよめき、知らせを受けた教会の枢機卿達が恭しくエリスの元を訪れ新聖女と認め、皆がチヤホヤしてくれたのに。

「光属性って何?そんなもん、前には無かったわ」

魔力の基準さえ変わっているようだ。
何より違うのは、アルレスがまるで自分に興味を示さない。

目が合ったからちゃんと魅了したのに側に寄っても来なかった。

「それにあの悪役令嬢のミルフィリアがあんなに綺麗だなんて、詐欺だわ」

ずっと見てきたミルフィリアは、銀髪をドリルのように縦巻きにし、きつい化粧のいかにも、といった感じだったのに。

今の彼女は、清楚で可憐な美少女。
しかもゲームのメインヒーローである第二王子のアルレスの婚約者では無く、今まで名前しか出てこなかった、第一王子ゼウリスの婚約者に収まっているのが更に気に入らない。

これだけでもイライラするのに、今までと違う所はまだまだ沢山あった。

アルレスの側近であった宰相令息のアドン、護衛官のノドス、トーラス侯爵令息のバーニスが居ない。

いや、居ることはいるのだ。
だが、あきらかに今までと違う。

宰相令息のアドンは今回、宰相補佐官のアシスタントの息子で、護衛官のノドスは学園の護衛官の小間使い。

トーラス侯爵令息、バーニスは名前も知らない男爵家の婿養子候補になっている。

「なんでこんなに違うのよ」

同じ人間なのに、覇気のなさや身なりの貧しさのせいか、キラキラした魅力的な要素がまるで無い。

「あんな、煤けたの侍らせても、意味無いじゃん」

自分はキラキラした男達を侍らせ、誰よりも贅沢で、高い場所から周りを見下したいのに。

頼みのアルレスは、まるで自分に興味を持たないため、魅了するが自分に溺れてこない。
爪を噛みながら考えるが、何一つ思い付かない。

「……あの杖が無いからアルレスを魅了出来ないのかも」

ゲームでも杖を光らせれば、どんな魔獣も簡単に倒せた。

「杖を取り返せば、ゲーム通りになる筈ね」

ニタニタ笑うと、そばに居るメイドに聖女の杖を取ってこい、と命令した。
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