[完結]悪役令嬢様。ヒロインなんかしたくないので暗躍します

紅月

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盛大に自滅してもらいましょう

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迷惑な生徒達が居なくなり、学園は卒業式を前に少々慌ただしさに溢れていたが概ね穏やかだ。

何処かのバカ殿下と似非ヒロインは今だに冤罪の噂を蒔こうとしているが、其方は徹底的に潰している。

ラティナも自身の髪の色を元に戻し、エメリアの侍女のように側にいた。



そしてとうとう卒業式を迎えた。
ユーシス殿下だけで無く、バーナード殿下達も卒業する筈だったが、諸事情によりバーナード殿下以外は既に学園に居なかった者として扱われている。

式の後は卒業生や在学生、そしてその親達が集まるパーティーがあり、レナード王太子殿下が列席される事を聞き、皆着飾って出席する事になっている。

「エメリア・バロー。出て来い」

バーナード殿下の大声に卒業を祝う、賑やかだったパーティー会場は水をうったかのように静まり返った。

「お呼びですか?」

ユーシス殿下の瞳と同じ美しい青いドレスのエメリア様が人混みから姿を見せると、バーナード殿下は更に怒鳴った。

「こんなに可愛いアズサを嫉妬で虐めるお前の様な邪悪な女との婚約は、今ここで破棄する」

青筋を立てて、似非ヒロインであるアズサを腕にぶら下げ、失礼、腕を組みながらバーナード殿下が叫ぶ声だけが、会場中にキンキンと響いている。

「やっと婚約破棄をした様ですね」

有りもしない言い掛かりを叫ぶ、無様な醜態を晒すバーナードをラティナが壁際で冷ややかに見ていた。

エメリアから聞いたゲームでは、攻略者達が挙って威圧する様にエメリアを断罪する為に並ぶはずだったが、実際の現場ではバーナードは1人で事に及んだ。

「君のお膳立てだろうに」

呆れた、と言いたげな隣に立つ者の声にラティナはそっと騒いでいるバーナードから視線を外した。

「他の方は知りませんが、回避や軌道修正の機会は沢山ありましたが、この結果を選んだのはバーナード殿下自身です。ご自分の気持ちに気が付いて踏み止まれば、未来は違うものになってたはずです」

本当にバーナード殿下は愚かだ。
他人の私ですら気が付いたのに、自分の気持ちに気が付いていないんだから。

「何処で気が付いた?」

ラウル宰相の言葉に視線を下げ、囁く様に話し始めた。

「わりと早めにです。バーナード殿下の、エメリア様への異常な執着心を感じましたので。あれ程、邪険にし、あの女を侍らせて居るのに婚約を破棄しようとしなかった」

本当にそうだ。
あれ程馬鹿さ加減を晒している上、傍若無人に振る舞い、エメリア様を貶しながらバーナード殿下はけっしてエメリア様との婚約破棄を口にしなかった。
それどころか、いつも罵倒しながらも俺の婚約者、と何度も言っていた。

卒業後の公爵家への婿入りに固執しているのか、と考えたがそれだけが理由とは思えない態度。
エメリア様がバーナード殿下を避け、ユーシス殿下と適切な距離を取りながら仲を深めるにつれ、見当違いな事に激怒する様は間違いなく嫉妬からだろう、と推測すれば答えは出た。

バーナード殿下の本心を知らない、あざとい似非ヒロイン、アズサは表面上の暴挙や罵倒をバーナード殿下の後ろでクスクス笑いながら見てるくせして、人目のあるところでは

「嫉妬したエメリア様がアタシを虐めるんです」

なんて嘘を吐く。
男達が好きそうな、華奢で庇護欲を唆る上目遣い。話で聞いたゲームのヒロインそのものだ。

まぁ、彼女はそれにハニートラップも乗っけていたっけ。
あのあざとさとハニートラップに骨抜きになった男達が気の毒?だ。
なにせ、既に揃いも揃って煌びやかな立場から強制退去させられている。

彼らの思考回路は完全に壊れている。
エメリア様曰く、頭がお花畑になった奴らに対して学園内でエメリア様がどう頑張ったって、アズサの言葉しか攻略対象の男達は信じていなかった。

他の方達は誰一人アズサの言葉を信じていないし、味方は一人も居ないと言っても過言じゃないのに。

既に自業自得で没落した男達に、この陳腐な状況をひっくり返せる力は無い。

「それに自分の黒歴史を見せられている気がして、正直気分が悪かったですが、先手は打ちやすかったですね」

前世の記憶を取り戻してから速攻軌道修正して本当に良かった。

「くっ。君の黒歴史ねぇ。すごく気になるが、あの男爵令嬢の方はこちらで処分するが、殿下の方は……」
「ユーシス第二王子殿下にお任せします。これ以上エメリア様を苦しめたくありません」

あの似非ヒロインが何をしたかなんて知りたくもないが、エメリア様を溺愛しているユーシス殿下なら徹底的に処分してもらえるだろう。

さて、バーナード殿下は漸く婚約破棄を宣言したのですから、盛大に自滅していただこう。
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