［完結］悪役令嬢様。ヒロインなんかしたくないので暗躍します

みんな忙しい夏でした

「ラウル、この情報の裏を取ってくれ」

レナードに呼ばれて彼の執務室に入るとカインから渡された書類にラウルの眉が顰められた。

それでもパラパラと確認し、ラウルはちらっと自分の机の上にある他の書類を思い出した。

学園が夏休みになってから次々と舞い込む情報はどれを取っても放置する訳には行かないものばかり。
これも優先的に調べないといけない類だ。

「馬だけでなく賄賂までとは、呆れて手加減を忘れそうです」
「違法薬物で捕まった子爵が刑の軽減を望んでいるが、そちらはどうなった？」

レナードの元にカインが付いてから直ぐにもたらされた事案の進捗状況を聞かれる。

「ある貴族の罪状を証言する事で死罪だけは回避しましたが、死ぬまで強制労働の刑は確定です」

ラウルはバロー家のパーティー以降、目が回るほど忙しくなり、余計な事をする暇が無くなった。

「後、学会からの報告もあるそうだ」

レナードですらゆっくりお茶を飲む時間もままならないのだから、宰相の忙しさはあり得ないほどだろう。

「家に帰ってゆっくり寝たいですよ」

そう言いながらラウルは書類を持って自分の執務室へ戻って行く。

「王太子殿下。あれ位ならば他の官僚に任せても良いのでは無いでしょうか」

流石にラウルの忙しさを見て来ているカインがレナードに意見を言うと

「ルールを守ることは大切だから、ね」

と、笑った。