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兄妹で暗躍します
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「おかえり。胃は大丈夫かな?」
暢気な声でカイン兄様が書類に囲まれながら私に声を掛けて来た。
「お兄様、いつ職場が変わったのですか?」
私の棘のある言葉にカイン兄様が首を傾げた。
「お兄様がレナード王太子殿下の補佐官になったなんて初めて聞きました」
ラウル伯爵は子飼い、と言ってたけどカイン兄様はちゃんと補佐官としてレナード王太子殿下の下で働いてる事くらいすぐに分かるわ。
「ああ、その事。先週、突然にね」
なんでもないことの様に言う兄に一瞬拳を握ったが、エメリア様と親しくなったのも先週だから強く言えない。
「エメリア様の為にバロー公爵家が動こうとしているのです」
バロー家が独立も視野に入れている事は言えないが、エメリア様が婚約破棄を考えている事は既に話してある。
「エメリア様の事も考え、レナード王太子殿下についたんだ。レナード王太子殿下がユーシス第二王子殿下に味方すれば、きっとエメリア様の婚約破棄がすんなり行くだろ」
「お兄様も、ユーシス第二王子殿下がエメリア様の婚約者になる方が国の為になる、とお考えで?」
「勿論。バーナード第三王子殿下は王族としても、公爵配としても失格だからね」
その言葉だけで、どれだけバーナードが不良物件の人物か分かる気がした。
エメリア様は彼がゲームのメインヒーローだ、と言っていたが、あれがメインなら私は絶対やらない。
「では、お兄様も協力して下さるのね」
「勿論、私はラティの味方だよ」
甘い笑顔のカイン兄様に、私は安心した様に笑って見せた。
手広く商会を運営していれば、玉石混合の様々な情報が入ってくる。
ラティナが商会の手伝いをする様になってから情報の精査が格段に上がり、不利益な人物の特定や不正行為を早期に排除出来たおかげで商会の力は更に上がっていた。
ラティナの淑女教育が終わってからの半年で、この国の商会の力関係は密かにだがかなり変わっていた。
「カイン坊ちゃま、ラティナお嬢様」
書類に囲まれていたカインとラティナが呼ばれて顔を上げた。
「トマスさん。何かあったの?」
「以前から警戒していた違法薬物の売買を取り仕切っていた黒幕が尻尾を出しました」
商会のまとめ役を兼ねている古参の使用人がバタバタと部屋に入って来て、早口で報告をした。
「お兄様。レナード王太子殿下のお手柄になさってはいかが?」
ラティナの提案にカインはキョトンとした顔の後、ふわりと笑った。
「ラティは優しいね。ご褒美に苺のケーキを買ってこようか」
ラティナは、兄の王太子補佐官の就任祝いに、手柄を贈るつもりの様だ。
「ケーキは魅力的ですが、今はエメリア様へのお力添えをお願いします」
まだ14歳だと言うのに、ラティナの人身掌握の力は老齢な策士の様だ。
「ラティは無欲だね」
そう言い残して、カインはトマスと一緒に部屋を出て行った。
当然、尻尾を掴まれた悪党はもがく間も無く黒幕の貴族から末端の破落戸まで逮捕され、迅速に対応したレナード王太子の名が、王宮内で賛辞の言葉と共に囁かれるようになった。
暢気な声でカイン兄様が書類に囲まれながら私に声を掛けて来た。
「お兄様、いつ職場が変わったのですか?」
私の棘のある言葉にカイン兄様が首を傾げた。
「お兄様がレナード王太子殿下の補佐官になったなんて初めて聞きました」
ラウル伯爵は子飼い、と言ってたけどカイン兄様はちゃんと補佐官としてレナード王太子殿下の下で働いてる事くらいすぐに分かるわ。
「ああ、その事。先週、突然にね」
なんでもないことの様に言う兄に一瞬拳を握ったが、エメリア様と親しくなったのも先週だから強く言えない。
「エメリア様の為にバロー公爵家が動こうとしているのです」
バロー家が独立も視野に入れている事は言えないが、エメリア様が婚約破棄を考えている事は既に話してある。
「エメリア様の事も考え、レナード王太子殿下についたんだ。レナード王太子殿下がユーシス第二王子殿下に味方すれば、きっとエメリア様の婚約破棄がすんなり行くだろ」
「お兄様も、ユーシス第二王子殿下がエメリア様の婚約者になる方が国の為になる、とお考えで?」
「勿論。バーナード第三王子殿下は王族としても、公爵配としても失格だからね」
その言葉だけで、どれだけバーナードが不良物件の人物か分かる気がした。
エメリア様は彼がゲームのメインヒーローだ、と言っていたが、あれがメインなら私は絶対やらない。
「では、お兄様も協力して下さるのね」
「勿論、私はラティの味方だよ」
甘い笑顔のカイン兄様に、私は安心した様に笑って見せた。
手広く商会を運営していれば、玉石混合の様々な情報が入ってくる。
ラティナが商会の手伝いをする様になってから情報の精査が格段に上がり、不利益な人物の特定や不正行為を早期に排除出来たおかげで商会の力は更に上がっていた。
ラティナの淑女教育が終わってからの半年で、この国の商会の力関係は密かにだがかなり変わっていた。
「カイン坊ちゃま、ラティナお嬢様」
書類に囲まれていたカインとラティナが呼ばれて顔を上げた。
「トマスさん。何かあったの?」
「以前から警戒していた違法薬物の売買を取り仕切っていた黒幕が尻尾を出しました」
商会のまとめ役を兼ねている古参の使用人がバタバタと部屋に入って来て、早口で報告をした。
「お兄様。レナード王太子殿下のお手柄になさってはいかが?」
ラティナの提案にカインはキョトンとした顔の後、ふわりと笑った。
「ラティは優しいね。ご褒美に苺のケーキを買ってこようか」
ラティナは、兄の王太子補佐官の就任祝いに、手柄を贈るつもりの様だ。
「ケーキは魅力的ですが、今はエメリア様へのお力添えをお願いします」
まだ14歳だと言うのに、ラティナの人身掌握の力は老齢な策士の様だ。
「ラティは無欲だね」
そう言い残して、カインはトマスと一緒に部屋を出て行った。
当然、尻尾を掴まれた悪党はもがく間も無く黒幕の貴族から末端の破落戸まで逮捕され、迅速に対応したレナード王太子の名が、王宮内で賛辞の言葉と共に囁かれるようになった。
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