[完結]悪役令嬢様。ヒロインなんかしたくないので暗躍します

紅月

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大人達は思案することが多すぎる

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「大胆な事を考える令嬢だ。で、レナード王太子殿下は変われるか?」

ラティナが退出した後、バロー公爵はラウル伯爵に問い掛けた。

「変わらなければ自分の未来が潰える、と理解したからロレンス男爵令息を子飼いにした、と考えられます」

淡々と語るラウル伯爵をバロー公爵は無言で見ていたが、ふぅ、と息を漏らし頷いた。

「ロレンス男爵令息も有能な青年だ。どれ、少し様子を見るか」
「それならば、ロレンス男爵令嬢を私に下さい」

ラウル伯爵の言葉に、バロー公爵が目を見開いた。

「誤解しないでください。彼女の能力が欲しいだけです。一介の男爵令嬢とは思えない思考。手元で育てたいだけですよ」

冷ややかな笑みを浮かべながら、ラティナが退出した扉を見るラウル伯爵に

「ミイラ取りがミイラになる、と言う言葉があるぞ」

バロー公爵が呆れた様に言った。

「面白い言葉です。ですが、子供など興味はありませんし、カイン・ロレンス男爵令息など、レナード王太子殿下の子飼いで無ければ、ものの数ではありませんから」

ラウル伯爵が鼻で笑いながら、レナード王太子殿下の子飼いを連れて部屋を出て行った。



「誤魔化すのに気を揉みました」
「手間を掛けて済まない」

レナードが素直に非を認めると、ラウルが子飼いの青年を拘束していた縄から手を離した。

「バロー公爵閣下は様子を見よう、と仰っています」
「ありがたい。今、バロー公爵家に独立されては国が乱れる」
「御意」

詰めが甘いが、レナードは王太子としての責務を果たそうと努力している。
残念なのは強力な後ろ盾がない事だ。

ラウルから見れば、バロー公爵が王太子の後ろ盾になってくれれば、国は安定する。

「父上がバーナード達を厄介払いしたがっているのは知っていたが、まさかバロー家に押し付けるとは思わなかった」

エメリアは公爵家の一人娘。
他人に家を継がせる事を嫌がったバロー公爵の意向から婿を取ることが決まっているが、家柄や血筋の良さから後継者が居れば、王太子との婚約も考えられる高貴な存在。

今回の婚約もエメリアが望んだから結ばれた、と聞いていた。
だから、あの家を邪魔になったバーナード親子の厄介払いに使うとは思わなかった。

「バロー公爵家に凄まじい参謀が就きそうでしたので」

ラウルが冷ややかに笑う。

ラティナ・ロレンス男爵令嬢。
バロー公爵が思う以上の有能な子供。
今のうちに手の中に入れておけば、きっと使い勝手の良い子飼いになるだろう。
そう、ラウルは打算的にラティナを見ていた。
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