8 / 38
崖っぷちの王太子様
しおりを挟む
開いた扉の前には身を屈め、鍵穴から中を覗こうとしている男がおり、男が何かを言う前にラティナが襟首を掴むと部屋の中に引き摺り込んだ。
「いくら崖っぷちでもやっていい事じゃ無いですよ。もう少し上手く対処して下さい」
完全に呆れているラティナだが、やっている事は油断していたとは言え、大の大人の男を片手で引き摺るのだから、並の令嬢では無い。
「誰だお前は」
呆れるラティナと驚くバロー公爵の姿にラウル伯爵がため息をついた。
「彼はレナード王太子殿下の子飼いです」
ラウル伯爵の言葉にバロー公爵もため息を吐く。
「王太子殿下は何故?」
「崖っぷちですからね」
ラティナの言葉にバロー公爵とラティナに襟首を掴まれている男が驚いた顔をした。
「崖っぷち、とは上手い表現ですね」
ラウル伯爵は、妙に納得した顔で頷いている。
レナード王太子殿下。
ユーシスとよく似た明るい金髪に蒼い瞳をした、少し華奢な青年。
一昨年お亡くなりになった王妃の息子で、20歳の時王太子となったが、亡くなった母親が伯爵家なので強い後ろ盾が無く王家の中でも立場が弱い。
執政者としては若干詰めが甘いが、有能で勤勉な方だと聞いている。
「きっとバロー公爵閣下のもとにラウル伯爵が訪問した、と聞いて慌てたのでしょう」
宰相のスケジュールなんて分刻みの忙しさだろうから、バロー公爵家に来る時間を捻出する為、かなり調整が必要だ。
「ま、王太子殿下の子飼いにロレンス男爵令嬢の兄がいるので、そちらから情報が漏れたのでしょう」
「兄が!」
ラティナが驚いた顔で、ラウル伯爵を見た。途端にラウル伯爵が笑い出した。
「ロレンス男爵令嬢でも把握していない事があるんですね」
爆笑するんじゃない。
私は神様じゃ無いんだから、物事を全部把握なんて無理ですって。
「レナード王太子殿下も人を見る目はしっかりされているようだ」
バロー公爵閣下が頷いているが、王太子の子飼いに男爵家の者を使うのって大変なのか?
「愚か者は爵位でしか人を見ないものが多い。その点、レナード王太子殿下は大丈夫のようですね」
ラウル伯爵も満足げに頷いている。
良く分からないけど、お兄様が重用されるのは良い事です。
「それで、ロレンス男爵令嬢はこれからどうするつもりですか?」
「このままエメリア様のお側で、バーナード殿下の暴挙からお守りしようかと思っております」
ラウル伯爵の質問に淡々と答えたが、ラウル伯爵が一瞬、ニヤッと笑ったのは気の所為か?
「そうか。では、彼の身柄は私に預けてくれ」
冷や汗を流している覗き見君は、縋るように私を見るけど、このメンバーで助けてるなんて出来ませんって。
私だって緊張で胃が痛いのに。
「では、私はこの辺でお暇を。バロー公爵閣下、出過ぎた事を口にし、申し訳ありません」
「いや。良い提案だった。ロレンス男爵令嬢、君には期待しているよ」
覗き見君をラウル伯爵に渡し、謝罪の言葉を口にすれば、バロー公爵閣下は機嫌良く顔は笑っているが、目は笑ってなかった。
怒らせてしまったかな?
「いくら崖っぷちでもやっていい事じゃ無いですよ。もう少し上手く対処して下さい」
完全に呆れているラティナだが、やっている事は油断していたとは言え、大の大人の男を片手で引き摺るのだから、並の令嬢では無い。
「誰だお前は」
呆れるラティナと驚くバロー公爵の姿にラウル伯爵がため息をついた。
「彼はレナード王太子殿下の子飼いです」
ラウル伯爵の言葉にバロー公爵もため息を吐く。
「王太子殿下は何故?」
「崖っぷちですからね」
ラティナの言葉にバロー公爵とラティナに襟首を掴まれている男が驚いた顔をした。
「崖っぷち、とは上手い表現ですね」
ラウル伯爵は、妙に納得した顔で頷いている。
レナード王太子殿下。
ユーシスとよく似た明るい金髪に蒼い瞳をした、少し華奢な青年。
一昨年お亡くなりになった王妃の息子で、20歳の時王太子となったが、亡くなった母親が伯爵家なので強い後ろ盾が無く王家の中でも立場が弱い。
執政者としては若干詰めが甘いが、有能で勤勉な方だと聞いている。
「きっとバロー公爵閣下のもとにラウル伯爵が訪問した、と聞いて慌てたのでしょう」
宰相のスケジュールなんて分刻みの忙しさだろうから、バロー公爵家に来る時間を捻出する為、かなり調整が必要だ。
「ま、王太子殿下の子飼いにロレンス男爵令嬢の兄がいるので、そちらから情報が漏れたのでしょう」
「兄が!」
ラティナが驚いた顔で、ラウル伯爵を見た。途端にラウル伯爵が笑い出した。
「ロレンス男爵令嬢でも把握していない事があるんですね」
爆笑するんじゃない。
私は神様じゃ無いんだから、物事を全部把握なんて無理ですって。
「レナード王太子殿下も人を見る目はしっかりされているようだ」
バロー公爵閣下が頷いているが、王太子の子飼いに男爵家の者を使うのって大変なのか?
「愚か者は爵位でしか人を見ないものが多い。その点、レナード王太子殿下は大丈夫のようですね」
ラウル伯爵も満足げに頷いている。
良く分からないけど、お兄様が重用されるのは良い事です。
「それで、ロレンス男爵令嬢はこれからどうするつもりですか?」
「このままエメリア様のお側で、バーナード殿下の暴挙からお守りしようかと思っております」
ラウル伯爵の質問に淡々と答えたが、ラウル伯爵が一瞬、ニヤッと笑ったのは気の所為か?
「そうか。では、彼の身柄は私に預けてくれ」
冷や汗を流している覗き見君は、縋るように私を見るけど、このメンバーで助けてるなんて出来ませんって。
私だって緊張で胃が痛いのに。
「では、私はこの辺でお暇を。バロー公爵閣下、出過ぎた事を口にし、申し訳ありません」
「いや。良い提案だった。ロレンス男爵令嬢、君には期待しているよ」
覗き見君をラウル伯爵に渡し、謝罪の言葉を口にすれば、バロー公爵閣下は機嫌良く顔は笑っているが、目は笑ってなかった。
怒らせてしまったかな?
157
お気に入りに追加
236
あなたにおすすめの小説

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~
八重
恋愛
【全32話+番外編】
「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」
伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。
ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。
しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。
そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。
マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。
※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。

遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる