[完結]悪役令嬢様。ヒロインなんかしたくないので暗躍します

紅月

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バロー公爵家はまるでヴェル◯イユ宮殿

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「では、バロー公爵閣下の面会のお許しが出ましたら、伺います」

そう言って胃の痛さを隠してラティナは頭を下げた。

政略結婚での地位向上をそれ程必要としていないバロー公爵閣下の反応は未知数だが、一人娘の幸せを尊重してくれるなら面会の許可は結構早くに出るだろう、とラティナは考えていたが、まさか週の休日に迎えを寄越すとは考えていなかった。



「初めてお目に掛かります。私は……」
「ラティナ・ロレンス男爵令嬢。君のことは悪いが調べさせた。素晴らしい頭脳の持ち主で、娘の事を考えてくれる好ましい人物だ、と各方面から太鼓判を押されたよ」

広大な屋敷に唖然としながら招かれた客間は豪華で、高そうなソファに座る機嫌の良い、エメリアと同じ髪と瞳の色を持つ、ウィリアム・バロー公爵閣下の満面の笑みにラティナは若干引いた。

高位貴族が見知らぬ自分の事を調べる事は分かっていたが、此処まで好意的に迎えられるとは思わなかった。

そして、公爵の隣に立つ美貌の男性に視線を向けた。

「紹介が遅れた。彼はアルフレッド・ラウル伯爵だ」

艶やかな黒髪に瑠璃色の瞳をした30代位の、何処か冷ややかな空気を纏う紳士だが、彼の正体をラティナは知っている。

「初めてお目に掛かります。ラティナ・ロレンスと申します」

だからと言って知っている、とわざわざ言うつもりは無い。

「初めまして、ロレンス男爵令嬢。バロー公爵より君の提案を聞き、直接会いたくなって無理に同席を許して貰った」

この人が無理に、なんてあり得ない。
美貌の青年の正体は、知の宰相閣下。
モルディアナ王国の若き宰相。

優秀だが冷酷で温情の欠片も無く国の為の政策を進める方だ、と聞いている。

ラティナの提案を聞きバロー家の動きを知りたいと自ら足を運んだのだろう。

ラウル伯爵がラティナを値踏みするような目で見ていたが、ラティナが足音も立てずそっと扉のほうに寄ると、突然扉を開けた。
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