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ヒロインは男運が悪過ぎた様です

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「ミカリス様のお役に立てて良かったです」

久しぶりにマリアーナと顔を合わせたフローラが少し寂しげに笑った。

「それで、フローラはどうしたいの?」

マリアーナは静かにフローラを見ていた。言いたい事は山程あるけど、まずはフローラの意思を確認した方がいい、と思っている。

「私は、またマリアーナ様のメイドに戻れたら、と願ってます」

本気半分、虚勢半分だろう。
実父の逮捕に新たな男爵となった養母の心労を思えばフローラは養母の側に居たい筈だ。
マリアーナは自分の意見は言わず、フローラが本心を語れる様、少し首を傾げた。

「……私」

やっとフローラがポツリ、と言葉をこぼす。

「私、男は嫌いです」

そっちかぁ、とマリアーナは頭の中でため息を吐いた。

「男って、俺のものになれ、とか俺の言う事をきけ、とか逆らうなって言う癖に浮気はするし、別れる、って言ったら殴ったり泣きついたりストーカーしたりして……」

マリアーナが思わず眉間に指を当て、大きなため息を吐いた。

「前世ではろくでなしばかりだったのね」
「本当にクズばっかで」
「でも、ミカリスお兄様は……」

違う、と言おうとしたらフローラが前のめりになって、溜まっていたものを吐き出す様に喋り始めた。

「でも、ミー君は腹黒でおっかないけどクズじゃない上、ゲームより凄くクールでかっこいいし、イケメンだよ」

言葉が前世のものになってるが、マリアーナも前世持ち。此処は気にしないで兎に角聞こうと頷いた。

「ゲームではミー君、ちょっとやばい性癖だったけど、絶倫のユー君より激しく無かった」

その情報は知りたくなかった、とマリアーナは遠い目をしたが、ゲーム設定と現実をごちゃ混ぜにしないでおこうと気を引き締めた。

暫くフローラの話を聞いていたが、フッと疑問が頭をよぎる。

「フローラ、ミカリスお兄様は最初になんて言って貴女に協力を頼んだの?」
「えっ?デブリ男爵が犯罪に手を染めているから、だよ」
「その前に。多分、決定的な事を言っている筈よ」

ミカリスの話の手法を知っているマリアーナは、意識に残らない様にしながら決定的な事を言っている筈だ、と教えた。

「えっと。お茶を淹れるのが趣味?」
「違うは、もっと……」

マリアーナと2人で首を傾げながらフローラは一生懸命思い出そうとした。

「あ、簡単じゃないけど、私にしか出来ないって言ってた」

漸く実父だがクソ男爵に腹を立て過ぎて薄れていた記憶が蘇って来て、フローラが決定的な事を思い出した。

「フローラにしか出来ない事?」
「今回の事件に関われる様、結婚してくれって」

あの策士!と叫ばなかったマリアーナは偉い。



次で完結します。
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