【完結】断罪されなかった悪役令嬢ですが、その後が大変です

紅月

文字の大きさ
上 下
37 / 39

断罪出来なかったヒロインが手伝います

しおりを挟む
「やっとマリアーナ様の専属メイドになれました」

マリアーナがユリアスの婚約者になり、住まいをパール公爵家に移してすぐ、小麦色の髪をしたフローラがラリマー家に挨拶に来た。

「頑張っていたからね。おめでとう」

ラリマー家のメイド長の言葉にフローラが笑顔で頷くと、背後からクスクス笑う声がした。

「専属になったと言うことは、学園に復学する気はないのかい」
「はい。マリアーナ様のお側を離れるなんて嫌です」
「君は変わらないね。マリアーナ一筋で」

ミカリスの楽しげな声にフローラは照れながらもメイドらしく、綺麗なカーテシーをした。

最初は恐ろしかったミカリスの綺麗すぎる笑顔だが、ラリマー家でメイドとしてのスキルを磨く間に随分親しくなっていた。

「何も出来なかった私を鍛えて下さったラリマー家の皆様のおかげです」
「本当によく頑張りましたね」

メイド長の優しい言葉に目が潤んでしまったのか、ヘーゼル色の瞳がキラキラしている。

「デブリ男爵は相変わらずかい?」
「……はい。お義母様は私を認めて下さいますが」

デブリ男爵は庶子とはいえ自分の子供なのにフローラを引き取る事を嫌がっていた。
入り婿でありながらフローラの母親を無理矢理囲い、フローラを孤児院に捨て虐げていた。

そんなフローラの現状をデブリ男爵夫人は良しとせず、フローラを孤児院から引き取ったのだ。

「ふむ、ではフローラ、私に協力してくれるかな?」

ミカリスの突然の言葉にフローラは首を傾げたが、小さく頷いた。
内密の話がある、とミカリスの執務室に連れて行かれ、お茶をミカリスが淹れ始めた。

「ラリマー公爵令息様、お茶でしたら私が」

フローラが慌ててミカリスの横に立つと、ミカリスはクスッと笑った。

「お茶を淹れるのは私の趣味なんでね」

そう言われてしまうとフローラも諦めるしか無い。
香りの良いお茶を前にフローラが背筋を伸ばし、ミカリスを見詰めた。

「緊張しないで欲しいな」

そう言われても、と言いたげなフローラの顔は緊張で少し青くなっている。

「簡単な事ではないけど、君にしか出来ない事だ」

ミカリスの真剣な顔に、フローラは息を飲んで頷いた。

「フローラ、私と結婚してくれるかな?」
「……はい?」

突然の言葉にフローラは、ミカリスの真意が理解が出来ない。

「何故、私なのですか?ラリマー公爵令息様でしたらもっと高位貴族の令嬢を……」
「デブリ男爵が犯罪に手を染めている」

ミカリスから、もっと唐突過ぎる言葉が出た。
ミカリスの話を聞くとフローラの腑が怒りで煮えたぎりそうになった。

デブリ男爵は母だけで無く、かなりの女性を虐げ、奴隷として他国に売っている。かなり狡猾で、その首を抑える為にフローラの協力が必要だ、と言われればフローラに断る理由なんてない。

「お義母様だけで無く、多くの女性を助ける為ですもの、喜んで協力致します」

そう、フローラが強い眼差しでミカリスを見詰めた。


結果だけを言えば、デブリ男爵はあっさり捕まった。
奴隷にしていた女性たちを解放し、証拠も押さえられてはぐうの音も出なかったようだ。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果

富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。 そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。 死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

前世の記憶がある伯爵令嬢は、妹に籠絡される王太子からの婚約破棄追放を覚悟して体を鍛える。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの
恋愛
 婚約者の第五王子フランツ殿下には好きな令嬢が出来たみたい。その令嬢とは男爵家の養女で親戚筋にあたり現在私のうちに住んでいる。  婚約者の私が邪魔になり、身分剥奪そして追放される事になる。陛下や両親が留守の間に王都から追放され、辺境の町へと行く事になった。  100キロ以内近寄るな。100キロといえばクレマン? そこに第三王子フェリクス殿下が来て“グレマン”へ行くようにと言う。クレマンと“グレマン”だと方向は真逆です。  追放と言われましたので、屋敷に帰り準備をします。フランツ殿下が王族として下した命令は自分勝手なものですから、陛下達が帰って来たらどうなるでしょう?

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

捨てられ聖女の私が本当の幸せに気付くまで

海空里和
恋愛
ラヴァル王国、王太子に婚約破棄されたアデリーナ。 さらに、大聖女として国のために瘴気を浄化してきたのに、見えない功績から偽りだと言われ、国外追放になる。 従者のオーウェンと一緒に隣国、オルレアンを目指すことになったアデリーナ。しかし途中でラヴァルの騎士に追われる妊婦・ミアと出会う。 目の前の困っている人を放っておけないアデリーナは、ミアを連れて隣国へ逃げる。 そのまた途中でフェンリルの呼びかけにより、負傷したイケメン騎士を拾う。その騎士はなんと、隣国オルレアンの皇弟、エクトルで!? 素性を隠そうとオーウェンはミアの夫、アデリーナはオーウェンの愛人、とおかしな状況に。 しかし聖女を求めるオルレアン皇帝の命令でアデリーナはエクトルと契約結婚をすることに。 未来を諦めていたエクトルは、アデリーナに助けられ、彼女との未来を望むようになる。幼い頃からアデリーナの側にいたオーウェンは、それが面白くないようで。 アデリーナの本当に大切なものは何なのか。 捨てられ聖女×拗らせ従者×訳アリ皇弟のトライアングルラブ! ※こちら性描写はございませんが、きわどい表現がございます。ご了承の上お読みくださいませ。

完結)余りもの同士、仲よくしましょう

オリハルコン陸
恋愛
婚約者に振られた。 「運命の人」に出会ってしまったのだと。 正式な書状により婚約は解消された…。 婚約者に振られた女が、同じく婚約者に振られた男と婚約して幸せになるお話。 ◇ ◇ ◇ (ほとんど本編に出てこない)登場人物名 ミシュリア(ミシュ): 主人公 ジェイソン・オーキッド(ジェイ): 主人公の新しい婚約者

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

処理中です...