【完結】断罪されなかった悪役令嬢ですが、その後が大変です

紅月

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黒真珠は艶然と微笑む

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「それでは、そろそろなんであの縦ロールがマリアーナ嬢に対してあれ程の敵意を持っていたのかを話してくれるね」

流石ウィリアム陛下の血を引く王族。
アマリアの動きもしっかり把握している様だ。
アレクセイの言葉で、スッと姿勢を正した。

「あの縦ロールですか」

アマリアも縦ロール、と言って首を傾げた。
貴族籍を抜かれ、娼館で春を売る彼女の名前を誰も憶えていない。
そして、今では髪を巻く事も出来なくなってしまった事を誰も気にも掛けていない。

「マリが美しく、多くの方に愛されている子爵令嬢だからですわ」

あの縦ロールは伯爵令嬢だった。
そして、学園でもかなり大きな派閥の中心だった。
見た目も魔力もそこそこだが、身分だけはマリアーナより上だった。

学園に入る前、周囲の者達に甘やかされていたのだろう。
だが、入学する前から何もかもが素晴らしいマリアーナに嫉妬して、アイテムが使われる前から憎んでいた。

決定打になったのは、見目麗しいミカリス達に溺愛されている様子をパーティーで見た事だろう。
公爵家の嫡男であるミカリスや初恋を拗らせて冷たい態度を取ってはいたがマリアーナを真剣に想っているユリアス。

欲しくてたまらない高位貴族との縁を持つ自分より身分の低いマリアーナが憎く、彼女さえ居なければ自分が彼らだけでなく全ての男たちから一番愛される、と妄想を肥大化させていた。

「でもおかしいね。そんなに身分を気にするなら、何故男爵令嬢だったフローラ嬢に媚びてたんだ?」
「アレに捨てられて、マリが修道院に入れば自分がラリマー公爵令息やジルコン公爵令息に愛される、と信じていたのでしょう」

アマリアの黒真珠の様な目が冷たい輝きを帯びる。
「なるほど。……だから、積極的に見た目は良いが人間性に問題がある奴らを縦ロールに押し付けているのか」
「少しは役に立って頂かないと」

アマリアがクスッと笑った。

「そうだね。私の愛しい婚約者が有能である事を再認識出来たしな」


国は綺麗事だけでは成り立たない。
犯罪の芽は出来るだけ早く摘め、と言う事だ。

「善良な令嬢に被害が出ては、王国の危機ですもの」

麗しい、黒真珠の様な淑女は艶然と微笑み、ゆっくりと紅茶を口にした。
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