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我が家の黒歴史の所為です

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事後処理が終わる頃には、すっかり夜が明けてしまった王宮の中庭で私はため息を付いた。

「すごいため息だな」

ユリアス様が呆れながら隣に座る。

「色々ありましたから」

事前の打ち合わせであったり、事後処理など息つく暇もないほどだった。

「だが、あの状況でも冷静さを失わないとは、流石だな」

御前会議での惨劇は衝撃的だった。大人の男でも青褪めていたのに、マリアーナは顔色一つ変えなかった。

「冷静ではありませんでした。体は震えてましたし、ユリアス様が盾になって下さったので、まともには見てません」

事実、マリアーナはキュビックを直視はしていない。
それでも悲鳴は聞こえたし、どうなったかは想像出来るせいかマリアーナの指は細かく震えている。

「……あいつの事、好きだったのか?」

此方を見ずに俯くユリアスがぽつんと呟いた。

「あいつ?」
「ロイドと名乗っていたあいつだ」

ユリアスの顔に深い影が落ちる。

「学園でも話をしていたそうだが」
「教師でしたから。それにあの人に好きと言う感情はありませんでしたが、一緒にいると少し気が楽でした」
「気が楽?」
「はい。あの方が先生をしていた時は私をお祖母様の孫、と言わなかった。お祖母様を尊敬していますが、皆様の目はいつも私を通してお祖母様を見ていましたから」

少しだけ寂しかった。
大好きなお祖母様に似ている、と言われるたび嬉しかったけど、心の何処かで私と言う存在が薄い気がしていた。

まぁ、ロイドと名乗っていた人は、私に関心が無かったのでしょう。

「俺も……クリスタル夫人越しに君を見ていた」
「お祖母様越しに?」

私越しにでは無く、お祖母様越しに私を見ていた?
ちょっと意味が分かりません。

「ジルコン家はクリスタル夫人の助けが無かったら崩壊していた事は知ってるか?」

詳しくは知らないが、カノコ様がわざわざロードライト家の養女になった事が関係あるのはなんとなく察している。

「親族がクリスタル夫人は素晴らしい、と褒めるたびにマリアーナ、君が遠く感じられ、俺はどれだけ努力すればいいのか分からなくなっていった」

えっ?努力?何の話ですか?

「幼い頃から君はなんでも1人で出来ていた。俺はそれが嫌だった。頼って欲しかったし、イジメられたと泣きついて甘えて欲しかった」

えっと……。うちの事を説明しないと不味い様ですね。

「あ、ありがとうございます。泣きつくのは……したかったんですが、うちには火力が強すぎるメンバーが多すぎて、子供の頃からちょっと」
「それでも……」
「もし些細な事でユリアス様に泣きつき甘えていたら、相手の家が吹き飛びます。そして、ユリアス様にも被害が……」

そう、間違いなく頼られたユリアス様はお兄様達に八つ当たりされた筈です。

「あ、えっ?あれって本当だったのか?」

あ、その慌てぶりだと、うちの黒歴史を知ってるんですね。

前世の記憶を思い出す前、私が些細な事である家の令嬢にいじめられ、泣きながらルシルお兄様に話すと、一族総出で報復し、その家は貴族社会から弾き出され、令嬢は精神を病んで今でも病院に居る。調べたら結構な悪事を行なっていたから罪悪感は無いですが。

でも、火力が強すぎるし、手加減しないんです。うちの家族は……。
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