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役目は終わった様です

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広間の中央を罪人のキュビックに譲り、人垣の方に戻りゆっくりと呼吸を整えて口を開いた。

「私が精神干渉魔法を解除した後、証拠隠滅の為、媒体となった方達の殺害も狙っていた様です」

フローラさんはラリマー家で保護されて居るし、タガー子爵令息とニクラスさんは第二騎士団長のジェイド家が身辺護衛に動いています。
そして、媒体となった事は魔術院の方で既に確認済みです。

まだまだ罪はありそうですが、これだけでも一生牢獄生活は決定ですよ。

「キュビック・ジルコニア。無様だな」

ウィリアム陛下、そんな悪役顔で煽らないで下さい。
それでなくてもそろそろ、やばいのですから。

「ちくしょう」

充血した目、歯軋りしている口は血で赤く見える。
あぁ、もう限界ですね。

「女性陣は目を瞑り、耳を塞いで下さい」

目を閉じ、私が叫ぶと

「ぐ……ぎゃあぁぁ」

キュビックがもの凄い雄叫びの様な悲鳴を上げ、身体中の皮膚がボコボコと唸り、穴という穴から血が噴き出した。

おそらく体を引き裂かれるような痛みが襲ったのだろう、悶え苦しみのたうち回る凄まじさに、抑えつけていた騎士達の手が振り解かれる。

その薬は、強制的に薬の力を消すと副作用が凄まじく表れます。
だからその魔法薬は禁止薬になっているんです。

キュビックの凄惨な姿を見てしまった女性達の何人かは悲鳴を上げたり、気を失った者もいた。

ふぅと押さえ付けていた息を吐き閉じていた目を開ければ、いつの間にか私を庇うように立つユリアス様の背中が広く、頼もしく見えた。

「ありがとうございます」
「良くやった」

ユリアス様の相変わらずの口調と微かな笑みに、私の役目が無事終わったと緊張感が解れていきます。

ですが見慣れてしまった微かな笑顔もこの背中も見納めですね。
何故かすごく寂しいです。

御前会議に出席していた、多くのもの達は目の前の、突然の惨劇に言葉を無くした。

「死なせるなよ。背後の者達を炙り出すのに良い機会だ」

血溜まりの中、痙攣を起こしているキュビックの姿は痛ましさに溢れている。
だが、ウィリアム陛下の冷酷な言葉に、怯える者は側近には居ない。



キュビックは一応、死なない程度の回復魔法を受け、そのまま地下牢に放り込まれた。
後日、自白剤などで背後関係を吐かせるつもりだろう。

騒然となった御前会議はその場で中止になったが、事後処理に多くの者たちが王宮内を駆け回っている。
当然、マリアーナ達も彼方此方に奔走していた。
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