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フローラさん、命を狙われてますよ

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こっからの話、聞いた時は私もヤバイ、と思ったもの。

「……学園に入ってすぐ、ハモンド・タガー子爵令息と親しくなりたい、と思っていたのですが頭の芯が痺れる様な感じになり、気が付いたらタガー子爵令息だけでなく他の方達にも渡されたアイテムを使って、媚びていたんです」

フローラさんの話を初めて聞いた時、ヤバさにちょっとゾッとしました。
頭の芯が痺れるなんて、精神干渉魔法の典型ですもの。

「それって……」

ミカリスお兄様が眉を顰めている。

「学園内には精神干渉魔法の痕跡なんて無かったよ」

ラファエルお兄様、調べてたんですね。
本来の仕事である外交官では越権行為ですよ。

「自分より魔力のレベルの低い者や防御魔法を怠っている相手に対して狡猾に、痕跡を残さず掛けることは可能です」

ユリアス様が静かな声で怖いことを言ってきた。

「魔術院のトップクラスのレベルを持つ者なら、可能です」
「ですが、精神干渉魔法が使われたとしても、誰が何の為に、と言う疑問が残ります」

この場合、方法はあまり意味がない。誰が、何の為にと言う目的が問題なんですよ。

「何の為に、フローラ嬢を利用して学園内に精神干渉魔法を掛けたんだ?」

ミカリスお兄様の態度が軟化した。

「フローラさんを使って問題を起こし、その裏で何かをしようとしていた、と考えると辻褄は合います」

そう考えると、あのアイテムも目眩しの為に用意されたものでしょう。

「マリ、フローラ嬢が外に出た、と言う情報は」
「遮断してあります。フローラさんは今回の件では唯一の、犯人を知る生き証人ですから」

ルシルお兄様が頷いた。やはり兄妹ですね。考える事が一緒です。
本人はよく分かってないみたいですが、フローラさん、貴女、命を狙われてますよ。

「では、フローラさん。目立つその髪と目の色を変えて下さい」
「えっ、はい」

驚いた顔で頷くフローラさんのピンクの目と髪は何色が似合うかしら?

「ごく平凡な、茶色で統一した方がいいだろう」

ミカリスお兄様の提案にフローラさんも頷く。
では、髪は小麦色で瞳はヘーゼルにしましょう。あら、可愛い。

「すごい。髪の色とか変えられるなんて」

フローラさんが驚いていますね。これはアーネストお祖父様直伝です。

「マリのように全属性の魔法を使えるものしかできないからね」

ラファエルお兄様が嬉しそうに説明してます。
姿を変えるのは禁止魔法薬を使えば出来ますが、あれは後遺症がヤバイんです。

「全属性!すごい」

おっと、思考が違う方に向いてました。頭を切り替えましょう。
属性から見ると、フローラさんは光属性が一番強いですね。

「お祖父様から教えていただいたの」
「教えたからって、簡単にできる物では無いけど」

ユリアス様がまた、仏頂面でぶつぶつ言ってます。

「フローラさんは……」
「私、ガーネット子爵令嬢様の侍女になりたいです」

何故?子爵令嬢に侍女はあまり必要ないと思いますが。
普通は、私のような身分が高位の令嬢の侍女になるんですけど。

「ほぅ、何故ですか?」

ミカリスお兄様の目が、また鋭くなった。

「命を助けて下さいました。多分、あのまま牢にいたら気が狂っていたと思います」

あり得ますね。あの精神状態では長く持たなかったでしょう。

「少しでも御恩返しがしたい」
「裏切れば、死にますよ」

ミカリスお兄様、何処の悪役ですか。私でも怖いです。

「ガーネット子爵令嬢様に助けていただいた命。ガーネット子爵令嬢様の為ならいくらでも差し出します」

フローラさん。無駄にキリッとした顔で言い切りました。
……うん。ツッコミ所満載だね。

命は一つしかないので大切にしてください。

「では、ラリマー家で君を預かろう」

ミカリスお兄様がニヤッと笑う。
悪役感満載です。

ですが、フローラさんを保護するのにはうってつけです。
外交機密を守る外交官のラリマー家に忍び込むのは、まず無理でしょうから。

「ミカリスお兄様。フローラさんをお願いします」
「うちのメイド長がきっちり教育してくれるよ。侍女は無理でも専属メイドならどうにでもなる」

いえ、そちらでは無く保護を……。

「ガーネット子爵令嬢様。私、頑張ります」
「……無理はしないでください」

なんとなく方向性がズレた気がします。

「ある意味、良い目眩しになるだろう」

ユリアス様。それ、フォローになってません。
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